銀英伝感想。

先日本屋で、クローンなんとかいう小説の表紙を見て「これ(天正遣欧少年使節の)マルチノじゃね?」と言ったニッケルは、そのすぐ横にいるとーりくんを完全に見落としていました。ファン失格なんてもんじゃありません。
というわけで銀英伝舞台のネタバレ感想です。公演も終わったしってことで。
原作はうろ覚えのまま行きました。ヘタにイメージ再構成していくのもなんだな、と。
でも、原作ファンの友人に「ビッテンフェルトのキャラ変わっててがっかり」と言われて、あのビッテンがらしくてかわいい!と思ってた自分は、ビッテンファンじゃなかったのかもとうろたえました。むしろいちばん気にしてるくらいだったんだけどな……
なんかもう、なにをもってファンとするのかわかりませんが、とりあえず私はとーりファンと原作ファンにはボコられても仕方ないなと覚悟は決めておきます(それって客の大半じゃねーか)。
そんな曖昧なやつの感想でよければどうぞ。


えー、結論だけ先に言っちゃうと。
好きな俳優が出ていなかったら見に行かなかったと思うな。逆にいえば、もう一人二人くらい好きキャストがいたら自分の中でかなりの高得点だったかも。
そういうスタンスで見てきましたのでマジメな銀英伝ファンやマジメなお芝居ファンやとにかく真っ当な感想はよそを当たってくださいね(笑)。
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見終わってトータルの感想。
歌えばいいのに。
ここは歌うとこだよね?歌で盛り上げていくんだよね?ていうシーンがいくつかあって、軽く肩すかしをくらった気分でした。
せっかく本業の人も多いんだし。アンネローゼさまとか歌い上げてほしかったなあ。
演出も予想以上に観念的だったので余計に。あのダンスで描写する演出にはミュージカルの様式美がハマったと思うんだけど。
そのへんの振り切れ方が足りなかったかなとは思いました。あくまで個人的な感想ですが。
劇場の仕掛けはすごかったけど、ちょっと広すぎたかな。とーりくん一人だと持てあまし気味な絵面でした。ダンスも、上から見るとちょっとスカスカで劇場の広さを持てあましてる感じ。でもS席からはそう見えなかったらしいので、視点の問題なんですね。舞台装置のジャマにならない程度に画面を狭めて(壁を作るとか幕を垂らすとか)、もうちょっと締めてほしかったなと思いました。
とまあ、もの足りない部分はいくつかあったものの。
まず、なんでコレを見に行こうと思ったかって、最初の情報が「とーりくんがラインハルト!」ていうインパクトだったからなんですよね。
どんなにミーハーと言われようがそこは事実なので、「とーりくんのラインハルトを見に行った」ことは否定しません。そしてその点においてはわりと満足しているのですよね。彼がラインハルトでよかったと思う。
彼にラインハルト役が来たのは、十中八九シンケンの演技を評価されたからだと思うんだけど。仮に「殿と同じじゃね?」とゆー感想があったとして、むしろそれでいいんですよ。ラインハルトの演技サンプルとして志葉丈瑠は申し分ないでしょう。大義のために気を張ってえらそうにしてる一方で、精神的に脆いところを隠しきれない部分もある、でも自分の心を偽って人の上に立たなきゃならない、ていうキャラクターを今回もしっかり演じていました。
なので、とーり贔屓(もうファンとは言わない)としてはべつに文句ないです。私の中でラインハルトさまは低音美声の長身キャラになりました。威厳があっていいじゃない。
回想シーンでまだ「ぼく」だった好青年っぷりを見せてくれたりとか、キルヒアイスとアンネローゼが抱き合ってるのを見て動揺しまくるのとか、その直後にヒルデが来てキルヒアイスへの当てつけに誘ってみたりとか、かわいい場面も多かったし。
民衆を見殺しにして苦悩したり、キルヒアイスを失って悲しみに暮れたり、もちろんマントを翻して命令する堂々とした元帥っぷりもかっこよくて、いろんな彼を堪能できました。ごちそうさまでした。
ただ、演出のせいだとは思うしラインハルトに限ったことじゃないんだけど、戦闘シーンとか緊迫した場面でのセリフのペースが速すぎた気がする。
アフタートークで、ロイエンタールの子が噛みまくった話をしてたのね。たしかになに言ってるかわからない場面がわりとあって、音響や効果音のせいかと思ってたんだけど、早口すぎるからなんですよ。もともとカタカナや難解な熟語が多いセリフを、早口言葉の勢いでしゃべるから、聞き取れないし言ってるほうも噛むよね(笑)。声の低い子はとくにきつかったと思う。
ベテラン勢はどんな場面でも自分のペースでしゃべってて、発声もあるんだろうけどちゃんと聞き取れました。若い子たちも早口でなければ噛むことも聞こえないこともなかったので、役者のせいではないと思う……んだけどな……
演出&脚本の人は、昔なんかの御縁で監督作を見たことがあるんですが「この人とは仲良くなれないなあ」っていう印象でした。今回もそういう部分はちらほらあったけど、覚悟はしてたからそんなにアレでもなかった。と思いたい。
で、第二のお目当てといっても過言ではない、アンスバッハさん。
おいしかったなあ……
だって今回の劇中で唯一、ラインハルトと直接対決した男ですよ? キルヒアイス殺した男ですよ? 提督の皆さん総出で押さえつけられた男ですよ? 年配の皆さんにしか許されないセリフ「金髪の孺子」も、クライマックスで叫んだしね。出番は今回きりだけど、次回出られるであろうシュナイダーよりもオイシイじゃないか。ありがとう、ありがとう堀江さん!(そこ?)
双璧を「ラインハルトの部下AとB」って言うとこからイヤなやつキャラを印象づけ、主人から贈られた指輪をちらつかせながら邪魔者を淡々と排除し、その主人をまたしても淡々と裏切り、最終的には主人愛を叫びながら退場ですよ。カーテンコールで例の指輪を光らせてお辞儀した瞬間はちょっと惚れそうでした(笑)。
しかし取り押さえられるシーンで、提督の皆さんが噛みまくって連鎖を起こしてたので、彼の熱演がちょっと宙に浮いた感じがあって……(笑) まあ、狂気は存分に伝わってきました。
セリフのペースはベテラン勢と同じ、適正速度でした。動きもスマートで、帝国軍人って感じ(イメージです)。もうなんかイロイロありがとう。
パンフのメイキング的ページで、真っ先にタカヤマさんのアップを見つけた自分にちょっと「いいかげんにしろよ」って思いましたが。紙面に散りばめられてるとーりくんは二の次か。
って、主役のスターと端役を同じレベルで語ってるよね私……すみません、どっちもそれぞれ別ベクトルで好きなんで。
その他もなかなかステキな役者さんばかりで楽しませていただきました。
キルヒアイス。
なかなかさわやかな声の、まさに「草原を吹き抜ける風のような」好青年でした。そういえばあの比喩はさすがに言わなかったなラインハルトさま。ホントに言ったら笑っちゃうかも、と身がまえていたのでよかった(笑)。
遠かったからか、身長はあんまり気になりませんでした。いや、明らかにラインハルトより低いんだけど。アフタートークで一人だけ椅子の脚にちょこんと足乗っけてたけど。
というか、実は私キルヒアイスってあんまり興味なかったのね(笑)。さっさと退場するし、清廉潔白すぎてキャラ薄い感じもあったし。アニメの声もさらっとしすぎてたし。でも今回、きちんと(?)生身の(?)キルヒアイスを提示してもらって、なんか納得した感じ。だから私のキルヒアイスはちっちゃくていいです。
観劇後に入ったマックで、隣に座ったお姉さん方が(時間的に客はほぼご同志でした)「身長以外は完璧だったね」と言ってました。認められたってことでいいんだろうか。
双璧。
身長は同じくらいかな。
常にいっしょに出てくるんだけど、主にロイエンタールの動きに釘付けでした。ダンスは言わずもがなとして(ダンサーなんですねこの人)、くるっと向きを変えて歩いていくだけでもなんか優雅。いろんな場面で「お美しい……」って見惚れまくりでした。でもヘテロクロミアにムリして言及しなくてもよかったんじゃないかな。ご婦人のものすごい説明ゼリフに、笑いそうになった。
ミッターマイヤーは、元気な感じがすごくらしかった。ダンスも元気。周りがバレエ系だったからちょっと動きがちがうなって感じはしたけど。声もよく通る感じではきはきしてて聞きやすかったし。
それぞれハマり役だったと思います。ほとんど同じ身長もやっぱり気になりませんでした。ちゃんと雰囲気出てたもの。
オーベルシュタイン。
まさかの低音、しかも超美声。
あれ、そんな声だったっけ?みたいな。アフタートークで生歌を披露してくださるまで、アクセスと少しも一致しませんでした。この役のためにがんばって普段から声低くしてたんだって。いや、地声が低いのかと思うくらい自然でしたけど。
キャラ的に大きな動きはないんだけど、やっぱりお辞儀ひとつとってもきれい。スタイルいいし。オーベルシュタインってかっこいいキャラではないはずなのに、ロイエンタールと張れるくらいのかっこいい人でした。
憎まれ役として完璧でしたが、ただ全く同じ義眼話を二度もすることはなかったと思う。ちょっとくどかった。脚本もうちょっと考えてほしかった。頭いいはずのオーベルシュタインがちょっと残念に見えちゃった。
余談ながらアフタートークで登場したとき最も拍手が大きかったことに驚きました。いや、たしかに生歌はちょっと感動したけども。若い子のほうが人気あると思い込んでいたので。もしかしたら、ファンじゃなくても役者たかみーに魅せられた人が多かったってことなのかもしれないですけどね。
ビッテンフェルト。
唯一のお笑い担当。
彼は登場シーン全てが見せ場でした。
しかし他がみんなシリアスなので、なにをやってもすべりがちなのが精神的に過酷だったと思います(笑)。ワーレンとか他の提督が個別認識も難しかった中で、一人で目立ってたのでオイシイことはオイシイんですけど。ま、かわいくてよかったv 次はぜひミュラーとコンビで!
フリードリヒ&アンネローゼ。
いや……さすがベテラン。存在感がちがいましたね。
二人とも、そこにいるだけで絵になるんですよね。しゃべるだけで場の空気を作ってくれるし、この二人のシーンはとくに、なんでミュージカルじゃないんだろ……とずっと思ってました。倒れた皇帝に泣きすがるアンネローゼの図が、非常に美しかったです。あのシーンは青山劇場のスケールに負けてなかった。
ラインハルト父。
あら、なんかベテランっぽい方が……と思ったら、本家ラインハルトさまでしたか。気づかないくらいちゃんとお父さんやってました。ていうかやっぱり役者としてすごいんだなあ。ファンにとっても若いキャストにとっても気の利いたサービスだったと思います。
この日のアフタートークは、ロイエンタール、オーベルシュタイン、キルヒアイス、ミッターマイヤー(並び順)でした。
ラインハルトさまがいない唯一の回だというのはこの際忘れて(根に持ってる)、裏話などを楽しんできましたよ。場慣れしたオーベルシュタインとミッターマイヤーがネタを振っていく感じで。キルヒアイスが足そろえてちょこんと座ってるのがかわいかったv
最後にお客様にもご起立いただき、グラスを掲げて「プロージット!」と叫び飲み干して割る、という劇中のシーンを再現したのですが、ぱりーんって効果音入るのが意外に気持ちよかったです(笑)。
ちなみに後日、俳優は全く知らない(フリードリヒ4世さえも!)カタギの原作ファンに感想を聞いてみたのですが。
◎キルヒアイスが思いのほかよかった
◎演技で「おっ」と思ったのはミッターマイヤー
◎ラインハルトは無難に合格点
◎ビッテンフェルトは演出のせいで残念だった
◎役者がちょっと……と思ったのはメルカッツ
◎あとオフレッサーに迫力が足りなかった
◎上下する舞台は素直にテンション上がったけど
◎オレも演出の人とは仲良くなれない気がする
……と、評価は半々な感じ。
まあ、二人とも見終わったあとは微妙なテンションだったけどこうして話してるとそれなりに楽しい舞台だった気がするね!という感じで落ちつきました。ネタとして盛り上がるにはちょうどいい素材です。
最終的には許容範囲と個人的嗜好の問題ですよね。
DVDも出るらしいけど、熱烈には勧めません。でもまあS席では表情も見えてけっこう入り込めたって聞いたので(2階では引きの画面が気になってそこまでじゃなかった)、DVDで役者のアップを見るのもいいかなとは思います。高いんだけどさ……
次は同盟編……の前に、外伝として双璧の話をやるみたいですね。
劇場も小さくなって、まあ「舞台」って感じになるんじゃないかなと。
同盟編は、まず配役を見てからですね-。お芝居的にも同盟のほうが遊びを入れられて楽しめるんじゃないかな、と思います。
ただ決してお安くはないので、メインにとーりくん=ラインハルトくらいの衝撃がないと見に行く元気は出ないかも……
なんだかんだで期待しています、ヤン・ウェンリー。の配役。

演劇・舞台

Posted by nickel