戦兎/石動

2017_仮面ライダービルド,[R18]

Reverse

いつものベッド、いつもの二人。
「やっぱ、やめよっかな」
目を逸らす戦兎の眉間を、指先で小突いてやる。
「なに言ってんの、おまえが言い出したんでしょ」
「それはそうなんだけど、ほら、戦略的撤退って言葉もあるし」
「なにが戦略的?」
いつもなら喜々として乗りかかってくる戦兎は、今はベッドに組み敷かれて不安げに石動を見上げていた。
「今さらびびってんのかよ」
「ビビってねえし!」
叫び方にもう怯えが出ている。噴き出しそうになりながら、細い体を抱きしめた。二人とも下着姿で、後に引くという選択肢はない。
「重い!」
「そんなことないだろ」
「ビルドの状態でスマッシュに乗られたくらい重い!」
「じゃあ許容範囲内だ。ていうか俺の騎乗位はいいの?」
「まあ、重いっちゃ重いんですけど……」
口ごもった戦兎は、両腕を石動の首に回してきた。熱烈な口づけだけは、いつもどおりに躊躇がない。
ひざを持ち上げて腿に手をすべらせると、びくりと体が震えた。下着を脱がせてしまえば、撤退もなにもない。
「ご準備はお済みでしたね?」
「いちおう……洗浄くらいは……」
「ならOK」
チューブの潤滑剤を、彼の胸の上に絞り出す。
「うわっ、冷たっ! なんでココ!?」
「冷たいからあっためんの」
薄い胸に手をすべらせてそれを塗りたくる。腹にも、腰にも。それから重いと言われた体を再び預け、二人のあいだでゆっくりとジェルを広げていった。石動が動くたび、体のあちこちがぶつかって擦れ合い、体温を高めていく。
「なんかヌルヌルして、ヤバい……」
まだなにもしていないのに、彼は潤んだ目を向けてくる。
頃合いかと、内腿に濡れた手をすべらせた。もう冷たくはないはずなのに、相手の体がまた強ばる。顔を見れば、ぎゅっと目をつぶって歯を食いしばっている。
「力抜いたほうがいいぞ……」
言いながら、閉ざされた後ろへ指をねじ込んだ。
「待っ……いきなり指2本!?」
勢いよく上体を起こした戦兎は、信じられないといった調子で叫ぶ。
「おまえいつも3本くらい入れてくるじゃない」
「や、最初から一気には入れないよ!? あと太さが……ちょっ、うわわわ待って待って一回抜いて!」
暴れる体を体重で押さえつけ、指の第二関節あたりまで侵入を進める。熱くて狭くてひくついて、こちらも期待に疼きはじめていた。
「まあまあ、そのうち慣れるから」
「慣れねえよ! ぜってームリ……うひゃっ!」
しがみついてくる体が大きく跳ねた。どうやら弱点を探り当てたようだ。
「ダメ、そこダメ、ズルイ……」
なにがずるいのか本人もわかっていないだろうが、彼の芯は物欲しげに濡れている。中もほぐれてきたようだ。
「自分でも試してみたんだろ?」
「長さがちがうでしょ、こんな奥までとか思わな……」
指を抜くと、摩擦のせいか一瞬呼吸が止まった。
「戦兎」
甘く囁いて口づけたが、彼の視線は下のほうに向いている。
「いや、指だけでいっぱいいっぱいなのにそんなの入るわけねえじゃん!」
「そんなのをおまえはいつも俺に突っ込んでるのよ」
言葉に詰まった戦兎に、石動は熱い昂ぶりを押しつけた。
両手で顔を覆うから恥じらっているのかと思えば、彼は情けなく呻いている。
「やっぱちゃんと練習すりゃよかった……」
「もしかして、資材といっしょにへんなオモチャ注文したのそのためか!」
実験用の資材や日用品は、好きに購入していいことになっていた。ただし必ず石動本人が確認している。危険物や違法性が高い商品は無用なリスクを招くからだ。
「あ! あれキャンセルしたのマスター!?」
「あたりまえだろ、おまえに渡したのはなんでも買っていい魔法のカードじゃねえんだから。あんなもん買ってどんなプレイ強いられるのかと」
「サイズ近いやつ探したのに……」
なんとかとなんとかは紙一重というが、自称天才の発想はなかなか読めない。
「ぜったい本物のほうがいいから」
「ムリムリ痛い痛い!」
「観念しろ」
悪役の台詞だと思いながら、ぬめったままの手で彼の体を、そして中心をさすってやる。
「俺も戦兎が欲しい」
「……………」
彼は上気した顔で石動を睨みつけ、それから思いきりしがみついてきた。
「息止めるな、余計苦しいぞ」
相手の腰をさすりながら、年甲斐もなく欲しがっている自分自身を彼の中へ押し込んでいく。
「……っ!」
直前にあれだけ大騒ぎしていた戦兎は、一言も発しない。ただ背中に食い込む指の強さと、耳元で感じる不規則な呼吸だけ。
「戦兎、愛してる」
「ぅん……っ」
なだめるための軽い睦言とはわかっていても、戦兎は身を反らして大きく息を飲んだ。
「戦兎……」
本能的に拒もうとする内側も、ぶつかり合う肌も、ジェルにまみれて卑猥な水音を立てている。
強引にではなく、浅めに突き上げるようにして、石動は戦兎の体をさすりつづけた。
「ぅ……あっ」
唇を噛みしめていた戦兎が、声を上げた。
「我慢すんな」
「だって……ぁあっ、あっ、ぁん……っ」
こちらの腹を強く突き上げてくる屹立は、戦兎が感じている証拠だ。
「痛いか?」
「痛い、けど……ぃやっ、なにこれ、なにっ……」
「戦兎?」
いきなりぐいと頭を掴まれ、正面から目を合わせられる。大きな瞳は膜が張ったように濡れていて、瞬きだけで決壊しそうだ。
「マスター、気持ちいい?」
「……最高」
「俺も……イキたくないくらい気持ちいい」
たまらず、うっとりと笑んでいる唇に噛みついた。どんなときでも、応える戦兎に躊躇いはなかった。

「思ってたのとぜんぜんちがった……」
ぐったりと横たわる戦兎は、指一本動かす気力もないといった顔で宙を見つめている。
「よかったんじゃないの?」
「そういうことじゃなくて……」
じゃあどういうことなんだ、と返しかけ、そもそもなぜこうなったのか改めて気になった。「抱いてほしい」と言われただけで、理由は聞いていなかったのだ。
「じゃあ、なんでやりたいって思ったのさ」
シャツを羽織りながら尋ねてみると、戦兎はこちらに背を向けたまま、テンション低く呟いた。
「マスター……俺としてるとき、たまにちがうこと考えてんじゃん。なんか悔しくて」
「!」
思わず言葉を失うが、運よく戦兎はこちらの表情など見えない。
「俺が上のときは、マスターしか見えてないし今やってることしか考えられないわけ。でも下になったら意外と余裕あるのかなって思ってさ、実験してみようと……」
的外れではあるが、痛いところを突いてくる。
「わかっただろ、余裕なんかねえんだよ。それに……」
努めて明るく声を上げ、彼の肩を掴んでこちらを向かせた。
「俺はいつだって、おまえのことで頭がいっぱいだよ」
言いながら頭を撫でてやるが、返ってきたのは醒めた視線だった。
「それはさすがに嘘っぽい」
「ホントホント。いっつも戦兎のことだけ考えてる」
青年は暫し不満そうに石動を見つめていたが、ため息をついて首をかしげてみせた。
「ま、そういうことにしといてやるよ、最高に嘘くさいけど」
「ホントだってば」
こればかりは嘘ではないのだが。
今の自分は、目的のために「桐生戦兎」を作り上げることしか考えていない。そのためならなんでもする。親子ほど離れた歳の青年と体を重ねることも。
「またしたくなったら、いつでもどうぞ」
無言の要請に従い、軽いキスをくれてやった。

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