コニー/デミア

2008_GSG-9,[R18]

GSG-9 対テロ特殊部隊:コンスタンティン・フォン・ブレンドープ/デミア・アズラン

※拘束注意


Lieder ohne Worte

それはおそらく罰なのだ。
彼が彼自身に課した、厳しい罰。
その執行人に選ばれた自分もまた、罰を受けているのかもしれない。彼の罪を裁ききれない罰を。

「コニー、今夜つき合え」
そんなことを真顔で言ってくるのは、初めてではなかった。時折、彼はこうして思い詰めた表情でやってくる。年甲斐もなく我慢がきかなくなった、と言ってしまえたら、微笑ましくもあるのだけれど……
「俺の都合は無視か」
喉の奥まで出かかった言葉を飲み込み、黙って笑みを浮かべうなずく。
友人というのも気恥ずかしいほどに馴れ合ってきた自分たちが、このときだけは普段の軽口も交わさずに、寡黙な共犯者となる。
「いつものホテルで」
首ごと引き寄せた耳にそう囁き、ちらりと目を合わせただけで別れた。

「…………っ」
細いプラスチックのバンドで後ろ手に拘束され、彼は枕に顔を埋める。うねる背中と腕を見下ろしながら、ゆっくりと腰を突き上げた。
「っあ、あ……」
痛みなど与えたくはないが、多かれ少なかれ肉体的苦痛は避けられないだろう。喘ぐ横顔は、苦しいのか快いのかも教えてくれない。歯がゆくて、つい彼の中心へと手を伸ばす。
「やめろ、ぅ……」
半端に硬直しているそれを、できるだけ機械的に愛撫する。
単なる欲望の処理なら、わざわざ抱かれることはない。抱かれてやってもいいぜ、おまえよりは慣れてるから、と冗談めかして誘ってみても、彼は頑なにそのポジションを変えることはなかった。
それは処理ではなく、罰だから。
なにより、無意識の抵抗を押さえ込むために、こうして自ら縛られることを望むのだ。これが罰でなくてなんなのだろう。
では自分は処刑人だ。処刑人は、罪人に情けをかけてはならないと相場が決まっているのだけれど。
「は、ぁあ……っ」
罪人は罪を悔い改めすすり泣く。せめて、告戒を受ける聖職者ならば、かける言葉もあったかもしれないのに。
朱に染まった耳朶に、戯れの睦言を囁くこともできない。名を呼ぶことすらためらわれてしまう。
「……ぅっ」
強く締めつけられて達する。殊更に声を上げるのも場にそぐわない気がして、快感の余韻ごと奥歯で噛み殺した。

コンドームを屑籠に投げ入れるのもそこそこに、彼の手枷を切った。その手首に口づけたい衝動を抑えて、細い痕を指先で軽く撫でるだけにとどめる。
汗ばんだ厚い背中が上下するのを眺めながら、ベッドサイドの煙草を取った。
「吸うか?」
「……ああ」
そうは答えるものの、起き上がるのも大儀そうにしているから、自分が吸っていたのを差し出してやった。
仰向けになって受け取った吸いさしをくわえ、彼はぼんやりと天井を眺めている。
「なにがあった」
箱からもう一本出して火をつけるあいだも、返事はない。
「……………」
「デミア」
じれて呼ぶと、彼は大きく煙を吐き出して、ようやく起き上がった。
「……マヤと別居するそうだ」
簡潔なセンテンスは、それでもすべての状況を説明していた。
「おまえのせいじゃない」
思わず口にした正論は、自嘲気味の笑みで吹き飛ばされる。
「友だちなら、それを喜んだりしないだろ?」
「…………」
ひたいに手を当てる彼を前に、言葉が見つからなかった。
妻子ある友人に友情以外の想いを抱いてしまった彼は、普段はその苦悩を腹の底に沈めて見ないふりをしている。だが、なにかのきっかけでそれが表へ噴き出しそうになったとき、彼はその感情の「処理」を頼みに来る。後腐れもなく、秘密を共有できるだけの信頼に足る相手だからと。
だがそれはあくまで表向き、この自分を納得させるための言い訳に過ぎない。

求められているのは、快楽ではなくて、罰。

「…………」
たばこを灰皿に押しつけたその手をつかむ。
「コニー?」
真っ黒な瞳が驚きを隠さずに見つめてくる。こちらも視線を外さずに、彼の手首をつかんでベッドに押しつけた。
「コニー!」
「俺はおまえにつき合った。次はおまえが俺につき合う番だ」
「でも……縛ってない」
困惑した顔で両手を動かしてみせる仕草が、子どものようだった。顔がゆるむのを感じながら、手を離す。
「殴りたきゃ殴れ。ひっくり返すならそれでもいい。とにかく、つき合えよ」
言葉どおりに拳が飛んでくるのを覚悟で、黒髪をかきあげ指を絡めながら唇を重ねる。彼は一瞬息を止めただけで、とくに抵抗はしなかった。
「コニー」
濡れた唇に指を押し当て、つづく言葉を封じる。
「……………」
彼はあきらめたように黙りこくり、目を閉じた。
それでいい。
なにもかも忘れて、この時間だけを楽しめと……意地っぱりな友人には囁いても仕方のないことだから。
肩に、胸に、口づけを散らす。気の利いた言葉のひとつもなく、震える身体を無言で抱きしめる。

罪に苦しむ彼を追いつめてはならないから。

なにより、この想いを悟られてはならないから。

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2008_GSG-9,[R18]

Posted by nickel