真田丸文まとめ1

直江攻め。おやかたさま甘やかし隊。

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鼻先が触れそうな近さで、景勝は笑み混じりに問うた。
「わしが欲しいか」
そうだと答えると、決まって「かまわぬ」と許諾の言葉が返ってくる。兼続は迷わずに主を抱きすくめ、寝床へと引き倒した。
裾を割ってひざに手を置く。こちらを見上げる景勝の目はすでに物欲しげに濡れていた。
「……………」
ほんとうに欲しがっているのはどちらか、兼続は知っている。
だがそうとは悟らせず、兼続の求めに慈悲で応えてやっているのだと景勝に思わせなくてはならない。
体面を重んじる景勝に、男に抱かれることを自ら望ませてはならない。それが兼続と二人だけの、閨の秘め事であったとしても。
実際、景勝は共寝を命じるときには決まって兼続を抱いた。立場としても自然とまではいかないがそれほど奇妙なことでもない。
だが景勝が真に求めているのは、兼続を組み敷き支配することではないのだ。兼続だけが気づき、そしてこの面倒な主を傷つけずに満たす術をひねり出した。
「兼続……っ」
腕に無骨な指が食い込む。弓や刀を持たせれば鬼神のごとき武勇を見せるその肉体も、今の世では持ち腐れという他ない。かつては縋られるだけで手の痕が残るほどであったものだが……慎重に腰を進めながら、そんなことを思う。
「……っ」
万一傷などつけてはと思ってのことだったが、結果として焦らすかたちになっているのもわかってはいる。景勝の屹立は先走りに濡れながらも、満足にはほど遠いといった様子だった。
しがみついてくる腕にいっそうの力がこもる。
「遠慮、するでない……」
「っ、は……」
返事が一拍遅れたのは、腰から突き上げてくる快感をやり過ごそうとしていたせいだった。だが今宵の景勝が求めているのは労りや安らぎではないらしい。
「御免……っ」
両ひざを抱え上げ、より深く入るように体をわずかに起こす。
「ひっ……」
悲鳴ともつかない音が喉から洩れたかと思うと、そこから言葉はいっさいなくなった。兼続の些か手荒な動きに合わせるように、呻きとも喘ぎともつかぬ声が口からこぼれ落ちていく。
追い立てられた景勝が兼続の責め立てに屈するまでには、そうかからなかった。
「……んぁあっ!」
触れてもいない欲の塊が、熱を弾けさせる。
「あぁ……」
目を伏せ身を震わせる主は、恥じ入っているようにも見えた。
よく躾けられた稚児などにはこうした者もいるとは聞くものの……兼続も作法としては心得ているが、そこまで身を慣れさせることは叶わなかった。当人の心持ちはさておいて、少なくとも景勝の体は男のつとめを果たすことより男に抱かれるほうを望んでいるのだろう。
だからこそ、認めさせてはならない。臣下の腕に抱かれて身も世もなく泣きよがることを望む男、などという己の姿を。兼続がわきまえずに激しく求めたから、景勝の意志に反して痴態を演じさせられてしまった、という筋書きでなくてはならない。
兼続は大きく息をつき、主から自らを抜こうとした。しかしいきなり抱き寄せられ、逆に奥まで一気に穿つ格好になる。
「ぁ……」
景勝が身を反らせたのと、兼続が主の中に熱を迸らせたのは同時だった。
「……ですから、なにゆえ……」
始末が面倒だというのに、わざわざ中に出させようとするのも時折あること。景勝は荒い息のあいだで笑みを洩らしながらも、答えようとはしない。
ため息をついて身を引こうとしたが、景勝の長い腕が腰を抱え込んでいておいそれと動けない。
眉根を寄せた兼続を正面から覗き込み、景勝はかすれた声で問うた。
「もう、よいのか」
「……!」
欲しがっているふりをする、などとはよく言えたものだ。
他のだれにも見せない景勝の姿を、最も渇望しているのはだれだというのか。
「いえ……」
返事もそこそこに、首筋に唇を触れさせた。そこに歯を立てるのは反逆の意志だと感じていたから、噛みつきたい衝動を抑えて幾度も口づける。骨張った胸元にも、尖って張りつめた突起にも。舌先で嬲って吸い上げると、景勝は声もなく喘いだ。
景勝とつながったままのそれはすでに硬さを取り戻していて、相手にもその脈動が伝わっているにちがいない。身じろぎするたびに、ぐちゃりと卑猥な水音が耳を犯した。腰を押さえつけて激しく突き込んだらと考えるだけで、二人の体はいっそう熱を帯びていく。
こうなってはもう、どちらがという話ではなくなってくる。
「御屋形さま、今一度……」
他のだれにも聞かせない兼続の懇願に、景勝は肩で息をしながら「かまわぬ」とだけ囁いた。

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ノったらノンストップ直江攻め。おやかたさま甘やかし隊。