Go to the West
GWの最遊記歌劇伝、行っちゃいました。
特撮二大悪役俳優、みつぅとみつるが出るっていうから。
結論から申しますと、たいへんおもしろかったです。
ちなみに原作は学生のころに友達から借りて途中までは読んでる程度です。
のわりに、感想長いので注意(笑)。
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最初にどうでもいい話をしますと、最遊記リアルタイム世代です。高校~大学くらい。
個人的にはなんか絵柄とか作風とかが肌に合わなくて、読んではいたけどハマってはいませんでした。野猿も好きじゃなかったし……(関係ない)
リアタイだと雑誌のテイストもあって女性向け・オタク向けのマンガというイメージが強いのですが、少し下の世代は子供のころにアニメを見て育ってるので、男の子的にはドラゴンボールとかと同じ感覚でかっこいいのだそうで、なんか不思議。
今思うと、同じオタクなのにかっこつけやがってみたいな反発とか、ああいうかっこつけ方ができなかった僻みとか、とにかく大ブームだったんで背中を向けてみる天邪鬼さとか、そういうのもなくはなかったと思うんですが。
当時のブームとかもひっくるめて振り返ってみると、私もかっこつけたかったけどベクトルがずれてたんだよね、っていう一言に尽きるのかなと思います。
そんな個人的な昔話を枕にしまして。
大人になった今、峰倉センセも熱狂的なフォロワーもアンチだった自分も、ちょっと距離を置いて見られるようになりました。そういう視線を含みつつ。
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2008年の初演は、DVD貸してもらって観ました。
ビジュアルは完璧。ていうか最遊記ってコスプレの定番すぎて、実写化以前に三次元の状態でかなり見慣れてたので、他の実写化に比べてびっくりするほど違和感はなく、めっちゃクオリティ高いコスプレがきた!っていう印象でした。身長とか体型とか、ガチハマりでしたから。
内容は……ミュージカルと言いつつ、三蔵一行が……あと芝居も……
まあブームに乗って舞台化してみたけどねっていう感じでね、コスプレ撮影会の延長線上と思えばそういう楽しみ方をしてるファンはそれなりに満足なんじゃないのかな、と思いました。
そんで今回、2014年。
三蔵と悟空はそのままで、あと健一さんも続投で、他はゲストだから関係なしか。
八戒と悟浄がキャスト変更です。ビジュアル的には前の2人よりちょっと離れたかもしれません。
悟浄のにやけた感じは丸山くんのほうが雰囲気出てたし、八戒は載寧くんのひょろっとした骨格のほうが正解!って感じ。あとこの2人タレ目って時点で峰倉顔だからね(笑)。
でも、八戒の小賢しくていやらしくてわざとらしくてシビアで現役保父さんっぽいキャラを完全再現してくれたのは、間違いなく今度の藤原さんなんだよね。鮎川さんも顔がマジメそうだなーって思ったけど、悟浄の考えなしでこっそり人情派でトラウマに縛られてて大人ぶってるけど振り回されてる感じが芝居から出まくっててね。
ビジュアルは敵わないといいつつ、引きで見ると止め絵とかしっかり峰倉なんです。どっちもツリ目なのにね。ガリガリ体型じゃないのにね。これは演出かな。
「たまたま絵的にハマったコスプレイヤー」でしかなかった前の2人に対して、演技できちんとキャラクターを再現した今回の2人ってすごいな、っていうお話でした。
悟空は最初から悟空だったからまあいいとして。最初からブレてなかったから彼に関してはとくに言うことない。というか私が悟空に興味なさすぎてなんにも言えない……あ、他の三人はね、明確に好きじゃないの(笑)。悟空はキライですらないの。
でも彼のアクションはホントに悟空っぽくてよいと思います。ジープいじってるとこかわいかった。
三蔵は、初演を見たときは単に役作りとかでムリしてる印象だったんだけど、今は「三蔵として」迷ったりムリしたりしてる感じで、ほんとに実写三蔵になってた。あと体型が完全に三蔵だった! 肩のあたりが完全に峰倉絵! あと山登ってる途中とか、一人でぜいぜい言ってるのがすっごい三蔵っぽいって思った(笑)。
今まで、すげーなひろき!って思ったのは、花咲けと弱ペダなんだけど、改めて最遊記も加えていいです(何様)。ペダルのときはあれだけ細くても弱そうとは思わないもんね。でも三蔵はちゃんと弱そうだもんね。演じ分けてるってことだね。
大きくなったな……と親戚のおばちゃんみたいな気持ちで見ておりました。
とにかく「三蔵一行が三次元にいる」ていう感じ。
三蔵と悟浄がぎゃあぎゃあ喚いてて、悟空がぴょんこぴょんこしながら腹へった~って騒いでて、八戒は逆らったら本気で殺されそうだし、ああこういう感じなんですね、ってなった。
けっこう髪で顔が隠れてたりこっち向いてなかったりしたんだけど、役者の顔が見えないほうがリアル感出ますね。芝居の力です。どんなに完成度高くても、レイヤーには作れない世界です。
萌えとかではなくて単純にすげー三次元だーって見てたんですが、その向こうに「もしかしたら峰倉センセがやりたかったこと」が透けて見えたような気がしました。いや峰倉センセがこの歌劇伝を気に入ってるかどうかも知らないけど。
カミサマの攻撃受けて悲鳴上げる悟空とか、ずーっと苦しんで呻いてる三蔵とか、ホントに痛そうで苦しそうで、なんでかそういう部分がすっごくあのマンガっぽかった。絵もキャラも記号だらけだからどうしても軽く見えちゃうけど、表現しようとしてるのはこういう生々しさだったんだろうなって思いました(勝手に)。
悟浄が三蔵を抱え上げてベッドに放り投げるとこで、なんかガタッていうかざわっていうか「あざーっす!」みたいな、よくわかりませんが「これだよ!」って気分になりました。
いや、悟浄×三蔵とか言いたいわけじゃなくて……(笑)
死にそうな呻き声上げながらみっともなく床をのたうちまわってる三蔵を、悟浄が心からうんざりって感じに腕取って担ぎ上げて、自分も細っこいくせに三蔵を軽そうにどっせーいって投げるのが、峰倉センセが必死に描こうとしていた「男の関係」のリアルな提示って気がして、ああこれなら私も食えるわ、好物だわ、ってもう何言ってるかわかんない。
ベッドの上で喧嘩してる三蔵と悟浄のあいだに八戒が割って入って、3人で取っ組み合ってるのもよかったです。コスプレ衣装じゃなくて普段着のシャツってのも一因かもしれない。こっちの視線を意識した変なサービスショットでもなくて、とにかく「暴れる男を押さえつける男の図」をそのまま見せられてるっていうのが大事なんだろうね。
ねえ峰倉センセ、こういうのでしょ? 友達でも恋人でもない男同士が、ガチでぶつかってるのが見たかったんだよね? ね??(勝手に)
なんかさ、ムリしてかっこつけてくれなくてもいいんだよ。殊更にホモフォビアを強調してくれなくてもいいんだよ。そういうわざとらしさが苦手だったんだよ私は。
って思ってたんですけど、今あらためて見ると、これだけ余計なものを削ぎ落として、あるいはいろんなものをカムフラージュに置いて、初めて「女性作家が男同士を描く」ことが許される時代や状況だったんだなあとしみじみ思います。一時代を築いた人だよね(しみじみ)。
変な化学反応起きてたのが、ケンイチさん。ニィ健一さん。
彼の魅力がミジンコもわからないわたくしですが、カラハシがやるならば仕方ない!(笑)
健一なのに堂々とロン毛です。でもなんだかすっごく峰倉っぽいです。元の健一も髪が長かったような錯覚にさえ陥ります。カラハシが健一に似てるのか健一がカラハシに取り込まれたのか、俺があいつであいつが俺で!?(落ちつけ)
ただ、途中から「あれ、これ健一じゃなくてカラハシだわ」ってなりまして……
そもそも健一って何かっていうと、「大人のエロスと毒」の象徴なわけですよ。大人だから遊んでいいし、悪いこととエロいことをするのに理由をつけない。そのエロスと毒をだれにでもわかりやすく、ウサギちゃんだのコンドームだの着崩した白衣だのを記号としてくっつけてるわけで。
(悟浄の女好きはトラウマの裏返しのような気がするから、大人のエロス担当ではないと思う)
ぼくらのカラハシは、健一になってもやりすぎなくらい「遊んで」「悪いことして」ました。でも「エロいこと」だけはしてなかったんですよ。彼の毒はエロスで完成するのに。
女性向けという気遣いは当然あると思います。悟浄のエロネタも控えめだしね。マンガではよくても、リアルでやると意外に生っぽくなっちゃうもんですからね。気遣いとしては正しい。
意図的かどうかはわかりませんが、カラハシ健一は「記号化された大人のエロス」を所持してませんでした。含みはあるけど「ガキっぽい(=ガキのふりをした)迷惑なおっさん」で通してました。「リアルな健一を追求した結果、健一でなくなってしまったリアルなおっさん」でした。
ケンイチさんがいかに記号だけで構成されてたかってことなんだと思うんですけどね。生っぽさという点で、これもまた峰倉センセが求めたものへのアンサーなのかも。
昨今のなんでもかんでも実写化しちゃう風潮は確かにアレなんだけど、最遊記ってもしかしたら生身の男性が演じることによって完成する世界なのかもしれない。そう思えるくらい演技も演出も原作の空気を忠実に「再現」しようとしているところが、好感度の高い作品でした。
はい、ここまで最遊記考察込みの感想。めんどくさい。
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はい、ここから純粋に舞台と役者の感想。萌えるぜ!
さて、8割方みつぅとみつる目当てでチケ取ったわけですが、まさかその二人がいっしょにコントかましてくるとは思わず、もっすごいテンション上がってしまいました……(笑)
三蔵一行の早替えの場つなぎでやってたらしいけど、みんなさっさと着替えちゃって横で二人の掛け合いをずっと見てたらしいよ(カーテンコールで暴露)。「三十路の自由さはだれも止められない」ってみつぅが言ってた。
ちなみに、いきなり振られてキョドるのがみつる。ボケ倒して周りをキョドらせるのがみつぅ。です。東北人vs関西人じゃ分が悪すぎる。
ペダルもだったけど、本役じゃないときのみつぅって飛び道具っていうか暗器だよね……
金閣&銀閣。
金閣の子はまたあとで触れますけど、なにもかもお上手でした。負けるな三蔵一行。
銀閣は我らが人外担当みつぅです。うん、もうホント人間に見えないからね。一人だけ「操演」って書かれそうだからね。んで、峰倉絵のモンスターっぽい。しゅっとしててガリガリっとした、あのマンガに出てくるモンスターでした。
うっかりブロマイド買っちゃったんだけど、ペダルの御堂筋くんの隣に並べるとすごいです。なにかもう、特撮感ハンパないです。どっちにしろ人間ではないです。いっそパリコレみたいです。
カミサマは平野くん。
見に行こうと決めた要因の一つに彼の名前もあったのですが、期待以上でした。
歌がとにかく伸びる伸びる。圧巻の一言。というか、ちゃんと歌になってたの彼だけじゃないか!?歌劇伝って彼のパートだけじゃないか!?っていうくらい、「ミュージカル」してました。鍋のときだって巧かったのに、表現の幅がさらに広がってる感じっていうの?
芝居も隙なし。いや前から彼の芝居は気になってたけど、ちょっと見ないうちに凄みを増したなあと思いました。もう30なのに(笑)、無邪気な演技とかすっごい似合うの悔しい……あの童顔で意外に声が低いから、こういう役すっごいハマるのね。
健一との場面だって、他のメンツだとカラハシパワーに食われちゃうかもしれないのに、ちゃんと向こう張ってましたから。
もっといろんなところでお会いしたい役者です。とりあえず「バルトる映画祭」の彼の回は行っとこうと思いました。
あと、酒場のマスターね。ハゲの。
アンサンブルなのに、イケメン芝居にいきなり自分のペースでアドリブぶっこんでくる気概に、うっかり惚れそうになりました。しかもおもしろいんだもんよ。すぐ横にイケメンがいるのに、一人で舞台を支配しちゃうんだもんよ。やっぱこういう人って大事!!(笑)
で、これ「歌劇伝」なんですよ。ミュージカルなんですよ。
いや……ムリしなくても、ふつーのお芝居なら十分完成度高かったよ? アクションもガンガンで、プロジェクションも効果的だった。役者陣の演技は申し分なかった。
なのになんで歌うのか……orz
とにかく平野、いやカミサマ独壇場です。悪役ゲストなのに2回もソロを歌い上げました。だって巧いもん。別格だもん。平野の声が好きです(告白)。
次は金閣の子ね。まあイケメンのお兄さんたちは何やってもファンがいるから許されるでしょうが、子役は学芸会レベル連れてくるわけにいかないからね。子役で台なしにするわけにはいかないからね。事情はわかりますが、がんばれよ三蔵一行!と思わずにはいられませんでした。
三蔵一行の中では八戒が安定していました。あんまりソロ長くなかったけど。もう藤原さんに全部お任せしたらよかったんじゃないのかな!
他のメンバーも、へったくそ~!ってわけじゃないんですが、ここでムリして歌うことないんじゃないですかね? べつに聴けなくはないんですけどね? 芝居で息も切れてるだろうから、吹き替えでもいいですよ? って温かい気持ちにならざるをえないというか……あまり得意ではなさそうな悟浄と三蔵がメインだったのがつらかったです。
今さらだけど、なんで猫も杓子もミュージカルなんだろうね……テニス以降、ミュージカルって言いたいだけなんじゃないかって気がするよね。
最遊記の前に「僕等の図書室」行ってきまして、朗読劇としては言いたいこといろいろあったんだけど(笑)、彼らはあたりまえに歌が巧かったんだな、イケメン6人いて全員がどんな歌でも歌えるってすごくレアなことだったんだな、って初めて気づきました。
るひまはせっかく逸材集められるんだから彼らを活かせる題材を渡そうよ
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まあなんのかんのと余計なことまで考えてしまう作品ではありましたが、初演のときはこういうことをいっさい思わず、「よくできたコスプレ動画集」くらいにしか受け止められなかったので、今回はお芝居として、最遊記として、完成度の高い舞台だったのではないかと思います。
続編があったら……悪役キャストが出てから考える(笑)。