深罪の三重奏感想[2022.3.1]
※2022年追記:
なんか神代兄妹のスピンオフとか出てますが……もうセイバーという世界の全貌がどんどんわからなくなっていくので、もうやめたほうがいいんじゃないかと思ってます。
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セイバーらしさという葛藤。
うーん……
飛羽真のエピソードだけなら90点なんだけど、倫太郎と賢人の話は必要だった?そもそもセイバーってそういう方向性だった??みたいな諸々減点でトータル30点くらい……
以下オチまでネタバレしてますが、ミステリ仕立てのようなので、未見の方は注意。
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本編終了から8年後。
観る前は中途半端な設定だな……と思ってたけど、少年が成長するまでの年月と思えば、10年では長すぎるし3年5年では短すぎる。この話をやるには確かに8年くらいは必要だった。
レギュラーみんながそれぞれ「大人っぽさ」を模索していてよかった笑
最高だなと思ったのはセクシーに髪を下ろしてる大秦寺さんとめちゃくちゃ柔和になったお兄さま、ショートヘアの玲花ですね!
蓮はすごく男らしくなってたからもっと見せてほしかった……
カミホリ監督はイケメンを超イケメンに撮るので大好きです。
「暇だな、なにかおもしろいことをしろ」と平然と言うユーリに大秦寺さんが「無茶振りだな」って即返すシーンよかった……きっとタッセルの家でユーリは同じこと言ってただろうしタッセルは「えっ!?」って言いながらもおもしろいことしようとがんばってたのだと思います。解釈一致ユーリ。
物語としては、飛羽真と倫太郎と賢人の物語。
3人それぞれのエピソードで、3人は基本的には交わらない。他の剣士は出番も一瞬。
関係者全員が8年間「記憶を改竄されつづけてきた」せいということになっている。だいたいの違和感は「でもまあ記憶消されてたんだもんな」で納得できるようになってます。
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飛羽真が8年間「父になろうとしてきた」話は、観てるあいだはモヤモヤしてたんだけど、最後まで説明されたら納得はできた。父を失った彼が飛羽真にかける言葉は「お父さん」でなければならなかった。
血の繋がっていない家族という設定は好きなので、飛羽真がとても慎重に彼を育てている姿がよかった。あんなになんでもできる明るさとポジティブの塊みたいだった飛羽真が、不器用におそるおそる一人の少年と向き合いつづける姿がとてもいじらしかった。服装もすっかり地味になっちゃって……(?)
間宮も、えっまた幼馴染……関係性の引き出し少なすぎない……?って思ったけど、少年時代の間宮を出す必要があったからというのは理解した。
剣士が誰もいないところで、間宮と芽依ちゃんだけがずっと仲良くしてる違和感は、狙ったんだと思う。
ただ、間宮は近すぎたね……
本編の誰よりも飛羽真と親しい感じがあったね……
確かに、8年間も飛羽真とつき合いがある人間は本編に存在しなかったので、あたりまえではあるんだけど。
演者の説得力も相まって、だれよりも飛羽真と近い人間になってしまった。記憶改竄の件を抜いても、カプ以前にそれでいいのかしらって気持ちにちょっとなりました。
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問題は倫太郎よ。
脚本家が「倫太郎の父親の話をやりたかった」そうで、それがあのエピソードかよ!って正直思いました。
倫太郎は家族がいなかったからこそ、師匠が最も近しい人で、SOLが家族で、そして最後に芽依ちゃんと家族になる、っていう彼の物語ができあがったわけでしょ。私はそう理解してたんだけど、違った?
その記憶を抜かれているにしても、いきなり知らないおじさんが何の証拠もなく「おまえの父親だ」って出てくるの、完全にダメなパターンですよ。しかも倫太郎の知らない「罪」を理由に襲ってくるわけですよ。そこで倫太郎が心を動かされる言われは全くない。
倫太郎パートはなんにも響かなかったし、わからなかった。
彼の大切な要素であったはずの「家族」を、外伝とはいえこんな風に描いてしまう後日談、やだなあ。
橋本さとしの迫力をもってしても、何言ってんだこのおっさん感はどうしても拭えなかった。せっかくの橋本さとし変身がもったいない……存在感だけしか説得力ないんだもの。
あと製作陣、いいかげん倫芽派と飛芽派の決着つけたほうがいい笑
倫太郎と芽依ちゃん、最終回とビヨジェネと今回で関係性バラバラってさすがに対立しすぎじゃないか。二次創作的にはさておいて、キャラ造形としてそこは時系列含め統一したほうがいいと思いました。
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賢人は……正直なところ、未だに判断できてない。
あのエピソードがアリなのかナシなのか。
最終回で飛羽真と一緒に生きていきますみたいな顔をしてた賢人が、普通に恋人作って結婚手前までいってる……?という混乱がまずあって。
まあそれは記憶を改竄されたからなんだけど。
記憶はどうでも、気軽に女性に声をかけるタイプなんだね?
その割には8年もつき合ってる感が薄いね?
あと翻訳なんて高度な専門技術持ってたんだね?
などなどいろいろ気になっちゃって、自分だけの印象なのか批評なのかよくわからなくなっちゃって、ずっと保留です。
本編では、本読んでる描写でさえ倫太郎より少なかったからさ……剣技以外になんかできる印象なくてさ……黒崎一護くらい文武両道な描写あれば納得できるんだけどさ……(BLEACH後日譚の一護は翻訳家)
個人的には、最終的にはどうであれ「恋人を殺された女が復讐のために仇の男と寝る」って彼女目線だとすごくつらくて、そういう意味でも加害者になってしまった賢人を、どう受け止めていいのかわからないというのはあります。
なんか賢人目線になれなかったんだ。
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で、そもそもの主題が「剣士たちの戦いの犠牲になった民間人への贖罪」なんだけども。
本当に唐突すぎて最後まで飲み込めなかった……今までそんな話したことあった?
これがビルドやゼロワンの世界観ならわかる。戦闘行為自体が無関係の人々に害を及ぼすことがちゃんと描写されてた。
でもセイバーって「メギドの行為の被害者」だけで、ましてや「一般人の生死」には触れてこなかったじゃない? ニチアサのレイティングの問題じゃなく、セイバーって生死についてそんなにしっかり向き合ってないじゃない? 剣士もメギドも。
それはそれでそういう世界観としていいと思うのよ。こちらもルールとして受け入れるので。
なのにいきなり「世界を守る戦いの裏で巻き込まれて死んだ人がたくさんいる」という話をされてもピンとこない。
どうも「セイバーっぽくない」方向性をめざしたという話なんだけど、本編の世界観を無視してまでやることかな……って思ってしまいました。
これがセイバーかと言われると、その大前提がセイバーじゃない気がする。
よくある「本編やりきったのでムリヤリ外伝でっち上げました」でもないから余計になんで?ってなりました。
セイバーでできなかったことがあるなら、別の作品でやればいいのに……っていうのはプロデューサーに対してずっと思ってます。「できなかった」ことは今は表に出さず、次の仕事で出してほしい。
セイバー的に、「唯一の単独映画」で、おそらく「最後のチャンス」だったという事情はわかる。
でもむりやり3人の話を詰め込んだ感じで、事情はわかるけど飛羽真の話だけでよかった。少年や間宮に向き合う飛羽真をもっと丁寧に観たかった。
ミステリとしては「誰が犯人か?」というシチュエーションに必要だったんだろうけど、微妙な気持ちになる倫太郎や賢人のエピソードはいらなかった。
抱き合わせの新商品も含め、制作側の「思い出作り」みたいになってて、事情はわかるけど!!と何度も思いました。そういう「裏事情」は考えずに楽しみたかった。
キャパシティに対して制約や要求が多すぎたんだろうね……50周年にかぶったことは恨んでいいと思うよ。
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エンディングはオシャレでクールで、主人公がファッションリーダーでキャスト写真集出しちゃうセイバーらしいなあ、と思いました。
EDがいちばんセイバーっぽかったかな。