映画沈黙の艦隊。

沈黙の艦隊の実写映画やるって聞いたとき、
コナン以上のクオリティ出せるんですか? こっちはイージス艦も潜水艦も洋上施設も押さえてるんですけど? 脚本は櫻井武晴ですけど?
と煽りツイートしてたニッケルです。まあコナンくんいたら潜水艦爆破されるからね。

実は原作読んでないんですけど、なんか玉木宏がかっこいいなあ……って言ってたら、なぜか原作ガチ勢のアルカリさんといっしょに観にいくハメになってました。
鑑賞後の温度差がすごすぎて風邪ひきました。スペースかmocriで語れよと思ってました。

以下ネタバレ感想。

そういや空母出てきたとき「あっトランスフォーマーアーススパーク始まったんだっけあとで観なきゃ」と思いました。あそこに並んでる戦闘機がジェットロンに見える呪いにかかっているので……

事前知識は、「海江田って人が原子力潜水艦で独立国家を宣言する」話。ってだけ。

なんにも知らないからだろうけど。
「この人はどうなるんだろう」「ここはどうやって切り抜けるんだろう」と普通に展開を楽しみにしながら観ていられました。
基本同じカットのくり返しではあるんですが、登場人物に集中して見てるからそこまで気に留めるヒマがなかったです。
30年前からアップデートしてんだろうなーって部分、今だとセンシティブで描けないんだろうなーって部分、それぞれ理由がわかるから、多少ズレててもぼやけててもそういうもんだろうなーって感じで。

まずとにかく玉木宏がかっこよすぎた……あれはよくない。
アイス食べるとこ1万点。
銃を腰に挟むとこ2万点。
あと存在が億点満点。

主役は深町なんですよね?って認識してから、話が入ってくるようになりました。
あまりに魅力的すぎるので、ふと彼が海江田だったら?と思ったけど、ダメだわ……まず「75人全員海江田に抱かれてるだろ」ってなってしまうのでダメ。あと映画的には(核を持って日本に敵対する)海江田が正義になってはいけないのでダメ。
かっこよすぎて物語が成立できないレベルなんですよ、玉木宏。
『ゴールデンカムイ』も読んでないけどきっと成功する、鶴見中尉のとこだけ。

それに対して、大沢たかおの教祖感すごい。
なんであんな普通の(気持ち悪い)おじさんに75人の男たちが従ってるのか。
くり返すけど今、海江田を正義として描くのはアウトなので、こういうキャラにするしかなかったよねとは思います。
75人全員の顔が見えないのも不気味でよかった。深町のところみたいに個々の人間味を見せないから、集団の気持ち悪さがすごく出てる。

前原滉のソナー長がたぶん乗組員代表だよね?
あの、場にそぐわない舌っ足らずで幼めの声。開いてるか閉じてるかわからない糸目。なにがあっても変わらない表情とテンション。
やべえヤツだなって思ったし、こいつが仕切ってるソナーチームもヤバいはずだなって思える。
ということは、彼らが従ってる海江田はもっとヤバい。
そういう代表感。最高でした。

余談ながら、毎回ヘッドフォンをオンオフするたびにズレるメガネを直す仕草がよかったです。こいつコンタクトにしようとか思ったことなさそうだな。最初にこっち観てたら、前原滉はサイコパスキャラ専門だと思ってたかもしれないので『らんまん』からでよかった。

唯一感情がありそうだったのは入江の弟で、でも彼もきっと正気じゃない。
この船にいる意味はまだ(今回は)わからなかったけど、狂ってなきゃここにいないですよね。というのが淡々とした回想からわかる。
いい意味で不協和音になるポテンシャルもあるし、目が離せなかったです。
重要なポジションだと思ったらオリキャラだそうでびっくり。いい仕事してました。これから原作ファンも驚かせてほしい。

逆に唯一違和感があったのは、中村蒼かな……
本来なら彼が信者代表のはずなのに、一人だけ正気の顔してたのが残念でした。大沢たかおとのバランスが取れてなかった。
元のキャラは知らないけど、副艦長というポジションなら、もうちょっとガン決まった顔で艦長を崇めててほしい。副長っていうのはそういう立ち位置だから(ガン決まった目)
あの彼だと、深町が一発ビンタ食らわせれば目を覚ましそうじゃん。
そもそも佇まいが軍人っぽくないのでキャスティングミスよね。いや、彼に艦長妄信軍人所作をさせなかった演出のせいか。

深町んちの若手、海江田んちとの対比で人間味を出したかったのはわかる。
でも、もうちょっと顔の濃い子入れてください。みんな同じ服装で見分けつかないんで。

ユースケのソナー長もすごくよかった。
のんびりしてるけどプロフェッショナルなんだろうなって描写がされてて、キリッとした深町とのバランスもいい。
「狂気の前原滉」に対して「正気のユースケ」っていう配置も効いてた。これは私が勝手に対比してるだけかもしれないけど。
ていうか私が俳優のユースケ好きなんだよね、認める笑

速水副長が女性なのは時代に合わせた改変なんだと理解したけど、じゃあなんでエプロンつけて厨房の手伝いしたんだ、とかいろいろ言いたくなる部分もあったので、女性じゃなくてもよかった気がします。
アップデートもやるならちゃんとやって!

ジジイ相手に切り込んでいく江口洋介は、すごくかっこよかった。切れ味のよさ、佇まい、もう最高ですよ。頭も性格もいい人なんだろうな。
陸の主役は彼なんだと認識してから、全体が理解できるようになりました。海江田に対して、深町と海原がそれぞれのポジションから対抗していくんだろうなと。
ただ、人間関係とか考えると、海原こそが女性でもよかったよ。聡明な女性が老害共を蹴散らして世代交代を果たす、っていうストーリーはありなんじゃないか。
総理大臣は……今回はアレだったけど、このあと逆転するんだよね?
メインが男性外せないなら、女性総理でもよかったのでは? ただの傀儡と思われていたが……的な。政治家方面、たぶん今後の展開で重要なのに、あんまりおもしろくない顔ぶれだったのが残念でした。

あと、米大統領がすごいモブ顔でびっくりした笑
キャスティングの時期にたぶんトランプ政権だったんだろうなあ。オバマ政権中だったらもっと傲慢なザ・大統領だったんだろうなあ。というかアメリカ人が全員モブだった。全員白人中年男性。黒人も女性も指揮官クラスにいない。
今どきそんな解像度の低い米軍、フィクションに登場する?ってくらい雑でした。

なんか日米関係の話なんだなというのは理解したけど、現状と乖離が大きすぎて、さすがに飲み込みきれない部分もちらほら……
だって米軍人が「核ミサイルの爆破を躊躇する」なんてことある? しかもパールハーバーの話を持ち出した人が。それは普通に教科書と新聞読んでればわかる理屈じゃないのか、違うのか。
そもそも今のアメリカは世界の警察からじわじわ退いてるし、ソ連/ロシアはいろんな意味でもうアンタッチャブルだし……2023年にコレを公開する主題的な意義は、皆無といっていいですよね。
こっちも察する力を総動員して立ち向かったわけですが、根本的にそこが曖昧なままだった。何もこじつけられなかった。もっとがんばってほしかったです。

まあ単純に、大沢たかおが海江田を演じられるうちにやりたかったってことなんでしょうね……
彼が海江田にふさわしいかは、原作ファンに判断を任せます。
個人的には、河村隆一がヤン・ウェンリーになったのと同じことなんだと納得しています。自分が一番のファンだと思ってる人には敵わないな、っていう。
わたしは、田中圭のヤン・ウェンリーがベストだと思ってますよ。でもヤン・ウェンリーを愛してるのは河村隆一だから。

でもトータルではちゃんとおもしろかったので、かわぐちかいじの話がすごいんだなと思った。伊達に同じテーマで何作も描いてない。潜水艦マンガのあだち充(?)

あ、これはどうでもいいことなんですけど。
潜水艦ぜんぶ同じに見えるんで、色分けとかしてほしいです。両サイドにでっかく名前書くとか。せめて米軍は星条旗柄にしてください。
どうせソナーでしか認識してないんだから外見はどうでもいいでしょ!

でも続編があるなら、また玉木宏と江口洋介を観にいきたいです。
あと前原滉とユースケサンタマリア。

ちなみに核ミサイルの件、アルカリには普通にネタバレされました。
えー……もうちょっとドキドキしたかった……笑