夏映画!(ブンブン&ガッチャ映画感想)
わんだふるぷりきゅあ、テレビのほうはあんまり観ていないのですが、映画予告は良作の香りがしました。プリキュア映画の、明るく楽しく始まった冒険の裏に実は……というパターンは強い場合が多い。
そんなわけで初日初回に行ってまいりました、映画『仮面ライダーガッチャード ザ・フューチャー・デイブレイク』『爆上戦隊ブンブンジャー 劇場BOON! プロミス・ザ・サーキット』。
ブンブンジャーが手堅く期待どおりの良作で、ガッチャードがこの20数年でも屈指の神作で、こんな満足して映画館出ることあるんだ!?っていう部分が最もサプライズだった気がします。
あとSHT映画で2本ともこんなボロ泣きしたのはまちがいなく初めて。歳かな……
以下ネタバレ感想。ベタ褒め注意。
サプライズは私はあんまり意識しなかったけど、まあ予備知識なしでいったほうが絶対楽しい。
まずはブンブン。
△の向こうから排気音……ん?バイク?と思いきや車のほうでした。乗り物に疎い。
いきなりHIKAKINです。子供に人気のYouTuber、の中でもすでにレジェンドと言って差し支えない大御所。たぶんさほど燃えていないので親御さんも安心。
ただ、私自身は動画をほとんど観ないのでどういう人なのか知らないんですが……まあ子供たちが「HIKAKINとブンブンジャーがいっしょにいる~!」ってテンション上がってくれればOKです。
ミラと錠が「本物だ!」って反応だったから、それが正しいんだよね。シャーシロも好きそうだったし。
大也、それほどHIKAKINに興味があるとも思えないのにブンブンが会いたいと言うからセッティングしたってところが、子供になんでも買い与えるダメ親では……
HIKAKINも調達できる玄蕃さん、自分で事務所に「平素よりお世話になっております」ってメールしたのかな。それともそういう人脈を持ってるのかな。怖いな調達屋。この時点ですでに一仕事終えています。
シャーシロも、HIKAKINの代表的な動画をセレクトして大也に見せるくらいはしてると思います。立場上悪いインターネットをよく知っていそうなので、配信方面も詳しそうです。
惑星大破壊大ミサイル……久しぶりに聞いたバカのネーミング……
いいよいいよ~!! そういうの求めてた!! 渇いた体にしみわたる!!
サーキットグルマー、うるっせー!と思ったらセキトモでした。本来音響さんが効果音入れるとこまで全部しゃべってるなアレは……
劇場版恒例「無から生えてくる亡国の姫君」ですが、もちろん令和に大也とどうにかなるわけもなく、ミラと手に手を取って逃げていきます。ミラと?
ベタな「わらわじゃ」系王女でよかった。レギュラー陣が基本的にカジュアルに話しかけてくるから、ヘタにマブシーナみたいな敬語だとぜんぜん強さが出せなかったかもしれない。
大也は王女を自身が求める場所まで届ける「届け屋」
ミラは王女のためにロックスターを走らせ飛ばす「運転屋」
錠は王女たちを身を挺して守る「警察屋」
先斗はいいタイミングで追っ手を始末してくれる「始末屋」
玄蕃は謎のお困り解決アイテムを出してくれる「調達屋」
シャーシロは技術と情報網を駆使する「情報屋」……どっちかっていうとシステム屋かな?
各分野のプロが自分の得意なことを「やりたいから」実行した結果、王女の「やりたいこと」を引き出す。ブンブンジャー劇場版としてこれ以上ない構成です。
6人が揃ってブンブンジャー。もうバクアゲだぜ。バクアゲ以外に言うことないぜ。
各人の描写にじっくり時間をかけたせいか、巨大ロボ戦がありません。代わりにブン&ビュンが名乗りを入れてくれて、なんか盛り上がった感じになってます。
もうね、時間制限の中ではそういう取捨選択も大事だよね。変身前の場面をしっかり入れてくれてありがとう。
調さんのキャラが今まで疑問だったんですが。
中間管理職として大也たちに振り回されるだけの不憫なお姉さんではなく、自発的にブンブンジャーの要請を受け入れている「管理職のプロ」であると。
その接点として、ブンさまを置いたんだなあと……コレが人間だとアレだけど、ブンちゃんは誰が見てもかっこいいロボだから問題ない!ってことなのか。そうなのか?
ラストのブンブンダンス、先斗が余裕のない顔で踊ってる姿にグッときました。
そういうの好き……
年長者だけど普通に役者だから、配信慣れてる玄蕃の隣だといつも隙だらけというか顔作れてないな~って思うんですが、ダンスもあんまり得意じゃないんですね役者だから。
ジースター所属ということで気になってはいたんですけど、しっかり硬派側らしくてニコニコしています。応援するぜ。
調さんはそりゃダンス上手に決まってます。
次は仮面ライダーガッチャード! バトンの送りも完璧!!
続いてガッチャード。
正直ね、ライダーのほうが楽しみなことってあんまりないんですよ。戦隊でもう満足しちゃってるので、蛇足的な気持ちで臨むことになる。戦隊より尺長いし。
でも今年は素直に「次はガッチャードだぞ!」って思えた。
それはテレビシリーズの積み重ねで、絶対に楽しめるって確信を持てたからですよ。「思ってたよりはちゃんとしてたな」じゃないの、最初から楽しみなの。そんな気持ち、平成二期まで遡ってもちょっと思い出せない。
ガッチャードってすごくおもしろい連ドラだと思います。
というか、去年までの「悪い手癖」を全部潰していった結果、極限までブラッシュアップされた感じがする。
最終回直前に上映されるこの「夏映画」、本編の総決算でありつつあまり本編に干渉しない内容でないといけないんですが、お約束の「本編の狭間」と「パラレルワールド」「歴史改変」を全部ぶち込んでキレイにまとめてる。すごい、もうライダー映画(大戦系含む)の完成形。
劇場版キャラだけど主軸でもある「未来の宝太郎」が、先行して本編に登場しているので唐突感がないんですよ。コレいきなり映画でだけお出しされたら「えっ、DAIGO?」って引きかねない。
カグヤさまもそう。本編に出てるからポッと出のVシネキャラにはならない。彼の出自その他が明確なわけではないけど、宝太郎たちに対するスタンスを私たちはすでに知ってるから。
ズキュンパイアもここで再登場するのすごいよね。ケミーなのに会話ができるという要素を活かしきってる。
そして、夏祭りのシーンから「先週やった加治木の話に繋がるんだ!」という時系列も無理なく理解できる。確かにこれだけの記憶を消されたら、そりゃ加治木もおかしくなるってもんですよ。
敵もご存じ強敵グリオン。
情報解禁の時にやられたって思いましたね。本編では一度退場したけどラスボスとして戻ってきた後だったから。グリオンが支配している未来もありうる、という説得力がすごい。
あのグリオンの延長線上だからこそ、三姉妹も捨てて世界を支配したグリオンっていうのがあまりにもハマりすぎてて、確かにそういう未来はありだね!って思う。ビルドがエボルト使い回す方法よりも巧い笑
個人的には鎌苅健太がスクリーンでアップになって心から楽しそうにラスボスやってるのがなんか、感無量でした。どうですライダーファンの皆さん、鎌苅健太って何かと映えるでしょう?(ドヤ)
DAIGOが未来の宝太郎っていうのが絶妙。
大人になる前に片目を失い、仲間たちを全員失い、錬金術の目的もケミーとの会話も忘れてしまった男。芝居とかじゃなく「大人になりきれないまま中年になった」顔してる彼にしかできない気がする。
気持ちはあの日で止まっていても、おじさんだから顔は弛んでるし動きも機敏じゃない。でも宝太郎だから、再び少年みたいに目を輝かせることができる。
なんだコレ……DAIGOがハマるシリアスな役って存在したんだ……
あとね、ガッチャードってすごく真摯に「錬金術」っていうモチーフに向き合ってると思うんだ。グリオンの「黄金郷」も、本来「金を錬成する術」として始まったという部分に忠実だし。
錬金術と蒸気機関との関係、スチームライナーもそうだけど、ビジュアルとしての「スチームパンク」っぽさも忘れてない。はるばるロケ行ってまで「蒸気機関車」に宝太郎たちを乗せてるとこに、執念を感じました。
学生が主役であるということにも真摯。
スパナは3号ライダーながら、徹底的にフォローに徹します。スパナって言動はおもしろ2号ライダーなのに、立ち位置がちゃんと大人なんだよね。年下に対しても年上に対しても。
カグヤさまも、時空移動できるんだから未来に現れてもいいのに、この時代を守る側に回る。チートを使いすぎない。
宝太郎・りんね・加治木という同級生トリオだけが未来へ行って世界を救って帰ってくることになるわけで、季節的にも「ひと夏の冒険」っぽい感じで。夏祭りで締めるのも完璧じゃない? もうちょっとしたジュブナイルじゃない??
加治木が勝手に乗り込んでくるの、ただのトラブルメーカーならイラッとするけど、加治木ならやるよね?来るよね?と期待さえさせてしまうのがズルい。これぞ本編の積み重ねですよ。
ラストの鏡花さんとミナト先生については、長谷川田崎あたりの悪い手癖かな~と思っています。宝太郎とりんねでやれなかったフラストレーションなのかなと。
本編とリンクさせてる場面なのに匂わせすらなかったし、セリフとかでどうってわけでもないし、気の迷いだと思うことにする。
二人とも一仕事終えて酒入ってたんじゃないかな。大人ってそういうことよくあるよ、あるある。ちょっとした段差並みによく引っかかる。もう若くないもの。最終的にはスパナがなんとかしてくれる。
そこだけ引っかかりましたがあとは百億万点。
今までのガチハマりしたライダーの劇場版と比較しても、これ以上の映画ってない。
グリオンも風雅も含め主要キャラが全員出てきて、いつもと違う表情も見られて、でもいつもどおりの楽しい日常に帰結していく。しかも本編と齟齬がない。
もうね、ここに辿りつくまでに俺たちがどれほど苦汁をなめさせられたか……!!(嗚咽)
よく考えてみると、ライダー同士が戦ってないんだよね。
理由があろうがなかろうが、ヒーロー同士が戦って気持ちがいいもんじゃないですよ、やっぱ。
巧いなと思ったのが、「冥国のデスマスク」。あの世界では死んだ人間の顔を使って、本人もしくは因縁の相手にぶつけてくる手法ね。この3人がとてもゲスい。明らかに偽物なんだけど、もちろんご本人が演じてるのでとてもエグい。
死者ということはつまり、この世界のミナト先生は顔面焼けただれて死んだのだ……という語られなかったバックボーンも示してくる。
味方同士が戦わなくても、とってつけた裏切りや離反がなくても、ここまでエグい描写はできるというお手本のような作劇でした。
で、謎の海パン錬金術師。
彼を呼んだ意義というのがここまで前面に出るのかと。
小島よしおといえば、長きにわたり子供たちに人気の芸人。親も子も「誰?」ってなりづらい。徹底してファミリー目線です。
で、海パンではあるけども未だ心身ともに鍛えている彼自身のキャラに、「見た目と挙動はおかしいけど、実力はある錬金術師」という設定がそれほどズレていない。
そして、昔のギャグを復活させたというあのコール。アレはヤバかった。
プリキュアのミラクルライトも、毎年マスコットが「ここで光らせて!振って!」って言ってくれるわけじゃなくてね。なんか画面上の誰かが振ってて「なんとなく促す」くらいの演出も多いんです。あのプリキュアでさえ、シリアスな場面の真っ最中に客席へ呼びかけるのが難しいなって思ってる。
仮面ライダーは大人っぽくリアル寄りで、プリキュアとは真逆の存在でした。でもその仮面ライダーが、「みんなも仮面ライダーに力を送ろう!」って言ってくれたんですよ。
そりゃいきなりカメラ目線はおかしいから、わざわざ「人々に同時接続された通信回線に呼びかける」という形で。コレ考えた人すごい。入場特典まで巻き込んでる。光りもしないカードをミラクルライトの代わりに使おうって思いついた人、プリキュアのほうから来た?
私はディケイド以降の懐古ラッシュで、昭和ライダーをクソ老害と疎んじるようになり、ライダーバトルや民衆に迫害されるライダーの姿がトラウマになり、劇中の「仮面ライダーを応援する群衆」も全体主義的に見えてぜんぜん受けつけない時期がありました。
かなり昔の話だけど、やっぱり古傷が疼く瞬間はまだあります。それに気づかないふりをして楽しんでいます。
でもそんな傷口を押さえて耐えることもなく、素直に熱い展開で「がんばれライダー!」を聞ける日が来るんだ、って。
門矢士については、言われてるほどびっくりもしなかったけど逆に嫌悪感もなかった。もうね、ジオウまでは本当に鬼門だったから、ディケイド&ディエンドが。
今回は「あ、例のカーテンだ」「たぶんカグヤさまの関係者なんだな」「士も貫禄出たな」くらい。カグヤもガッチャードの登場人物だから、自分の本筋を映画で回収してもらえたんだな、という納得感で受け入れられました。
私はカグヤの物語を知らないけど、でもカグヤに彼の物語があるということ自体は「またスピンオフで設定増やしやがった!」とは思わなかった。
私も大人になったけど、演出も大人になってた。
すごいね、ガッチャードの映画を見ただけなのに、私の四半世紀を勝手に背負わせてるよ。平成ライダーオタク、すでに昭和ライダーオタク並みにウザい存在だよ。
恒例すぎてもはや笑うとこですらない「悪に支配された世界で戦うレジスタンス」も、あの父娘のエピソードでグッと血が通う景色になりました。
あーはいはいよく訓練されたTTFC会員ね、という定番のツッコミも観てるあいだは入り込む余地がなかった。
我々スレた特撮オタクはもう一度、仮面ライダーというコンテンツを正面から信じていいのかもしれません。
……どうだ、主語も目的語も大きいだろう。もう止められないぞ。
個人的にですが、今回はどっちもボロボロに泣いてしまいました。
女の子があまりにも強くて、自由で。
出演者がほぼ新世紀生まれになってるのに、こっちはずっと憤って悲しんで諦めた過去を引きずってるいい大人だから。
ガチガチの男の子向け作品を、諸々飲み込んで観てきた「醜い平成」の生き残りだから。
戦隊とライダーって我々が思ってるより別個に制作されているらしくて、その結果ネタが同タイミングで被っちゃうこともあったりするわけですが。その場合どうしても先攻の戦隊が有利になっちゃうわけですが。
今回は図らずも「女の子による女の子の解放」が要素として重なっていました。
いま必要なのはそれだ、って制作が思っているってことですよね。
追われて助けられて、流されるがままの王女を、大也じゃなくてミラが引っぱっていくのが今回の肝です。
大也によって意に沿わぬ結婚(男の暴力)から救われたミラが、ハシリヤンの支配(男の暴力)から王女を救い出そうとするの、本編のリフレインでありアンサーですよね。掴まれる手のアップが、そういう意図だもんね。
でもただ助けられてるだけじゃ、今までのお姫さまと変わらない。自分が何をしたいか口にする=意思表示するところから始めないといけない。……自立という点から考えるとずいぶん手前だなとは思うんですけど、でも最初の一歩はここだよ!ってこと。
正義とか平和とかの大義名分はさておき、まず自分が何をしたいか。大也はじめ男性陣があたりまえにやってることを、女性もしたいと思ったらまず意思表示しよう。それで攻撃されたら戦えばいい。
ストレートすぎるくらいまっすぐなメッセージです。
同時に、仲間たちは誰もそれを否定しない。とにかく優しい、優しすぎる世界。でもこれぞ戦隊という優しさでした。
ガッチャードは、とにかく積み重ねの上に築かれた関係性がよかった。
りんねと宝太郎がもう完全にバディになってるのがあたりまえで、大人のスパナは二人の手が回らない部分をフォローする役目。配置が美しかった。
だから別軸のりんねが宝太郎の腕の中で息絶えるの、本当に辛くなりました。ニチアサの「腕の中で死んでいく絵面」もあーはいはいって感じで見飽きてたんですが、あの場面だけはストレートに二人の悲しさが伝わってきて……特撮オタクとしても初めての経験でした。
スレた特オタでもまだその構図で泣けるんだよ。
宝太郎たちが、父と引き裂かれて絶望する娘を戦いに連れていきますよね。そう、女子なの。彼女は「連れていって」と言うだけじゃなく、小銃ぶっ放してライダーたちを援護してる。
それから、りんねがどれほど敵を圧倒しようと絶望にうつむいたままの囚人たちの中で、わずかに顔を上げるのが、小学生くらいの女の子。目線をよこしもしないんだけど、このカットがすごく胸に来て。
りんね→一香→囚われの子供、と戦いに希望を見いだしているのが全部「少女」なんですよ。宝太郎や一香の父といった、大人の男も顔を上げられない絶望の中で。
ミナト先生を辱めているアルザードを、りんねが絶対に倒す!っていう流れに繋げる演出がすごい。
ザ・サンのエピソードはもう宝太郎とりんねの物語として完結しすぎだろう、本編どうするんだコレってくらい。
映画のパンフに、二人が読んでた絵本のページがそのまま載ってまして。
ざっくり言うと「二人は親友」って書かれています。宝太郎とりんねは恋人でもソウルメイト笑でもなくて、親友。いっしょに敵へ立ち向かう戦友なんです、ずっと、今も未来でも。
社長と秘書でもない、上司と部下でもない、兄妹でもない、親友。
噛みしめましたよね……親友。
ラストの夏祭り、りんねは浴衣でかわいくオシャレしてきます。蓮華がいろいろ盛ってくれたのかな。
そのかわいい自分を、宝太郎に見せたいとかの下心はない。宝太郎も特別に意識したりはしない。多感な高校生なのに。
同級生である以上に、二人は仮面ライダー同士なので。
史上初、男女の「1号&2号ライダー」だそうです。
時代とともに(2002年の龍騎から)女性ライダーは登場していて、そのたびに「○○としては初の女性ライダー」と冠されてきました。
祢音、さくら、玲花、唯阿……女性ライダーが通年レギュラーになったのは令和に入ってからで、平成のあいだは雑な扱いも惨い立ち位置もたくさんありました。ライダーは戦隊よりアップデートが遅れている印象が強く、揺り戻しを感じることもありました。
だから「やっと」という気持ちがすごくある。
今のライダーシリーズが始まってから四半世紀。
2024年、やっと男の子と女の子が対等に仮面ライダーになれました。そこに立ち会えたことが嬉しいです。
今後は「大昔はそういう感慨もあったよね~」程度に普遍化していくといいなと思っています。