暴太郎戦隊ドンブラザーズ総括感想。
ええと……長いですよ。13000字近くある。覚悟決めた人だけどうぞ↓
正直に白状してしまえば「いいもん見たな」という感想です。
毎週ハズレなしにおもしろかった。ゼンカイジャーとは違う意味で。
でも実は、脱落した人や観てない特撮ファン、アンチ井上白倉も周囲にはそれなりにいて、大絶賛!大人気!という実感は個人的には薄いです。
理由もなんとなくわかるから、観なかった人たちに「損してるよ、観ようよ!」とは言えない。
確かに合わない人は一定数いて当然だし、100%支持されてる作品のほうが信じられないですよね、Amazonのレビューと同じで。
「大好き!最高!!」っていう人数と同じくらい「いやないわ……」「not for me」っていう人もいるはず、いてほしい、いてくれないとおかしいんで。
そして、これから戦隊を観ようという人には絶対に勧めない。
自分で勝手にぶつかって事故るのはいいけど、私が事故の責任を引き受けたくない……これからの特撮人生の最初にドンブラを渡すことの是非が私には判断できない……と、けっこう本気で思ってる。
戦隊という文脈を理解しているからこそのおもしろさもあると思うし、井上敏樹&白倉伸一郎という文脈がわからないと「はぁ?令和に地上波で正気?」みたいなBPO案件もあると思う。ドンブラおもしろかったから!って過去戦隊観てがっかりされるのも癪。
ただ、受け手の「好きか嫌いか」の問題になったのはよかった。
これが「いいか悪いか」「成功か失敗か」の要素を含んでくると、語りにも正しさが入ってきちゃう。
ベテランだからこそ、ある程度時代のニーズを読んで王道と邪道を書き分けたり、一部アップデートしてくるし、その上で「ここは変わらないな」って問題の切り分けができる。
うまくできてないと、差別意識や固定観念ありきでぐちゃぐちゃと上に乗せてくるからもう全部ダメってなっちゃう。何とは言わないけど連綿とそういうの見せられてますよね。
きちんとクオリティを担保された上で語れるのは気持ちが楽です。
なので以下全て「個人的な感想です」。
いつもどおり本編のみ視聴、関連動画やCD・グッズ展開、俳優さん情報に関しては、ほとんどスルーしているのでご留意ください。それはオーコメで言ってたよ、〇〇さんがインタビューで言ってたよ、っていうのがあっても飲み込んでくださいってことです。
好きな展開は好きって言うし、嫌いなキャラは嫌いって言うだけの感想です。
自分用のリアタイ覚書ともいいます。
ストーリーや設定についての「考察」はありません。そもそも考察ってしないよね私。
あと敬称略。敬意はあふれてます。
よくできた話でしたよ、何度でも言うけど。
ムダのないシャンゼリオンって感じ。シャンゼリオンはムダと不条理の集合体で、おもしろいかどうかもわかんなかった。でもドンブラは無駄玉がなかったと思う。
今までとは段違いで正気だし、井上敏樹の嫌な癖が半分くらいしか出てないし、Pのコントロールも監督陣の消化も円熟してきたんだろうな。
コレって、「井上敏樹」をエンターテインメントに昇華させた作品なのかも。
どこかで「もうロートルだと思われていた白倉&井上コンビがここまでヒットを飛ばすとは」的な感想を見かけて、それはそうなんだけども、その「老兵」を引っ込めずにそのまま戦って勝ったんだろうなって。
釈由美子にマンホール投げさせたとき、白倉は「秒単位で消費されないインパクトを残す」と断言したけど(そして実際、想像以上にそのとおりになったけど)、もともと尖りすぎて暴投気味な作風は、今のインパクト勝負・バズったら正義みたいな風潮に完全一致しちゃうんだな。
コッテコテの恋愛ドラマやサイコホラーテイストは「大先生節」でネタにできるし、多少の時代錯誤や無理難題は、現場で勝手に調整できるのがこの枠の特徴だったはずで。現代の演出や芝居で盛っていけば、ちゃんと令和の作品になるって目算も当たってますよね。
「バズれば正義」が今のオタク界隈だとすると、これ以上ないほどに成功を収めたんじゃないかと思います。
まあ、それが正解かどうかはもう何十年かしないとわからないけれども。
オモチャも前年とギミックを共通にしたおかげか、売上伸びたみたいだしね。
私はもうトイは買わない主義なので(収納スペース的な問題で…)何も言えた義理ではないんだけども、やっぱり本来の対象層的には長く遊べたほうがいいじゃないですか。共通ギミック、今後も二年単位で検討してほしいです。
やっぱり戦隊って、毎話楽しいのがいちばんですよ。たまにじんわりしたりヒヤッとしたりでいい。
設定はややこしくてあんまり覚えられませんでしたが、それでも楽しく観られたからね。
人間でない者を主体にすることによって、不条理がいい具合に日常に組み込まれていって、同じシチュエーションでもシリアスにもギャグにも振れる。タロウとソノイ、なつみほを挟んだ犬塚と雉野の関係なんかがそうですね。脳人の存在自体がそうか。「なんでもあり」な設定を縦横無尽に活かしきってたなと思います。
「正しさ」を徹底的に否定したのもよかったのかな。
桃井タロウの正しさは人間を傷つけ彼自身を孤立させるし、脳人の正しさは人間の消去という方向に振り切れてるし。「常識的な感覚」もツッコミでしかない。
ドンブラザーズがめちゃくちゃにやらかして終わることもまあまあ多い。
作品の方向性には時代の空気感が露骨に影響する……なんてあたりまえのことを言うまでもなく、閉塞感の強い「今」に「ハチャメチャな暴れ野郎」がマッチしたんだな……ってあえて言っちゃうのもかっこ悪いけど。
過去戦隊モチーフは、個人的にはほとんど視界に入りませんでした。
正直ノイズなんだけど、ビジュアル的にヒトツキとかゲストとか小道具とか、とっかかりがあったほうが作りやすいしウケもいいからまあ取り入れるよね、っていう印象。
なんか適当に散りばめておけば考察班が勝手にふくらませてくれるんで。これもSNSのオタク受けする要素ですよね。
私はとくに興味ないのでスルーしたけど、してもいい範囲内というのがよかったんだと思う。
アルターについてもイヌ・キジについても、映像表現の幅を広げるという意図はもっともだし、極端なデフォルメも子供にウケがいいだろうし、そこに「私は人体が好きだからモーキャプは許さない」と好みでしかない言い分を主張する気はないです。
今後もやりたければやればいい。
でも私は、スーツを着た生身の役者さんたちを見たい。
正味半年ではあったけど、浅井ドンモモ・中田ギーツという幸せな一時間を作ってくれてありがとうございました。
リアタイ、ざっくりまとめツイ。
2022年4月4日
メンタル岸辺露伴の崖っぷち漫画家(主役)
嘘も幸せも人心もわからない宅配業者
冤罪だけど軽犯罪は相当重ねている逃走犯
俳句を詠んで施しを受ける無職
常識人というより小市民のコンサル勤務
理解不能な息子自慢を聞かせるおじさん
なんでも許す喫茶店のマスター神輿と天女なしでコレだもの
2022年10月23日
第一印象から変わらないのすごい(ほぼdis注意)鬼:わりと好き
犬:まあ好き
猿:普通
桃:浅井最高
雉:ムリ
龍虎:ムリ
無色:ムリ
1:好き
2:好きでしょ
3:好きに決まってる
陣:誰だっけ
鶴:などと申しており
話:くっそおもしろ!!ずっとおもしろ!!!狐:中田最高
2022年11月14日
この「ムリ」に俳優陣の実力も加算されているのが重要で、こんな役やらされてかわいそうってならないのがすごい、全員イキイキ演じてるのわかるもん
観客に「ひどいやつだ」と言わせたら勝ち、「ひどい作品だ」って言わせたら負けって理屈でいくと、悔しいけど興行的には大成功なんだな
はるか。
自信過剰でどこまでもポジティブで、ツッコミだけど自分自身がボケでもある。
彼女を「主人公」に据えたのは大正解だった。
桃井タロウだったらついていけないし、猿原だと主軸にならないし。一般人までわりと狂気に充ち満ちたドンブラ世界の、平均値なのかな……
全員変人・狂人の中で、本当にまともな人間をツッコミにしないという高度なストーリーテリングを見せつけられました。
とにかく蹴られても吹っ飛ばされても怒られても気にしない、テンションの高さに負けましたよ。ああいうキャラと扱いが正しいのかはさておき。
オニシスター、かわいかったしさ……
最初のほうは、盗作疑惑に対してなぜ自分の無実を主張しないのか(彼女は「私は盗作なんかしてない!」とは一度も言わなかった気がする)、地味に気になってたんですけど。ソノザが絡んできたあたりからもうどうでもよくなっちゃいましたね。
椎名ナオキについても「もう一人のはるか」かもしれないけど、あの写真家のオニシスターみたいに今のはるかがあることで「存在しなくなった」のだとしたら、そっちを深掘りする意味ってあんまりないなって。
だってあっちの世界ってなんか幸せそうじゃないんだもの。はるかも猿原も、なんかちょっと悲壮感があるんだもの。ソノザと仲良くなれなかった、タロウにへんな遺恨を残したドンブラザーズ、あんまり見たくないし。
椎名ナオキは手前で片づけたのに、盗作を最終話まで引っぱったのはすごい。
ラストは予想できる範囲ではあったけど、むしろそのラストを望んでた!みたいな気持ちになりました。
「トウサク」というあだ名を普通に受け入れてるのも素直に笑っちゃった。もうみんな由来なんか覚えてないのかもしれない。本人も忘れちゃってそう。クラスメイトと仲良くやってるの、いかにもこの世界って感じでよい。
タロウ。
とにかくね! 浅井ドンモモかっこよかったですよね!!
ニンニンジャーからずっと浅井さんを推していますが、ドンモモタロウはどんな動きをしてもドンモモタロウに見える、まさにハマり役だったと思います。
私の中でドンモモタロウ/桃井タロウといえば、これからも樋口でなくて浅井。
とくに、のけぞりが最高だった。立っていられるのがおかしいくらいの仰け反りから、糸が切れた傀儡のように倒れる。ほんとうに魂が抜けてる……!?って思うレベルの。
一年間アレを見つづけられたのは幸せでした。
中盤から、彼自身もすごいなと思いなおしました。
毎年恒例の不安な出だしから、急成長していきましたね。私も「ずっと変身しててほしい」「シルエット、ジャコメッティかよ」「アバラが洗濯板」など数々の暴言を撤回します(えっホント酷い)
遅まきながら、サンタクロースに頭撫でられたときの顔で「あっ」って初めて気づきました。マスクオフの神輿演説、立ち方が完全にドンモモタロウで最高にかっこよかった。あそこで樋口とドンモモが一致した。
個人的には、こういう感情移入の余地を許さない人外キャラは好きです。
理解できない存在からの目線で、人間の生々しさや曖昧さを描き出すっていうね。中途半端にはできないですよ。人間やめるつもりでいかないと。
陣との回想、一瞬だけ雰囲気に流されて切ない気持ちになるんだけど、同時に理性が「待て、二人ともおかしくないか?」って我に返るので入り込めないとこなんか最高でした。
人外のタロウはもちろん変だけど陣の育て方もなんか変。ああ人間の親子じゃないんだなあ、っていう納得感があってね。
どんどん人間の心を知っていくタロウ、というのが少しさびしくもあり、だからドンモモの横暴なふるまいで安心したり。
終盤の人間みたいな顔するタロウ、どうしていいかわかんない。
猿原。
完全中立なんだな→タロウと対立するのか?→やっぱり中立だな→むしろスタンドアローンだな?
っていう印象……
最初にいちばん井上敏樹を感じたキャラでした。こういう本当にわけのわからない、バックボーンをいくら掘っても無駄みたいなキャラは、理路整然としたタイプには絶対書けないですよ。キバの紅音也は、まだバイオリニストという客観的な技術と肩書きがあったからまともだったなって、女子高生にモーニング奢らせる無職を見て初めて思ったからね。
あと俳句って現場で出せないから、もう脚本の原液がアイデンティティなわけですよ。恋の句は多かったけど、物騒なのが出てこなくてよかった(※気になる人は「井上敏樹 空薬莢」で検索してみてください)
彼がツッコミ常識人だったら早々に空気になってたと思うので、こういう尖らない尖らせ方は上手かったな……そう、全員が悩んでなくてもいいんだよ。変に昔の男とかゲストで出てくると追加戦士入ったとたん空気になる。俺はそういう青をたくさん見てきた。
地味に、彼周りで重要な要素が語られるんだけど(お供は過去にたくさんいたとか、別の未来があるとか)、そこがさっぱり回収されなくて、まあいろんな「保険」を掛けられてたポジションなんだろうなと思った。いざとなったらどういう方向にでも動かせる、はるかやソノイの代わりもできる、控えとして置いといたんだろうな。
とはいえ、最後にソノイとW青になるのズルい。最初からこの路線で来られてたら危なかった。
ドンキラーとドンキラーキラーはおもしろかったけど、私がタロウの顔と猿原の顔に興味がなかったので「おもしろかったなー」で終わりました。好きな顔だったらなんかすごく刺さったかもしれないかもしれない。
ていうかNYLON回だろ? ついに特撮に「NYLON回」なる概念が持ち込まれた記念的作品だよドンブラザーズ。
犬塚翼。
顔はわりと好みかなと思ってた。
最後までバレないでいく気がしてたから、いちおうそこはやるんだ……と感心さえしてしまった。
彼の正体が明らかになったとたん、話がどんどん進んでいって、彼のところで情報を堰き止めてたっていうのがわかっておもしろかった。
愛する女一筋ってのが、あんまりそそらないな……しかも雉野とバトるんだろ、あんまり見たくないな……って思ってたし、実際にそのへんはうーんってなってた。
けどいろんな要素を併走させてたから、そこに意識が集中しなくてよかったです。
指名手配に関しては濡れ衣だけど、逃走のために軽犯罪はためらわずに犯す、っていうところが全体の治安の悪さを見せつけていて……アレ、BPO案件じゃなかったのかな?
料理担当はタロウなのかなと思ってたら、まさかの犬塚、しかもプロ並み。
担当としては恋愛が多かったけど、幼女に飼われたりするのもよかったし……なんか、トータル憎めないやつでした。
もっと早く合流してほしかった気持ちもありつつ、まともに参入すると人間関係がどんどん複雑になっていくから、あれくらいの距離感がちょうどいいのかもとも思いつつ。
個人的には、狭山刑事の人生めちゃくちゃにした責任を取ってほしかったです。定年間近で無職になったおじさんを飼う無職。
雉野の「恋愛要素を持ち込むな!」が、そのとおりすぎて笑ってしまった。井上敏樹が百万回言われつづけてたことじゃん。
雉野。
第一印象がムリなキャラ1。
初回でムリだわ……ってなった。なつみほの関係性が明らかになる前から。
今思うと、最初からそういう雰囲気を出してた俳優さんの凄みよ……意図して作られた「気持ち悪さ」だったなって。
男性がピンクというのはジェンダー的な挑戦でもなんでもなくて、ただ目新しさを狙ったんだろうな、というのは雉野の設定でなんとなく察しました。
会社員で、異性愛者で、既婚者ではあるけど異性にモテない要素ばかりで、劣等感が強い「負け組」の男。むしろ格差とか旧態依然の男性意識を強化するためにいるんだろうなって。
彼の場合はその延長線上に、他者への残忍さが出てくる。怖いけどここはおもしろいですよ。
みほ以外の女性の扱いがよろしくないこと、みほに対しても「ぼくのかわいい奥さん」以外を求めなかったこと、あたりから彼の暴力性が生々しい感じになってるんだけど、これはたぶん無意識なんじゃないかな……
最近の「サイコパス」っていう言葉の使われ方が好きではなくて、自分ではあまり使わないです。
その前提で、雉野は本物のサイコパスだと思いました。
「平凡な会社員」で「上司に頭が上がらない」はずなのに、まあまあすぐキレる。すでに友人である犬塚が恋敵だと知ったとたん、自分の手を汚さずに警察へ売る。このあとギャグとして「その懸賞金でみんなに食事を奢る」という流れですけど、ここでもう恐怖の役満。
我々はみほちゃんが人間でないと知っているので、ストーカーも自宅軟禁も人形愛撫も笑って許してしまうけど、人間相手だったらセーフなこと一個もないです。
ラストの流れもハッピーエンドだとは思ってません。新たなサイコサスペンスの始まりかもしれない。
あとキジブラザーの体型バランスが最後まで慣れなくて、そういう意味でもあんまり推せなかった……普通に高田ピンク見たかったけどな。
なつみほ鶴。
うーん典型的な都合のいい女/男を惑わす悪女ポジション……と思ってたら、鶴のかっこよさにやられました悔しい……あの美人すぎる人外をなんて呼んだらいいんだ鶴獣人……
ていうか井上敏樹が「貞淑な妻」なんて描くわけがないんですよ、なんか裏があるんだろうなと穿って見てたんですが、ある意味でソノイ並みにメイン張ってて、見事に化けちゃってホント悔しい……
「貧しくても夢を追いつづける恋人を支えて共に生きる女」も「自分に愛情を注いでくれる男と安定した生活を送る女」も、おもしろくもなんともないのに、二人のあいだに「人間の愛を知りたかった鶴獣人」が入ることによって、一気に力関係がひっくり返る。
シェイクスピアを諳んじてみせる彼女の心を描く回が「なつみのよのゆめ」はもう、ストレートだけどかっこいいじゃん。一回やってみたいやつじゃん。
人間の心がわからないタロウと、知ってしまった鶴の対比もよかった。
夏美の選択が正しかったかはあんまり興味ないです。犬塚も雉野も男の理屈で動いてるから、自我がちゃんとしてる夏美が合わせる必要はないはず。雉野と結婚したのは鶴なんだから、現実の夏美が雉野に耐えられるかどうかは別の話で。
個人的には、すぐ夢から醒めて別れててほしいな……雉野は部長とくっつくんで……
ジロウ。
第一印象がムリなキャラ2。
これも明確な悪意を持って描かれてるので、その印象は操作されたものでしょう。
今まで井上敏樹が風刺的に描いてきた「正義漢がいきすぎて空回りする」キャラではない。そもそも人格が破綻している、というか人外に山奥で育てられた人外。だからちょっとおかしくても大丈夫!とゴリ押ししてくるところが、タロウと同じ構成ですね。
はじめは「代替品」だったけど、最後には「後継者」になってた。このへんの細々とした設定にはつっこまないでおきますが。あえて邪険にされる流れも、彼が「お供の器ではない」という意味合いだったのかも。
ルミちゃんの存在がなんか気持ち悪いな……と思ってましたが、架空の存在ってことで全部すっきりした。ジロウ周りは寺崎さんのタネ明かしで全部気持ちよく回収されました。
ついでにうまいこと退場させられたら最高だったんですけどね。今はヒーロー殺しちゃいけないから作劇制限されてるよね。
……まあ、わかるよ。追加戦士なのに、掘り下げが露骨に浅かったよね。尺足りてなかったよね。
自分の推しがこういう扱いだったら(よくあった)成仏しきれないんじゃないかな。今後どんなコンテンツ展開があっても、ジロウの人は永遠に救われず次の推しが現れるまで彷徨いつづける亡霊になるのよ、わたし知ってる……
ムラサメ。
初恋ヒーローで封じられたあたりから、本筋のはるかと絡むのかなって期待してたんですけど……
うーん……いてもいなくても、もっと別な使い方もあった気もする……けど、バイクアクションかっこよかったし車に轢かれる場面で噴いちゃったからもういいです。
ずるい。村瀬歩はかわいい。
ジロウとムラサメの絡みはもっとしっかりやってもよかったよね。と、ほとんど興味がなかった私でも思います。
運転免許回削ってでも……いやタロノイ半分くらい削ればよかったんじゃ?
脳人は、みんな好きでした。
ソノシ~ソノヤまで、出番が短くても強烈なインパクトを残してくれたので。番号忘れても8人がごっちゃになることないもんね。
元老院は……よくわかんなかったけど。カツサンドが強烈だったからもう許す。
あのね、同じ「扱いが軽い元老院」でも、セイバーとここまで印象が違うんだっていうのは、関係者各位よく覚えておいてほしいのよ!
1~3がサンタになる話、わりと好きです。
あの理屈でいくと、4~8もサンタやったことあるよね? そこはちゃんとプレゼントくれるんだよね??
ソノイ。
顔が好きなキャラ一位。
ああ私はこの妙な見た目のキャラにハマるんだ……きっとレッドと許されざる絆を持ってしまって苦悩したあげくに見事散るんだ……一年間見届けなきゃ……って思ってたんですよね。
でも最初からこの二人でぐいぐい進めていって、あっという間にタロウが死んで生き返って。
これは……本筋ではないな?
むしろここから消化試合だな?となんともいえない肩すかしをくらっていました。
二度目の対決はすでに天丼ギャグだからさ……
脳人とドン家のあれこれも、ソノイ経由でいつか語られるんだ……と思ってました。
でも、タロウ汁を注がれた赤ソノイのあたりで、ああこれはきっとうやむやになるな、ってあきらめましたよね。
あの黒神輿セット(力士・天女付き)に意味なんてあるわけないもの。おでんのカラシ程度で抜けるタロウ成分に伏線も何もあるわけないもの。全部勢いだよね知ってる!!
ソノイは予想どおり、というか予想以上に好きなキャラでした。
「惚れ込んだほうが弱くなる(禁忌を破ってしまう)(無意識に手加減してしまう)」ていうのは井上敏樹の最もピュアで健全な愛情表現だと思うんだよね。
ずっとソノイはその「弱み」を抱えてるけど、タロウはそういう「弱さ」を知らないから永遠に最強なんです。
タロウが何か迷いを生じるたび、ソノイに是非を確認しにいくじゃん? でもソノイはタロウが望むことしか答えないじゃん? なんかね、このアンバランスというか非対称な関係がすごく好きなんだよね。
タロウの依存は無意識で、ソノイの執着は自覚的なの。だからソノイのほうが弱い。
あとソノイの俳優さんのすごくウェットな芝居ね。それそれ、そういうの求めてたー!!ってうれしくなっちゃった。
ラスト、周囲を忘れていくタロウが最後まで覚えていたのが、ソノイなのはうれしかった。タロウ自身もそれを自覚してサポートを頼んでたんだと思うし。
人間であるはずのドンブラメンバーがみんなどっかおかしいので、最終的に最も人間らしい優しさを持っていたのがソノイということに。
まあ大概おかしいんだけどさ、ファッションリーダーだし。あの中に入るとそこそこまともに見えちゃうの、ヤバいね。
そういえば、おでん屋の親父、ずっとガジャさまボイスでしゃべってくれてた。
こんなよくわかんない役で出ていただいて……と思ってたらドンブラザーズ全員を繋ぐ「場」になってくれて。
ソノイを「ノイちゃん」って呼べるのはガジャさまだけ!!
ソノニ。
ものすごい美少女だな……あの服装が似合うのはわかるけど、そんなハレンチな格好させなくても……しかしホントにかわいいな、いや寒そうだな……でもあちこち目がいっちゃうな、センスなさすぎるだろ……という内なるセクハラオヤジとの戦いでした。
流暢なソノイソノザに比べて、訥々とした感じが人外っぽくてよかった。でもずっと目のやり場に困ってた。
犬塚翼への興味はただ人間に対する好奇心かなと思っていたんだけど、まあそれで終わるはずもなく……あんなおもしろいことになってしまいましたが。
あれは井上敏樹の悪癖です。それ以上でも以下でもない。
ただ「もう顔も見たくない」と言われた翌週に、「ドンブラザーズに入ればずっと一緒にいられる」と思えるメンタルがすごく……ここはシリアス担当じゃないんだな……と思いました。
なんかあの子がそこそこ生っぽい体をしてるので、具体的な「恋愛」をあんまり想像したくないな……という気持ちがモヤモヤとある。
犬塚は永遠に手を出さずに夏美へ操を捧げてほしい、頼むから。
ソノザ。
初期の、この方向性で乗り切るの難しそうだなと不安になってからの編集長で、一気に株が上がりました。
ソノザのこと嫌いな人いないでしょ。それくらい好感度高い。
修羅場だといちばんマトモにツッコミに回るのが愉快だった……なんとなくだけどツッコミのほうが似合うよね。
なんだかんだと、ソノイやソノニの「好き」をサポートしてくれてるのがよかった。初恋ヒーローから恋も友情も学んだのね……
ドンブラ入りのときも、漫画家としてのはるかにしか興味なくて、はるかも編集長としてのソノザにしか興味がない、あとのメンバーはどうでもいい、というスタンスが潔くて好き。
ラストのメガネノザにキュンとしました。ヤバい似合う。
以下、ちょっと厳しめなので注意。
桃井陣。
レギュラーにフックがなさすぎて、とりあえずこのおもしろおじさんをよすがに観ようと思ったんですが……
初めはおもしろかっただけのタロウ幼少期話が、どんどん薄気味悪くなってきちゃってね。
あの寒色系の回想画面と、しんみり語られるトンチキエピソードと。もちろんそれは「不幸だったタロウの幼少期」を表現するための演出なんですけど、陣さん側からすると、あまりにも「怖い話」すぎる。
終盤まで、「自分を囚人と思い込んでいる囚人服コスプレの引きこもりおじさん」か「自分がタロウを育てたと思い込んでいる妄想癖の強いおじさん」だったらどうしようと思ってたし、「タロウが言ってる陣は別人だった」というのも本気で危惧してはいた。そもそも桃井陣という男などいなかったのでは?とか。
……ちゃんと面識があって、とても安心しました。
ただ、なんでマスターポジションじゃダメだったのかな?最初はそれくらいの立ち位置だったのにマスターがいたから必然性が薄くなっていったのかな?と勘ぐってます。
孤独な桃井タロウを描く上で必要だったかっていうと、振り返ってみて過去バナとかべつにいらなかったよね? 現在のエピソードだけでタロウのエキセントリックさと人間離れした描写はいくらでもできたよね? タロウ周り以外はほぼノリで動いてたキャラだったね。
前例のない「五色田介人連投」の保険だったのかもだけど、チュートリアルは一人でよかったよ。
喫茶どんぶらのマスター=陣で、べつに前戦隊の関係者でもタロウの関係者でもなくて、ただドンブラメンバーや脳人を繋ぐだけのポジションだったとしてもよかったんじゃないかな、とずっと思ってました。
タロ陣書いてたのに!?って言われるとアレですが、感想と二次創作は別腹なのでね……
まあ親子のカップリングが普通にムリなんで、陣がタロウを川で拾ったこと、タロウが父と認識していないこと、だけを頼りに「親子じゃないですよね!?」って言い張ってた私も、大概アレなんですけど。
でも最後に二人でおにぎりを食べるシーン、よかったです。こういう伏線回収は好き。
親は子の食べ残しを迷いなく食べるものだっていうあの描写に、どっちかの思い込みや記憶違いではなく笑、ちゃんと親子として生きた時間が描かれていたんですよね。子供にはあまりに見慣れた、大人には親になって初めてわかるその意味。
あーやられたな、まぎれもなく陣はタロウを育てた「親」だったんだなと白旗を上げました。
お供たちとの関係性にフォーカスするなら余計なシーンではあったんだけど、一年間OPで「タロー!」って叫びつづけてきたおじさんの集大成としてはよくできていたので。
はい、陣さんについてはこれでおしまい。もう言うことない。
マスター。
とにかくムリだったキャラ3。
必要だった? いや、いてもいいけど、桃井陣でよくなかった? 百歩譲って、顔は同じだけど名前から何から全部違う人じゃダメだった?
彼が五色田介人でブラックゼンカイザーである必要性は本当にあった??
なんかその「なぜ」がずっと一年間引っかかってて、本筋と別なところで地味に不愉快だった。
マスターの登場頻度と劇中での重要度を振り返れば、それってけっこう過負荷だと思いません? 彼がいなければ、ストレスなく前のめりにハマれたはず。vsを無邪気に心待ちにできたはず。
この顔を不快に思うこともなかったはず。
ドンブラザーズに失敗があるとすれば、彼のキャスティングです。
いろいろ制作上のメリットはあるんだろうけど、とにかく私はこのマスターが好きになれませんでした。井上敏樹の筆が乗りはじめてからは明確に嫌いになってた。
向こうのせいじゃなかったら、私が一年ゼンカイジャー観てたのが間違いだったってことになります。
ゼンカイジャー好きすぎて、こういう形でいじってほしくなかったのかも。原作読んでない人の二次創作がムリなんで、ってことかもしれない。
そーいや私、井上敏樹の二次創作はダメなんだわ……キャラ崩壊させるだけの愉快犯だと思ってる。
しかも今回は、原作読まずに自分の勝手設定が気に入ってそれを喜々として書きつづけたんでしょ。ムリ。絶対ムリ。大手だろうと避けるタイプの同人誌。
常に「ウケるでしょ?」ってドヤ顔されてるのはわかるんだけど、ぜんっぜんおもしろくねえから!って気持ち。
たぶんね、アンチ白倉井上の人たちは、これをドンブラ全体に感じてたと思うんですよね。
全部好みですよ、好み。
私は無色田がすごく嫌い。
タロウと雉野も、今はそんなに嫌いじゃないけど、今後も好きにはならない。
でもマスター推し雉野推しタロウ推しの人と仲良くなれないとかそういうことではないと思うのです。私のフォロワーは井上敏樹アンチ多めなので。
村上幸平。
なにあの……なに?
愛人って言っちゃうの思うツボだから言いたくないけど、一年間全世界に向けて「井上敏樹の愛人マウント」ツイートを続けた意図はなに? 彼なりに「ロートル」の登板を案じていたってことなの? その「逢瀬っぽい自撮り」は何百枚あるの??
なんか気づいたらずっと視界の端にいて、常に気になりつづけてました。
でも最後の登場で「やっぱり愛人だったんだァ……」ってなってしまったので、今後このようなこと(=井上敏樹が実写作品を手がける)がございましたら、△的には自粛願いたいです。
ホントね、話題性の薄いギーツ最大の隠し球「鈴木福、悲願の変身!」の週でよかったよ。最後の最後に「敏樹の愛人」で燃えなくてよかったよ。
なんだかんだと一年間楽しませていただきました。
もうおなかいっぱいです。食べられません。
ゼンカイジャー好きだからVSはたぶん観にいっちゃうと思うけど、今後どんな展開があっても能動的にドンブラザーズを摂取することはないと思います。
それくらい、ちゃんと楽しんでちゃんと満たされた、すばらしい作品でした。
おとぎ話の「その後」を詮索するのは野暮ってもんですから。
めでたし、めでたし。で終わらせてください。
……このモヤッとした感想は、テーマを変えて次の記事へと続きます。