for the 女オタク。

通勤読書のお話。
マ王シリーズをなんとかようやく読み終わり、自分へのご褒美としてとっておいた「ねこのばば」を読みました。
うーん、お口直しに最適。
いや、マ王もおもしろかったですけど、それはまた後日ってことで。
さて。
「ねこのばば」は「しゃばけ」というシリーズの第3巻であります。
文庫ではシリーズ最新刊。続刊の早期文庫化を望む(せこい)。
2年連続で「新潮・夏の100冊」になってたから、今年もそうだと思ってたら微妙にズレて買い損ねてたんですよ。あ、ニッケルは基本的に、新潮のyobda賞品目当てにしか新潮文庫を買いません(笑)。ところがとくに読みたい本もないので、たいてい古典とかノンフィクションとかに走ってしまいます。しゃばけシリーズはレアケース。
まあ、大昔にラジオドラマで聴いた記憶も影響してるのかもしれませんが(笑)。
さて、しゃばけ。
どういう小説かというと。
女オタクの、女オタクによる、女オタクのための小説。
小説 of the 女オタク、 by the 女オタク、 for the 女オタク。
です。語呂悪ぃな。
時代モノだとか妖怪モノだとか推理モノだとかそんなことはどうでもよろしい。これは、女オタクが読むための小説なのです。
だいたい歴史と妖怪とミステリといったら、女オタクの好物ベスト10には確実にランクインしている要素ではありませんか。この時点で言い逃れはできません(だれが?)。
キャラクターや周辺設定などなど、女オタクが好みそうな要素が、一見それとはわからないように巧みに織り込まれているのです。
オタクは凝り性ですから、江戸の風俗がリアルに再現され……なんてのは朝飯前。意外に本格ミステリ……というのも驚くことではありません。必然的にそうなってしまうんです。なにしろオタクですから。
畳みかけるように、文庫版の解説も女オタク。普段は少女マンガやスラッシュなんかをあつかっている人々ですね。ていうか作者のプロフィールを見れば、元マンガ家というではありませんか。これがオタク作品でなくてなんなのかと。
こういうのを、レーベルや挿絵や文体その他にだまされて、まともな?本だと思って読みふける文学少女たちが、自分でも気づかぬうちにディープなオタクへと育っていくのです。アニメやマンガに縁のない子でも、女オタクが好む要素を刷り込まれるには申し分ない作品です。
あー、そういう「要素」を明文化して研究してる人っていないのかな? 最近オタク研究って流行りなんでしょう? <私信
ま、しゃばけとは、そういうシリーズです。
子細にひとつひとつ挙げていくよりも、読んでいただければ一発でご理解いただけるでしょう。兄弟あり、主従あり、相棒あり、幼なじみあり……登場人物は決して多くないのに、驚くべき充実のラインナップ。やおい好きにも健全なお嬢さまにも、それぞれの視点でお楽しみいただけます。テレビショッピングかここは。
オタクスメルに気づかなければそれもまたよし。そういうギリギリなところに立っているのがまた心憎いわけです。粋だねえ(?)。
あ、勧めてますからね? ニッカリお気に入りの本ですからね?(笑)
コレを読むたび、自分がオタクであることをいい意味で再認識します。オタクである自分を開きなおりでなく肯定してくれる感じ。パンピーを欺きつつ楽しむ、という女オタクらしい快楽のツボを絶妙についてくるのがたまりません。


で、「ねこのばば」。
いやあ、おもしろかったよ~。かゆいところに手が届く感じというか。キャラ萌え要素も存分に盛り込みながら物語もしっかりしてて、安心して読めるところはあいかわらず好感度大です。
前巻は仁吉の話があったけど、今度は佐助の話で、少しずつ若だんな周辺の秘密が明かされていくのがシリーズならではのおもしろさですね。
個人的には「たまやたまや」が好き。若だんなも準レギュラーの人たちもかっこよかったんですが、手代コンビが最高でした。燃えた。
さて、次の文庫化はいつかなー。

日記

Posted by nickel