殿と姫。
ここ一ヶ月くらい、クライマックスの中での丈瑠の表情がすごくいい具合に変わっていってて、これが役者の実力と成長と物語の展開を巧く重ね合わせて計算しつくされた演技プランだとしたら、神懸かってるなと思いました。
シンケン語りのネタは山ほどあって、最終回を前にして語りたいこともいっぱいあるんだけど、その全部を差し置いて唐突に姫について語ってみようと思います(!?)。
大した萌えは語ってないんで、さらっと流してください。ちょっと切り口が古くさいのは半分くらいわざとです(笑)。大人ぶりたいお年ごろっていうか……
子どものころ、私たちがなりたかったのはピンクなんかじゃなかった。
ほんとうは、五人の真ん中に立っているいちばん強いレッドになりたかった。あるいは、レッドと対等に渡り合えるかっこいいブルーかブラックになりたかった。
……のかもしれないな、と女性脚本家が一年を通して描いた物語を見て思いました。
まこちゃんはやっぱ異質なピンクだったわ。完全にブルーかブラックのポジションだったもの。いや、流ノ介や千明がまこちゃんより遠いわけではないんだけども。ユウリ(タイム)やさくらさん(ボウケン)が恋愛感情でしか近づけなかった距離を、まこちゃんはそのままで踏み込んでいったんだよね。
私も短絡的だから何度も「今年も桃赤か!」って思っちゃったけど、よく考えたら恋愛フラグは一度も立ってなかったのですよ。まこちゃんは純粋に仲間として侍として、丈瑠を見守ってきたのですよ。ことはも「そういうんちゃうくて」の言葉どおり、一線を越えることなくずっと侍でありつづけたもんね。
そんで姫ですよ。
薫姫のシンケンレッドを見たとき、ある種の感慨で胸がいっぱいになりました(笑)。
女の身であの大斬刀を振り回す姿がかっこよくて、でもいじらしすぎて。
メイキング的な裏話を持ち込むのは野暮かもしれないけど、女形を演りつづけるためにわざとアクションに必要な筋肉を落としているというスーアクさんのエピソードも壮絶ですよね。女性以上に女性らしいシンケンレッドのアクションに心を打たれました。
女性レッドって、単純にものすごいパラダイムシフトだと思うのです。
それが、ゲストはゲストにしても「本物のレッド」っていうかたちで出てきたのは、意外性以上の意味があるよ。うまく言えないんだけど。
なにか政治的な「男女平等っぽい要素入れとこう」的エクスキューズじゃなくて、女の子も正規のレッドになっていいんだ!っていう発見だと思うのね。
まあプリキュアが肉弾戦を繰り広げるご時勢になに言ってんだって感じですが。でも戦隊枠の中でってとこが重要なんだよ! このへんのニュアンス難しい!(笑)
年明けてからの新キャラでたいへんだったとは思うのですが。姫が高潔で、丹波が俗物っていうバランスもすばらしいです。
シンケンジャーと視聴者の反発が全て丹波にいってくれたおかげで、相対的に姫の株が上がる図式は、ベタだけど気持ちよく罠にハマれました。
あくまで主役は殿で、最終的に中央に立つのは殿でないといけないのはわかってるんだけど、ありがちな「これだから姫は(女は)ダメなんだ」っていう結末にだけはならないだろうなと思えたから、こっちも抜け殻になった殿の心配だけしていればよかったわけで(笑)。
影の丈瑠もそりゃたいへんだったけど、「自分が出てこなければよかった」と思ってしまう姫も相当ギリギリなところで生きてきた気がします。
以下はいきすぎた妄想。
姫はさ、幼いときから丹波に「女だから」「姫だから」みたいなあつかいを受けつづけてきたんじゃないかな。姫に期待されてた役割は、封印の文字を会得することではなくて、次代のシンケンレッドを産むことだったんじゃないかな。
モヂカラの修行も、最初は丹波にないしょだったと思います。丹波に「志葉家当主」ではなく「シンケンレッド」としての実力を認めさせるには、丈瑠以上に過酷な修行が必要だったはず。しかも丈瑠には無条件に支えてくれる彦馬がいたけど(そう思うと影なのになんて贅沢)、姫にとっての丹波は障害だっただろうし。
あの裃黒子たちがよくできた人たちだったのかしら(笑)。
姫の書道フォンにかわいいストラップがついてるのが好きです。男以上に努力して、男以上に凛々しいんだけど、ホントは女の子っぽさもあるんだよ、っていうのがかわいくて、でもあれくらいしか遊べないのかと思うとちょっと切ない。
戦いが終わったら、女の子だけでショッピングとか行くといいよ! 千明に美味しいスイーツ教えてもらうといいよ! 7人で遊園地とか行くといいよ! 殿、息子なのにお父さん状態。
結局、姫は「母」になることでその役割を全うしてしまったんだけど、それが姫自身の発案っていうのは大きい。
封印の文字が使えないとなると、侍たちの力を最大限に引き出せる「影」を戦わせるのは戦略的に正しいし。対外的にも丹波を黙らせれば済むことだし。
母になるっていう自分自身の計略で、丹波もシンケンジャーも、シンケンジャーに倒される外道衆も屈伏させたことになるんだもんね。姫は負けてないんだよ。封印の文字を会得できるほど強い姫だからこその勝利なんだよ。
姫が姫の座を引きずり下ろされることもなく、姫と殿と対立することもなく、姫が志葉家当主としてしっかり機能して事態を収めたことに、ものすごく安心しました。丈瑠は姫に従っただけで、影として出過ぎたことはなにもしてないんだよね。
あとは、姫レッドの横にゴールドが控えてたのがいちばん萌えたかも。
あれは丈ちゃんや侍たちへの信頼でもあるし、姫をシンケンレッドと認めた上での行動でもあるし、どっかに男として姫を守ってやらなきゃ!っていうのもあったと思うし、それをさらっと行動で表すんだよね源ちゃんは。なにひとつ矛盾も裏切りもないんだよね。もうホント源ちゃんってなにやっても許されるからズルイ。
もういいよ婿入りしちゃえよって思ったけど、そうすると丈ちゃんのお父さんになっちゃうんだな……(笑)
太夫の最期も期待通りというか期待以上で、いい悪いは完全置き去りでひたすらうっとりでした。あれはあれで幸せな最期だったと思えるのは、ドウコクさまがかっこよすぎるからでしょうか(笑)。
まあ総括すると、真剣に出てくる女性陣っていろいろすごいな、っていう話でした。ゼッタイあると思ってた「殿の許嫁を名乗るウザい小娘」エピソードはなかったし!(時代劇なら定番じゃん?)
できるかどうかわかんないけど、まだまだ語りたいこと一覧。
◎先代シンケンジャー(影武者込みで)のこと
◎千明ちゃんと千明パパのこと
◎朔太郎さんのこと
◎ドウコクさまと太夫の関係
◎ドウコクさまとアクマロの関係
◎十臓がはぐれ外道から真性外道になったこと
字書きなんだから、二次創作で表現できたらいちばんいいんですけどねえ……