きのう何食べた?がおもしろかった、というつまらない感想。
理屈が大半だからつまらないと思います、と最初にお断りしておきます。
萌え感想はツイッタでタグ追ったらいいよ。
よしながふみの作品って、いかにも頭のいい人が書くマンガだなあっていう印象で昔はあんまり好きじゃなかったんだけど、ある時期から頭のいい人ってやっぱりすごいな、ってなったので、まあガチファンではないけど支持はしてるほうです、という前提で。
今までずーっと、実写化不可能な作家だと思ってました。
べつに突飛な設定じゃないし絵柄もリアル寄りの落ちついた雰囲気だし、なによりも登場人物のやりとりにリアリティがあるのに、なぜか実写化できない。リアルすぎるからマンガにしているのであって、それをまた実写にしてしまったらマンガとしてのおもしろさは失われるだけだろうと、そう思ってました。あとアニメでは動かしにくいんだなと(笑)。
ちなみにこの理屈で、西原理恵子は実写にしたらダメだよね。たぶん多田由美もだと最近気づいた。
それに、テレビはなぜか、よしながふみのマンガから「コア」を抜こうとするきらいがありましたよね。天ぷらの中身を抜いて衣だけ使おうとする感じ。何度かくり返されるとそれはもう仕方ないことなのであって、こちらも「実写化!」と聞くたびにある程度のあきらめを持って、「まあ『一般大衆』に向けるとこうせざるをえないんだろうな」と期待値をマイナスまで下げ、文句を言うことすらバカバカしいと思うようになっていました。
なにより、とても頭がいいと思われる原作者がOKを出してるんだから、きっとこれはきちんと理由のある譲歩で、そこに「なんでこんなの許したんだ」と言ってはいけないんだろうなとも思ったし。
実写化できない、マンガでしか表現できないすごい作品なんだと思い込むことで、自分を納得させていました。
今回も、西島秀俊はシロさんみたいに威圧感ないし、内野聖陽はケンジみたいにかわいくないし、シロさんを受けっぽく見せようっていう苦肉の策かな、まあテレ東だしゲイって設定がなくなることはないだろうけど、しょせん深夜の飯テロドラマが主軸なんだろ、でもまあ一応見とこうかな、とやっぱり最初からあきらめてました。
で、結果は皆さんもご覧の通りです。
ゲイもリアルもごはんも、なんにもあきらめなくてよかった!!
ちゃんとシロさんとケンジだった!!
ちゃんとよしながふみのキャラクターだった!!
西島さんなりのツンデレなシロさん、内野さんなりのかわいいケンジで、ちゃんとシロさんとケンジの「リアルな」日常が描かれてることに、ものすごく感動してしまいました。お部屋にあるものも、「これはケンジが買ったのかな、こっちはシロさんだな、二人でケンカしながら買ったのはコレかな」って考えながら見るの楽しい。
登場人物の会話も、マンガ表現をドラマ表現に置き換えつつちゃんと原作の要素が入れ込まれていて、天ぷらの衣だけだなあとは全く思わなかった。あ、今までの実写化って、ドラマとしての善し悪しはさておいて、よしながふみの知性を感じられなかったってのもあるよね。
そんで、脇の人々が見た瞬間に「あっ!」ってわかる。そう、それ!ってなる。
美容室の店長なんか「それっぽい!」ってなったし、シロさんのご両親は完璧かって思った(お父さん、残念ですがご快復お祈りしてます)。
あとすげえよしながふみの絵柄な!って人たちがいる。佳代子さんのだんなさん、ああいう人描くよね~!って思ったし。
巧いなって思ったのは、弁護士事務所のシーンで始まって、シロさんのキャラ紹介を自然にしながら若先生の「きのう何食べた?」でタイトルにつなげるところ。あと、OPのケンジの動画。あれだけでこの作品をほとんど説明できてるの、ちゃんとしてるなって思いました。
なんだ、テレビできるんじゃん。むしろなんで今までできなかったの。
誰に忖度してたの。自主規制とか一般化とか言うけど、誰のほうを向いて決めてたのそれ。
とは思いましたけど、今だからわかることもあります。
私と同じように「今のテレビではよしながふみを実写化できない」と思い知らされた大勢の人たちの中に、テレビの現場の人たちもいて、その人たちがやっと好きなようにできるようになった、環境や技術もだけど、彼らのポジションが上がったってことだと思うんです。虎視眈々とチャンスを狙ってたんですよきっと。
ここ数年の平成ライダーや、「おっさんずラブ」がまさにそれだなって思ってるんですけど、ってもう何度言うんだって感じですけど。
先日、お仲間に「おっさんずラブ見たけど今までのBLと大して変わらない、目新しいものじゃなかった」と言われて、そのへんの認識ギャップをうまく説明することができなかったんですよね。でもまあおもしろくなかったという人にゴリ押ししても仕方ないしね。
おっさんずラブの真価は、黒澤部長がヒロインだったというとこなんだと思うんですよ。そして徹底して年下攻めのスタンスだったとこだと思うんですよ。年下攻めって腐女子的にはスタンダードでも、一般的にはすごく難しい嗜好だから。今までの地上波では「これは受け入れられないからやめとこうか」ってなっちゃうとこを、「やりたい!」と「やれる!」を両方持った人がちゃんとしたクオリティで商業的に成功させたっていうのがすごいんですよ。
なんだかんだでテレビってまだ一定の影響力があるし、人気出たコンテンツに群がる人々がさらに市場を大きくしてくれるから、やっぱり第一線でつづけてきて力を勝ち取った人たちってすごいんだなと思います。おっさんずラブがヒットしたからこそ、今なら年下攻めの殿堂・よしながふみをドラマ化できる!ってなったんだと思う。このへんはぜったい無関係じゃないと思う。
ちなみに、商業BL読まない私がよしながふみは読めるのは、年下攻めって部分も大きいです(笑)。
次回、大ちゃんとジルベールが出ますね。
大ちゃんもやっぱり私のイメージではないけど、あの役者さんなら乗りこなしてしまうんだろうな。ジルベールは、シロさんのイメージとのスイッチがどうなるか楽しみだな。