テキストかイラストかマンガか。

2か月くらい前に書いた記事が出てきたので、お焚き上げ。だらだら長いです。絵も貼ってます。


ご存じのとおり、去年の夏から絵を描いています。
ご存じのとおり、ニッケルは生粋の字書きですが、いろんなタイミングが重なったので手を出したという流れです。

ずっと字だけ書いてきた人間がいきなり絵を描くというのは当然ムチャなわけで、あたりまえなんですけどガンガン壁にぶつかってます。
歳とればとるほど新しいことへのハードルは上がっていくのはもちろん実感としてあって、50や60過ぎてから新しいこと始めようとする人なんてホントすごい。うちの両親なんか退職してからいろいろ勉強しなくちゃいけないようなことを始めててどういうつもりだと思ったけど、やっぱ尊敬せざるをえない。

そんなこんなで悪戦苦闘の試行錯誤と、字を書くことと絵を描くことの違い、字書きが絵を描く意義、など。


まあ、全くゼロからというのも嘘で、絵を描いてなかった時期がすごく長かったというか。
なので好きなマンガの模写とかアナログ原稿作成とか自己流なりにクロッキーとかデッサンごっことか、自分の画力に絶望するとか調子に乗るとか、そのへんはすでに済ませてきてます。
最初の半年くらいは、やめる前の水準まで戻す作業でした。

絵を描かなくなった理由は山ほどあるけど、一番は「小説のほうがコスパいい」です。
自分の妄想を一番高い精度で伝えられるのが、私には文章だった。得意分野と位置づけて書き続けることで、スピードやクオリティも上がっていくので、どんどん効率的になる。ツールも選ばないしあれこれ細工すれば仕事中にも書ける(?)。ニッケルにとっては最も「コスパがいい」表現手段です。今後もやめる気はないです。

その裏返しとして、マンガを描く根気がなかった、自分の絵や芸風が好きになれなかった、などの理由で絵を描くほうがフェードアウトしていきました。
だって「コスパ悪い」んですもの。黙々とやる作業多いし、時間や場所を選ぶし、一見してすぐに拙さがわかっちゃうし。デジタルへの移行がうまくできなかったのも口実になったかも。
そういう挫折とまではいかないけれども、ネガティブな別れ方をした相手と、今もう一度やりなおそうとしてるので、まず失敗体験を乗り越えるのがつらい……


いや、まだ乗り越えられてないんですけど。
iPad&Applepencilで自分の弱点をいくらかフォローできるという衝撃が、一度あきらめた道に戻ってくる力を持っていたことは事実です。
でも線が思いどおりに引けるようになっても、その線から生み出される自分の絵がどうしても好きになれない。これは技術的なものじゃなくて(技術は上見たらキリがないから)完全に自意識の問題だから根が深いんですよね。課題は周囲から指摘してもらえて気づけるけど、自意識はそう簡単に変えられないので。

たぶん、小説が強烈な成功体験になってるんですよ。自分の萌えをきちんと表出できて、たまに感想までいただけるっていう、つまり自他共に認めた作品を私は書ける、そのつもりで創作やってる。
おそらく絵やマンガにも同程度の成功を求めてしまっているのです。だから、ぜんぜん脳内妄想を再現できないことに苛立つし、自分でOK出せないものを他人に見せられない!ってなる。始めてすぐだからあたりまえなのに、なぜできぬ!?ってなる。

コレも、もうちょっとかわいくしたかった……

https://twitter.com/shiro_rwks/status/1233394001543221248?s=20

うまくいかないことだらけなんだけど、最初から自分に課している縛りというのがあって。
自分で「ヘタ」って言わない!ということ。
絵でも字でも関係ないんですけど、自分を卑下したら「負け」だといつからか思うようになりました。何にって、自分にかなあ。

まあまず対外的にメリットないですよね。
「ヘタですみません」「つまらないものですが見てください」とかいうの、ヘタな自覚があるならもっとちゃんと描けるようになってから出てこいって思うし、自分より巧い人が言ってたらなんだ嫌味かって思うでしょ?
どちらにしても、謙虚で向上心が強い人という印象は与えないですよね。最前線走ってるプロなら、ストイックなアスリートかなって思うけど。

あと自分自身にも呪いをかけるから。
どうせヘタだからって言い訳して全部未完成のラクガキで終わらせてたら、絶対に巧くならない。

これ、反省として出しますけど、手を入れたら失敗するなってびびってそのまま出しちゃったシノさん。なんだよ「っぽい人」って!

https://twitter.com/shiro_rwks/status/1203992579613741056?s=20

一般的に、お絵かき楽しい→もっと巧くなりたい→自分世界一ヘタかも→もっと巧くなりたい……のスパイラルで上達していくと思うんですが、言い訳してるうちは同じとこループしてるだけで上っていかないんじゃないかと。

それに技術的に成長してても、精神的に「下手くそな初心者なんで…」と思ってたら、どんなに神絵師扱いされても中高生レベルの自意識から成長しないですよね。自己肯定感が低いと他人に対する評価もめちゃくちゃになるから、必要以上に他人を持ち上げたり貶めたりしかねない。
そうなったら創作なんて楽しくないです。苦行です。

まあ、未熟さを言い訳したくなる気持ちは痛いほどわかりますけどね。
そこはぐっとこらえて「今はこれくらいできました!」って出すようにしてる。その後で客観的な反省点を探します。
実際、翌週には反省しかないですよ。どんなにうまく描けたと思っても、一か月経ったら残念な絵ですよ。描きはじめたばっかだもの。私、本職は字書きだもの。自分の絵が好きじゃないもの。人体の構造とか知らないもの~!!
でも反省会は感情的になったらダメなんで。「ああ~」って薄目で見ながら次のを描きます。

ま、自分のレベルがわかるようになるのも実力がついてからなんで、なかなか思いどおりにはなりませんけどね! 無茶言った!!


ひとつだけ自分の強みだなって思うのは、いい意味でも悪い意味でもあまり自他を比較しないこと。

あの人はあんなに上手いのに私はぜんぜんダメだ……みたいな落ち込み方はしないんですよね、自分でも不思議なことに。小説が未だに書けてるのはそういうとこもあると思う。
積み重ねてきたものが全く違うから、前提条件の異なるモノは比較できない、という認識はもちろん理屈としてあるんだけども、それ以前に「うちはうち、よそはよそ」と最初から思ってる。
うーん、単に子供のころからそういうメンタルだった気がする……比べちゃう人の気持ちが理解できてないだけかも、ごめんなさい……

前述の「ヘタの呪い」にも通じるけど、創作の一番の敵は「みんなはすごいのに自分はダメ」と思い込んでしまうメンタルなんじゃないかと思います。ちなみに二番目の敵は、「自分は(あいつより)すごいのに認められない」って気持ち(笑)。

逆に言えば、自分の基準でしか測れないから、どこまでも主観でしかないってことなんですよね。相対評価じゃなく絶対評価になっちゃう。なかなか自分にOKが出せない。
これも良し悪しで、年齢を重ねたぶんムダに目も肥えているので、若いころより「ここまではできていたい」っていう基準も上がってるのが厄介……完璧主義も創作の敵ですね。

デッサンとかやりなおしてガチで上達したいというよりは、それなりにそれっぽく見えればいいと思ってるんですけど、自分の中の「それなり」が高くなっちゃってるんだと思う……
あとまあ、比較はしないといっても周りの絵描きさんを全く気にしないというわけではないので、多少引きずられたり反発したりはしてると思う。ああアルカリに似ちゃったーかの~さんっぽくなっちゃったー方向性変えよーとかいうのはあります。そういうのは若かったら気にせずに済んだのかもとは思います。


目下、具体的な課題としては、絵柄が定まらないこと。
挫折したくらいなので元の絵柄にはネガティブな印象のほうが強くて、まあ当時だって流行りの絵ではなかったけども、20年くらい前のテイストは引きずってるわけで、まずそこをリセットしたい。
ちなみにお絵かきリスタート時MAXの「俺らしさ」はここ。

https://twitter.com/shiro_rwks/status/1191920934321418240?s=20

特技はレベルEトレスでした……(震え声)

ただ、今の私が描きたいものが実写作品で、しかも「似せたい」と思っている。これがなかなかに初心者向けでない設定でして……
マンガやゲームなら、その絵を真似することで自分の理想に近づいていくことができるんだろうけど、実写はまずトレスが難しい。ホントにガチでなぞりがきだけするわけにいかないので、目を大きくしたり顔のラインを削ったりしてキャラっぽくします。その時点で自分の絵柄に寄っちゃってるわけです。

実はこれはほぼトレス。手を入れすぎてそうは見えない(笑)。

https://twitter.com/shiro_rwks/status/1159382409499987968?s=20

これも。左はそのままトレス、右は顔のバランス変えてる。

https://twitter.com/shiro_rwks/status/1241716735557767169?s=20

影とか入れるとちょっとだけ近づくんだけどね。
これはわりとまんまのハセヒロ十兵衛。色が目的だったのでトレス自体は雑。

https://twitter.com/shiro_rwks/status/1227572569185718273?s=21

まあとにかく、目標とする絵柄がない状態なので、漫然と描いていても手応えを感じないというか、どこへ向かったらいいんだろう?と迷いながら進んでいる状態です。
結局、自分の中にある萌えを表出したいわけで、出力したものが萌えるビジュアルじゃなければ意味がないんですよね。ポーズや表情は想像できても、それがしっくりこない形で出てきたらテンション上がらないじゃないですか。

好きな絵柄の二次元作品の二次創作やってたら、自然と絵がそっちに固定されるのは経験上わかってることなんですけどね。今そういうのがなくて、どうしても過去の手癖に頼ってしまうのがよくない。
自分の読んでるマンガが、「確かなデッサン力に裏打ちされた抜け感」か「絵は気にならないくらいマンガが巧い」の二極なので、真似しづらいというのはある……

まあ最終目標はイラストじゃなくてマンガなんですけど……
やっぱり自分の一枚絵にそれほど情報量は詰め込めないし、そこを追究していってもあまり意味はないかなと。ていうよりそこは最初から自分に期待してない。
ただ、マンガに関してはまだ見せられるレベルまでいってないというか……もちろんイラストとは別のスキルが必要なんだけど、まず納得のいく絵が描けてないのでマンガ以前の問題というか……
あ、描きたいものと絵柄が一致してないというのもある……「ガモウひろしにデスノートは描けねえだろ!?」って言われてそれだ!って思った。デスノは小畑絵でないと説得力がないよね……

ミニ絵はなんとなくコントロールできるようになってきた気がするけど、コレで描きたいものはあるか?っていうと、ちがうような……

https://twitter.com/shiro_rwks/status/1224302372962197504?s=20

あとアルカリに指摘されて判明したのが、コントラストが常に強めなこと。
色の使い方が苦手なのは自覚があるんだけど……(笑)

これはいくらかバランスを気にしてるぶんマシなほう。最初、右の影を黄色じゃなく青で塗ってて「おま……」とアルカリにきつめの指導をされました。

線が強い、色が濃い、彩度が高い……
って言われるまで私は「そういうもの」だと思ってたから、かなりショックを受けたんですよね。しかし言われてみればそのとおりだー!!

アルカリは逆なんです。線が細い、色が淡い、彩度が低い。並べるのは若干の抵抗があるけどw、こういう感じ。

正誤の問題じゃなく認識や好みの差なので、向こうからすると強すぎるし、私からすると弱すぎる!もっと強く!ってなる。
実際、アルカリがイベントのディスプレイとかで、ぜんぜん目立たない色を使ってくるのなんでだろうなーってずっと思ってました。向こうは、私がもっと目立たせて!って言うの納得できてなかったらしい。
アルカリの絵は巧いんだけど、それ以前に人の目に留まらないんですよ。よく「ステキな絵ですよ」「地味じゃないですよ」って言われますが、会場の蛍光ピンクギラギラの同人イラストの中では完全に埋もれるんです。

初期はこれでよくケンカしてました……もっと早く気づきたかった~。
最近は私の絵によっていろいろ再認識したのもあって、ちょっと強めに描いてるみたいです。
アルカリの絵を目に留めるようになったみんな、もっと私に感謝していい(ポジティブ)。


コントラストについては、実は文章では前から認識があって、「ニッケルの文章は自然光じゃなく照明で明暗強くして撮ってる」と言われたことがある。
自分も、シーン全体を丁寧に描くというよりは、必要なところだけスポットライト当てて他は省略してるなーと思いながら書いてます。色も、モノトーンの画面に炎の赤だけが見える、みたいな使い方しかしてないと思う。詳細に描写してほしい人には情報が足りないと言われたこともあります。これも好みだけど。

文章ではいいほうに作用したりもする「癖」が、慣れてない絵だとダイレクトにしかも視覚的にわかってしまうから、より強く感じられるんだと思います。とくに今の流行りのカラーが繊細なグラデーション(もしくはパステル系)なので、どちらかというと悪目立ちする可能性が高くなる。

余談ながら、忍たま乱太郎のEDが「流行りの色」になってるのを見て、同じ絵でも塗りでこんなに時代感出るんだ……と感じ入りました。そういうとこの感度が今まで著しく低かったのよね、私。

それはさておき、絵と文章で表現方法は違っても、同じところから出力されると、同じ癖が出るんですね。
これ意外と知られてないことだと思うので、私の発見としておきますね(笑)。

色塗りに関しては本当に苦手で、正直デジタルお絵かきは便利だけど、フルカラーでなければイラストでない、みたいな時代の風潮は完全に逆風ですね……
たしかに丁寧なデジタル水彩とか効果的なフィルターとかステキだなって思うけど、自分が今から学んでできるかっていうと根気も元気もないなって……もっかい言うけどその期待は自分にしてない(堂々)。
コントラストが強いといっても、オシャレな使い方を学んできたわけじゃないので、単色でどうにかできる技量もないし、というかガチでやろうと思ったらフルカラーより難しいので、あまり手を出したくない領域です。

だって単色ってこういうことじゃないよねたぶん……
それにしても確かに顔自体が濃い……洋画ジャンル経由……(責任転嫁)

https://twitter.com/shiro_rwks/status/1252565926236438528?s=20

上達してるかって言われると、正直一進一退かなーと思わなくもないですが。3歩進んで2歩下がるくらいのペースかな。人生はワンツーパンチ。

ただ、絵を描くようになってから絵描きさんとちょっとだけ距離が近くなってきた気がしました。周りがベテランばっかりっていうのもあるけど、程よく適当に程よくちゃんとアドバイスくれるし。こっちもいちいち振り回されたりはしないし。

逆に、字書きと絵描きのあいだには思ってたよりも距離があったんだなあと再認識しました。
仲良くなれないとか理解し合えないとかいうことじゃないんだけど、今まで字書きサイドにいたから気づかなかったこともけっこうあるなあと。
絵描きは字書きの賛辞を100%鵜呑みにしてるわけじゃないんだなあ、とか。
うれしくないとかではなくて、「自分にはできないことができるからすごい」という賛辞と、「その表現の難しさを体感としてわかっているからすごい」っていうのでは、「すごい」の意味合いが変わってくるんですよね。逆の立場でも同じことだと思うけど。

全くの余談というか異次元の話ですが、ゼロワンの迅役の人がフッツーにプロ並みのマンガ描いてて、無邪気に「すごーい絵うまーい」って言ってる人と「なん…だと…?」って息を詰めた勢で、受け止めた実力(画力/筆力)がまるでちがう、という話がなんだか象徴的で。戦闘力ってスカウターじゃ測れない部分が本領じゃないですか。強さを知るには自分もある程度強くなきゃいけないって話。

それはさておき、字書きのあいだでは、単純に文章表現の出力の問題になる話でも、絵を描くという作業を通すと、先述の「作風のコントラスト」に気づけたりもするし。文章でもそれを意識してコントラスト強めにできたら、また新しいことができますよね。小説へのフィードバックにもなるなーと思いました。
ヘタなりにマンガも描いてみると、自分が小説でどうしてもできなかったことがこっちでは簡単にできるとか、逆にこれが苦手だから小説書いてるなーとか、そのへんの気づきもあります。

こうして列挙してみると、そんなこと知ってるよーって思われるかもしれないけど、理論よりも実感として体験できるのがすごくおもしろい。
そんで経験したことをこうやって分析できるのが楽しい。
若いころはできなかったなー。まあ理屈こねるのが楽しくて練習おろそかになったりはするけど……


いろいろ葛藤や障害はありますが、まあそれなりに楽しく描いてます。
最大の悩みは、絵を描いていると文章を書く時間がなくなるということです。それだけがんばって描いたイラストやマンガの大半はiPadに眠ったままだし、やっぱ絵ってコスパ悪い!!