刀剣乱舞実写映画。
キャストと脚本目当てに観にいったら予想外におもしろかったので、延々褒めていきたいと思います。
オススメできる人(ゲーム知らない前提):
◎戦国時代好き
◎アクション好き
◎山本耕史ファン
◎八嶋智人ファン
◎ジジイ好き(not三日月宗近)
あとは2.5次元ビジュアルをどこまで飲み込めるかという許容範囲の話になってくるので、そこは残念ながらどうにもできないのですけど。
ちなみに私のスタンスですが。
2.5次元は、表現方法としておもしろいと思っていて、そんなに嫌いではない派です。特撮見慣れてるから「現実離れしたビジュアル」には抵抗薄いのかも。原作の完全再現はそれほどこだわらない。二次元からの変換時にムリが生じるくらいなら改変してくれていい。でもあんまり愛がないのは敏感に察知するんで、遠慮なく酷評します。最近の乱立具合は正直どうかと思いますが、中にはよくやった!って拍手したくなるのもあるし。
刀ミュは紅白とNHKの特番で見かけたけど、ショーとしてはおもしろいんだろうなと思いました。刀ステは、ビジュアル込みのキャラ再現度が主眼なのかなと。
ブームになってからずっと舞台化を希望してるのは、鎧伝サムライトルーパーです。イケメンしか出ないし舞台演出も映えると思うのだが。なんで去年30周年でやらなかったよサンライズ……
刀剣乱舞は、個人的な好みとワガママにより堂々アンチです。自分が行く博物館や観光地に、ああいう萌えキャラ絵が置いてあるのが抵抗あるというだけ。経済効果云々にケチをつける気はないので表立って文句言うことはありませんが、道の駅でご当地キャラと銘打って巨乳ロリ美少女グッズ売ってるのと同じで、あまりいい気分じゃない。好みというか価値観の問題なので、今さら改められないしムリに合わせることでもないかなと。
でも刀に対する認知の変化が歴然なのは承知してます。刀剣博物館だけ例に取ってみても、ブーム前後で客層がらっと変わったのは本気でびっくりしました。前はおっさんと外国人観光客だけだったのに。
ていうか周りのプレイヤーやファンがみんな「ゲームシステム自体はクソ」「ゲーム以外のメディア展開はハズレなし」って言ってて、どういうことなのと。ゲームってプレイがおもしろいからヒットするんじゃないの。
今回は日頃のモヤモヤは割り切って「出来のよさそうな2.5次元作品」を観にいく、というスタンスで臨みました。
最初から期待値がすごく低かったというのはあるかと思いますが、まあ予想以上にちゃんと東宝時代劇で、まさかの歴史ミステリだったので驚きながら楽しめました。
今後、ゲームをやらない私が刀剣乱舞にログインすることはないし、これからも行く先々でキャラ絵を見かけたら腹の中で忌々しく思うのでしょう。でも、この映画だけはそんなこと関係なくおもしろかったです。
以下、そこそこネタバレ感想。自己責任で。
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えっとまずね、映画泥棒のCMが刀剣乱舞とのコラボで、私が見たのは日本号が映画泥棒を取り押さえてるやつ。いくつかバージョンがあるみたいで、へえ~おもしろいな~と思ってたんだけど。
パンフ見たら、この映画の監督が映画泥棒を撮ったんだそうですね! すげえ豪華じゃん!って思わず盛り上がってしまいました。セットとか完璧に本物だからね。そりゃ監督が本物ならもう公式映画泥棒だよね。
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まず、思ったより時代劇だった件。
いきなり信長さまが足袋履いたままお布団から出てきて、あと夜着の下もめっちゃ着込んでたので「靴下重ね履きしてる冷え性の女子か!」と軽快に突っ込むところから入りました本能寺の変ですが!
もうね、完全に時代劇。東宝が本気出してる。リアル火矢なんて久々に見た(笑)。映像の色味がすごく「東宝時代劇」で、おおお何を見てるんだ私は……と興奮しました。
CGが安っぽくなかったのも大きい。
インパクト、かっこよさ、美しさ、と見せるべき場面で見せるべきポイントをきちんと押さえて、効果的に入れてくるからちゃんと画面になじんでる。
時間遡行軍がかっこよかった。アレでしょ、紅白で山内惠介襲ってた人たちでしょ。
彼らも刀だってことを初めて知ったよ。人の姿をした刀剣男士に対して、怪物だから明確に敵だってわかる。あと群れをなしてくるのが怖いし、甲冑着てるから時代劇感をそこまでジャマしないし。刀剣男士たちよりなじんでた(笑)。
あと山本耕史が文句なしにかっこいい織田信長。
わたしこの人は神経質なひねくれた役やってるほうがハマるなって思うんだけど、正々堂々かっこいい役もちゃんと様になってしまうからズルイよなとは思う。で、信長だから動じない。時間遡行軍が現れても、自称ジジイの美青年が現れても、すぐ自分のペースを取り戻す。正統派の信長です。
やられたーと思ったのが、秀吉。
情報が中途半端で、光秀役だと思ってたんだよね。でもこの秀吉がよかった。性格も信長との関係も、こんながっちり時代劇枠のベタな秀吉でまだ新しいことができるんだ!って思わされた。完全にストーリーの勝利。それを俳優と東宝がきっちり作り込んで成立させてるから、突飛なトンデモ話にはなってないのよな。
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ということでやっぱりストーリーがよかったんだと思います。
本能寺の変に隠された真実、なんてもう何百何千とパターンがあるわけですよ。だいたいのことは予想できるし、ファンタジー要素で飛ばしても「まあそういうものね」って受け入れてしまうわけですよ慣れてるから。
そんなスレた観客を相手に、新たな「本能寺の真実」を提示し、そして実はそこに時間遡行軍とかの不思議な力は関わってない、つまり「本当にあったかもしれない歴史」を作り上げる。これだけでよくできた歴史ミステリなんですけど。
さらに、そこへ「刀として存在していたころの」男士たちを絡ませることで、「刀剣乱舞の物語」としても成立させてるんですよね。どちらが欠けてもこの物語は成立しない。どっちかに振り切ってしまえば楽なのに、どっちも捨てなかった。
それだけじゃなく、「本丸」でも別軸の物語を展開して、メインが信長と秀吉にフォーカスされすぎないようにしてるのもすごい。あくまで主役は三日月、そして刀剣男士たちだから。コスプレ学芸会なんていらないよ、山本耕史と八嶋智人だけ見せてくれりゃいいよ、とは言わせない作りになってるんですよね。
刀剣男士はいっぱいいるはずなのに、なぜ8人しか出てこないのか、というエクスキューズも物語に組み込まれていて、個人的には「そこまでやるか」と思いました。なんかもっと雑な言い訳だって許されただろうに、すごい作り込まれてる。
「本能寺の謎」「本丸の異変」「歴史を守る理由」「刀剣男士の存在説明」が全部無駄なく緻密に組まれていて、ゲーム原作とか関係ない単品の物語としてすっごくよくできてた。
これが、俺たちの小林靖子よ……!!とドヤ顔したくなるくらい(笑)。
最後に、最初と違うタイトルが出るの、一瞬遅れて気づいてからぞわっとしました。いや、歓声上げたくなったというか。
最初はもちろん出なかったし、ポスターにもパンフにもない、物語を見届けた人だけが見られる「もうひとつの」そして「本当の」タイトル。
本能寺じゃない、本丸で起きた物語が本筋だったんだっていう「種明かし」なんですよね。物語がこのタイトルの伏線になってる。これはちょっと見たことないパターンだった。
アレ、テンション上がるよね? たぶんゲームやってる人ならもっと上がるんだよね!?
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そんで、まさかの萌えもあったんですよ……!。
いや、そんなもんあるわけないと思うじゃないですか、わたしアンチとうらぶだし。油断してるときがいちばんヤバいですよね。
後ろから刺されました……
何って、さにわですよさにわ!(漢字出ない)
さにわって、刀剣男士たちとn角関係くり広げるハーレムタイプ主人公だと思ってたんですけど違うんですね(別のゲームと混じってる)。
紅白見て山内惠介がさにわだと思ってたけど違うんですね(ゲームですらない)。
ゲームの主人公なんて顔なしだと思ってたから、出てきてすぐに「うわなにこれヤバい」って思いました。
そして思ったより出番多い! かと思ったらストーリーに食い込んでくる!! いやむしろヒロイン!?
一目見ただけで高貴な方だとわかる。えっこれがさにわ? 乙女ゲーの主人公っぽくないね?(だから誤解)と思わせておいて。
もう何にも動じなさそうな枯れたさにわが、見目麗しい若者たちにかしずかれて、自分より年上だけど永遠の美男子である三日月宗近にタメ口叩かれながらも、彼に全てを託すっていう、それだけでなんて美しい物語!
また常に御簾の向こうっていうのがエロくてね。「ご尊顔を!ご尊顔をー!」って心の中で叫んでました。
いや、べつにさにわが女性でもぜんぜんかまわなかったと思うんですよ。そういうものなんだなと思って観るから。
でも、同年代の若者や生意気なショタや上から来る感じのおっさんじゃなく、穏やかなおじいさまっていうのがすごくいい。女性向けイケメンゲームという枠組みで、その発想はなかった。
もっと刀剣男士がわいわいするんだと思ってたから、さにわと三日月宗近のストーリーがわりと主軸で、なんだよ三日月、独り占めかよ~って思いました!
鶯丸もそこそこに近くてよかったし、会えないでギリギリしてる長谷部もよかったなあ……さにわ愛されてんだなあって感じで。
ラストは、それで本丸立ちゆくの?とちょっと不安になりましたが、きっと三日月がどうにかするのでしょう。今までもどうにかしてきたのでしょう。だって1000歳のおじいちゃんらしいから。
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で、メインの刀剣男士です。
映画に呼ぶくらいだから粒ぞろいかと思ったら、意外と玉石混交だったなあ!(正直な感想)
まあいちおう露出の多い作品だから、なんとなく知ってはいるんだけど、きっちり名前や関係性まで押さえてるわけじゃないので、この人数のキャラを名前覚えなくてもちゃんと区別ができるようにする脚本はすごいなと思いました。単純なことだけど、テレビでも舞台でもできない人いっぱいいるから。フォローしきれないキャラをモブ扱いするほうが楽なんですよ。全員のキャラ立ちと見せ場をしっかり作るとこはさすがです。
以下、容赦ないキャラと役者への「思ったまま感想」。忖度はしないよ!!
三日月宗近:
ゲームの看板だしどこでも見るから顔は知ってる。博物館でおじいちゃんって呼ばれてるのも聞いたことある。ただ、名前呼ばれるたびに井上涼の「三日月宗近~♪」が脳内に流れて困りました。私の三日月宗近のイメージ。
終始ジジイアピールしすぎで若干イラッとしましたが、そこも含めてのキャラなのだろうなあと。さにわや信長にジジイアピールするのは嫌味なのか? キャラとしてはあんまり好きなタイプじゃないけど、これは元キャラの再現度を絶賛するべきなんでしょうね。
さて、さすが「2.5次元の帝王」、ベテラン相手にも堂々とした存在感でした。もちろんちゃんと主役として撮ってくれてるというのはある。でもその待遇も含めて、ついに全国ロードショー映画の主役かあ……と感慨深い気持ちになりました。いろいろ不遇な時代もあったけど大きくなったなあって……デビュー当時から知ってる人ならみんな思ったよね? わたしべつに拡樹ファンじゃないけど、もう黙って拡樹に拍手を送るための映画なのかもしれない。
ただ彼の鬼気迫る芝居力が発揮されるのは2.5次元じゃないんだよな、とは思っています。ここで終わらないでほしい、むしろ三日月宗近は映画を花道にもう卒業してもいい。そんなことをエンドロールのあいだに思いました。
鶯丸:
一人でこそこそやってる三日月宗近に対して、みんなに気配りしてるお兄さんみたいな好感度高めのキャラでした。
役者によっちゃすごくわざとらしくなったりいやらしくなったりしそうなとこを、うまいこと廣瀬くんが散らしてる印象でした。前ちゃんとかだと忠実にいやらしくしちゃうんだろうなあ(笑)。髪がありえない緑色でも美人に見えてしまう彼は本物の美形なんだといつも思います。眼福。
薬研藤四郎:
短パンのきたむー……!!以外にコメントがないくらい、ずっとフトモモに目がいっていた気がしますが、実はちゃんと本能寺の物語に関わってたのでよかった。短パンだけじゃないんだぞと。顔なら8人中廣瀬くんと北村くんがダントツだと思います。というか実写化に耐えうるビジュアルってレアだからね、ホントにすごいことだからね。もうちょっと出番多くてもよかったけどね。
不動行光:
なんでこいつずっとミルク飲んでるんだろうな、チーク入れすぎじゃね?と思ってたら、飲んだくれという設定だった。甘酒わかりにくいからせめてワンカップにしようぜ。
半ズボンを履いてない鯛造を逆に思い出せないのですが、飲んだくれ半ズボンでも乗りこなしてくるベテラン感はホントすごいなって思います。
へし切長谷部:
にほへしやってる友人がいるので、このキャラは知ってる……と思いながら見てたんだけど、やべえおもしろキャラだ(笑)。冗談通じないし余計なこと言っちゃうし、嫌いじゃない。単品だと持てあましそうだけど日本号がうまいことおもしろ方向に引っぱってくれてる。うわあ、得なキャラだな!
和田の芝居は初めて見たかな。猫の手借り隊でコバカツにかわいがられてるのしか知らなかった。すごいがんばってる感があったけど、融通が利かない長谷部のキャラに合ってたのでまあ結果オーライかなと。ラストシーン、完全に本人に戻ってたので岩永さんご指導お願いします。
日本号:
上述の理由で、にほへしという組み合わせは認識してはいたけど、ホントにずっと二人セットでいるから「ああそうかあ」って思った(笑)。うん、公式で仲良しさんなんだね。あの長さの槍を振りまわすには、あれくらいのタッパが必要なんだなとアクションを見て理解しました。
一人だけでっかくて一人だけガチ強そうで一人だけこなれたナチュラルな芝居で、ヘンな髪型なのにイケメンかよぉぉ!って画面に映るたびに思ってた。一人だけ部屋着(?)のシーンがあったのもよかった。この人が舞台版に出るならライビュくらいは行ってもいいわー。
山姥切国広:
ごめん、あたしこの子のキャラデザ苦手。たぶん彼の「絵師」と合わないんだと思う。実写化が悪いわけではない。むしろ元のキャラデがよくわかる完璧な再現力だったと思いました。
あと荒牧くんって最近2.5界隈でよく名前見かけるから拡樹の後継者くらいの実力者なんだろうなと思ってたのに、役のせいか今ひとつ魅力がわからなかった。舞台上だと輝くのかもしれないけど。
骨喰藤四郎:
あの、前髪クロスしてる系のキャラデも苦手なんですが、実写であの髪型をキープするのはとても大変で、あんなにアクションしても崩れないというのはとてもすごいことなのだ、現場の技術と努力の結晶なのだ、とウィッグに詳しい人から聞かされて無責任な批判を反省しました。そもそもクロスさせなきゃいいのにというのは禁句なんだろうな。
この役者さんは完全にはじめましてだった。名前も顔も知らない。出たてっぽいのにきたむーより重要なポジションなの納得いかない(笑)。
最後に出てきたの、ゲームファンなら「おおっ!」て思う感じのキャラなんだろうなと思っていたら映画オリジナルだそうで、まあ彼がゲーム本編に逆輸入される前提なら盛り上がるかもねと思いました。
あと刀が長ズボンで短刀が半ズボンなんだから、脇差は七分丈くらいにしといてほしかったって思いました。見た目のわかりやすさ希望。
ところであのピンクのポーション、便利ですね? 元気になって服まで修復されるのすごい。ゲームのアイテムですかね?? 拡樹さまがお上品に飲み干してるのおもしろかった。
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はい、長々感想失礼しました。
ネタバレとはいったけど、ここまで読んで観にいってみようかなって思ってくださる方がいらしたらうれしいです。
あと今さらながら刀剣乱舞ファンの方、好き放題言ってすみませんでした……無知ゆえの誤解などありましたらご容赦ください。