シン・ウルトラマン感想。
ウルトラマンは、再放送かなんかでちょっと観た程度の記憶しかない。平成のはつき合いで二回くらい映画見たかも。あとガチ勢と怪獣酒場に行ったことがあるくらい。でもウルトラ警備隊お断りの店だからな。大怪獣ラッシュはアニメ観ました。アレも怪獣しか出てないな。なんかコンテンツに恵まれてるなって対岸(ライダー)から思ってた。
てことで、特撮オタクとしてはかなり初心者です。近くにはあったけど積極的に摂取してない。
幼少期の記憶だと、バルタン星人とメトロン星人が怖かったですね。大きいぶんにはウルトラマンが倒してくれるけど、等身大になって茶の間やオフィスに入ってきちゃうともう逃げられない感じがして。ウルトラマンといえばまずそのトラウマです。
というのが前提のネタバレ感想。観た人向け。
映画以外の外部情報はパンフと公式サイトだけです。
よかったところ、悪かったところ、萌えたところ。
シン・ゴジラを100点とすると、
個人的な好みでは60点。
萌えとサプライズを加味して75点。
ウルトラマンとしてはたぶん100点。
作品の質がどうこうというより「私が観客に向いてなかった」せいだと思います。ひっくり返せばそれほど「私向けではなかった」。東宝特撮に馴染み薄かったのもあるのか。いやおもしろかったけど。
2016年のシンゴ感想を要約すると「エヴァから余計な人間関係を抜いた特撮映画最高」てことでした。
テーマが違うのはわかってる。
シンゴは、圧倒的な脅威に人間がどうやって立ち向かうかというシミュレーションの物語。
今回は、「愚かな人間」をなぜウルトラマンが守るのかというコミュニケーションの物語。
それはわかるんだけど、向き不向きはありますね。
どうでもいいことなんだけど、今お菓子作りが趣味という樋口監督の手作りクッキーを、シンのみんなは食べたのかな……と頭の片隅で考えてました。撮影はコロナ禍前だったと思うから可能性はある。斉藤工は別の映画で食べたらしい。
よかったところ。
円谷のアニメーションロゴって今ああなってるんだあ……と思いつつ。
エンドロールで庵野秀明を探せみたいになってて、パンフで数えたら13回出てた。モーションキャプチャ、嬉々としてやってたんだろうなとか思うと庵野萌えの人は大満足なのでは。樋口監督だけど、エヴァくらい庵野自身を体感できる映画だったよ。
冒頭の「シン・ゴジラ」から展開される、「こういう世界観だからよろしく!!」っていうパンチがすごい。有無を言わせずチューニングを合わせられる感じ。おまえらは今から怪獣映画を観るんだよ!!っていう。この世界は怪獣が出てきて暴れるし、それに合わせて組織も作られる。そこに時間は割かない。
巨大怪獣がどっかんどっかん世界を壊していくのはやっぱり痛快なんだよな。積み木倒すとか砂山崩すとか、幼児的な楽しさの根源みたいなとこあるもんな。
なぜ「怪獣」ではなく「禍威獣」なのか、それは人間側の組織を「禍特対(科特隊)」にしたかったから? そういうこじつけが楽しくてニコニコしてしまいます。
だから禍威獣やウルトラマンの能力については、空想科学読本のアンサーみたいでところどころ笑いそうになった。みんなが気になってたところを真剣に突き詰めてくれるのがいい。空想をいかに現実に近づけるかというのが肝だと思うので。
怪獣の名前はトップ(防災大臣)の趣味でつけるっていうの、シンカリオンみたいだな……でもシンカリオンがすでにパロディなのかな……エヴァなのかな……じゃあ結局ウルトラマンに回帰するのかな……と余計なことを考えていました。もうパロディ元がわからない。
便宜上、ウルトラマンが神永に入ってる状態を「神永@マン」、入ってる人を「マンさん」と呼ぶことにします。リピアというのはゾーフィとの関係性においてだけ出てくる呼称なので。「リピア」は光の国の住人しか知らないということにしたいし、劇中の彼は「ウルトラマン」として扱ってあげたい。
ザラブが、わりと私のトラウマそのままで怖かった。いきなり部屋に入ってきてデータ全消ししちゃう恐怖の存在。車にも乗り込んできちゃう。あれが、私の怖い怪獣です。
べつに結束バンド萌えではないはずなんだけど拘束に結束バンド使ってると「おっおっわかってるねえ」ってどこ目線だかわからない気分になってしまう……あとなんで神永@マンの上着だけじゃなくネクタイも奪ったの。どういう意図なのザラブ。
メフィラスはいちおう人間の姿してたので……というか演者の存在感がすごすぎておもしろくなってた。あの人、メフィラスだわ。
メフィラス、たぶん取引は絶対成功すると思ってたんだろうし、前祝い的に奢るつもりでウルトラマンを贔屓の店に連れていったのに交渉決裂したから割り勘にしたんだろうなあって思うし、上着がない神永@マンが財布もスマホも持ってなかったら「なんだそうなのかウルトラマン」「ひとつ貸しだぞウルトラマン」とか言いながら結局払ったのかなと思うとすごくいい。
頭がよすぎて合理的な選択肢以外に考えが至らないという「残念さ」がすごく演者にハマっていた。すっげえドヤ顔で決めてるあたり、あのビジュアルがすっごい気に入ってるんでしょうね。
メフィラスが一人で印象的なシーン(今後ネットミームになりそうな)を全部持っていったのでズルイなとは思いました。
逆に神永はそういう要素を全く入れずにウルトラマンとして成立してました。
神永@マン、人間らしさが全くないんだけど、神永に入ってから即日ちゃんと神永として出勤してるし、神永として元公安の能力と人脈フル活用してるし、あとメフィラス後にちゃんと身だしなみを整えてきてるので、体だけ借りてる状態ではないんだと思う。そのわりに言動がおかしかったけど。
わりと早々にマンさんが入ってしまうせいで、神永新二がどんな人間かはわからない。元から頭が切れて慎重で抜け目がなくて、でも一人で子供を助けにいってしまう、そんな人(自衛隊に行かせろよというのはさておき)。いきなり職場で大量の本を読みはじめても単独行動しても怪しまれない程度にマイペースで秘密主義を認知されている人。
わかるようでわからない人格の透明さが、マンさんだけを際立たせるということなのかなとー思いました。でも無断欠勤許されてるのはなんでだ。なんでだ班長。
班長の、けっこうヤバい状況なのに部下に厳しく当たらないところ、根詰めてる部下にコーヒー淹れてきてくれるところ、たぶん家族のためにタバコやめただろうに絶望に直面して喫煙室に籠もって吸い殻の山を作るところ、などが好きです。班長の要請でミサイルすぐ買いつけてくれる室長も好き。
「ゾーフィ」は、光の国おっかないな……っていう印象だけを残していきました……
最終的にはリピアの「ワガママ」を受け入れたけど、その決定権すらもゾーフィさんが握ってるんだなって。
実害は出てないけどこれからトラブルメーカーになりそうな種を、星系ごと吹っ飛ばす方針? 他の惑星に逃げる隙も与えないぞっていう? 知的生命体に対する認識違いすぎない? 検疫的な観点で、病原菌根絶!みたいなもんなのかな。
メフィラスがビビってたのを見るとホントにヤバいんでしょうね、すでにゼットンされた星系がたくさんあるってことなんでしょうね。
ゼットン、最初はどこが?と思って見てると「見たことあるゼットンだ!!」っていう形になって、「ゼットン、ゼットン」って鳴くところが間違いなくこれはゼットン!と納得させてくれるのがよかったです。あれは最終兵器ゼットン。
なんか私の人外に対する感度が低かったみたいで、ゾーフィとリピアの関係性に思いを馳せるということができなくてですね、ザラブもメフィラスもそうなんだけど、なんか人間の認識を超えたところで勝手に話をしている、こちらからは理解できない高次元な存在なんだなとしか思えなかったんですよね。彼らに人間的な感情とかそういうものはないんだろうなって。
完全に「愚かな人間」側から見てた。愚かな人間です。
余談ですが私はゾーフィを銀色だと思ってて、でも相方は金色って言ってて、どうも人によって見え方が違うらしい。実際は金らしいんですが、昔話題になった青黒/白金ドレスみたいだなと余計なことを思いました。認知の差異。
最後は「そこで終わるの?」といういくらかの物足りなさも含めてよかった。
エンディングは、庵野の名前探すのに忙しかったんで……米津の歌ってなんかあんまり入ってこないんだ……
「政府の男」は、出た瞬間に座席から立ち上がりそうになりました。
後ろ寄りだったし人もそんなに多くなかったけどガタガタしちゃってごめん。登場に気をとられすぎて話をほとんど聞いてなかったので彼がなんのために出てきたのかほとんど記憶にありません笑
でもちょっと唐突にも見える展開が、「理解が早い」「引き際が潔い」という彼のキャラクターで成立してたのはなるほどと思いました。
このネタバレを踏まないで観られたのは本当によかった。もちろん公開後からできるだけネタバレ踏まないようにSNSやニュース系控えてたのもあるんですけど、ありがとうネタバレしないでくれたウルトラ勢。
萌えたところ。
まず田村班長と宗像室長ですね!
淡々とお仕事をしてくれる上司コンビ。
室長はどんな厄介な状況でも禍特対のためになんでもしてくれるし、班長は中間管理職としてしっかり室長と意思疎通できてるし、ツーカーすぎる。禍特対って寄せ集めの組織らしいのに、長年連れ添ったかのような雰囲気にどういうことなの!?って思いました。
ウルトラマンが死ぬ可能性が高い作戦を即却下できる班長めちゃくちゃかっこよかった。躊躇もしない、それはダメって瞬時に判断してはっきり言える人が上司って禍特対最高じゃん。
室長はそんな班長を「まったくきみは……」とか言いながら褒める代わりにさんざん甘やかしてほしい。その指輪はフェイクなんですよね? 「何食べ」で見た。
撮影時期的な問題か、シロさんにしか見えなくて……たまに帰れた日にはぶつぶつ言いながらストレス発散に美味しいもの作って食べそうな班長でした。
神永と田村班長も気になった。
なんか……勘ぐりたくなる何かがある二人です。
班長、神永が無断欠勤や単独行動をしても怒らないのなんで……よくそういうことするけど理由があるはずだ的な? 子供を助けにいく神永をするっと見送ったのも、わりとよくあることだからなの……?
班長があんまり神永を野放しにしておくから、逆になんかあるんじゃないかと思ってしまいました。浅見を放置するのとは次元が違うんですよ。自衛官と警察官ですよ。お国のためっていう意気込みが他のメンバーと違うはず。どっちも銃持ってたよね? 危機感も他3人と段違いじゃないですか。
班長が部下全員に対してフラットなので神永が一方的に執着しててもいいし、神永がマンさん同様にクールな性格で班長がひたすら片想いでもいい。両方でもいい。
そして外せない、神永と加賀美。
パンフ見ないと名前がわからない加賀美。
加賀美のポジションを浅見にやればよかったのにというくらいの、神永にとっての切り札でした。神永の信頼がなければマンさんも頼らなかったと思う。
車のシーン、神永@マンに「貴様」って言ってるけど今も情報を流してる元同僚に対する呼びかけではないよね。その後の展開から見て加賀美は浅見より先にマンさんの情報を知ってた感じがある。てことは、加賀美は神永ではなくマンさんに対して「貴様」って言ってることになる。沈着冷静で超有能な公安の調査員がそんな敵意のこもった発言をするなんて、そりゃあ何か思うところがあるんでしょうよと勘ぐりたくなるPart2。
こちらも撮影時期的な問題でゼロワンのウィルとほぼ同じ見た目なので、加賀美を思い出そうとするとヒューマギアの耳がくっついてくる……(アマプラで観ちゃった)
メフィラスはもうメフィラスしか浮かばないの逆にすごい。大河でも三浦義村が「俺の好きな言葉だ」って言いそうだもの。
好きじゃなかったところ。
前からそうかなとは思ってたけど、庵野脚本&樋口演出と私の相性が悪い。
先述のとおりウルトラマン門外漢なので、アレは大切なオマージュなんだ!みたいのがあったらすみません。
全体的にセリフが聞きづらいというか、芝居の違和感が大きいというか……
日本語として引っかかる部分もいくつかあったし、脚本ホントに精査した?って思った……浅見・滝・船縁がとくにアレだったけど、神永もたまにおかしいとこがあって、なんか会話がすっと入ってこないの。これがけっこう致命的でした。
そもそも浅見……存在自体が要らなくない??
浅見って昔のヒーローものにおける「強気なくせに足手まといなヒロイン」なんですよね。パタースン並みの働きを期待してしまった私が悪いのかもしれないけど。
配属されたばかりの部署で同僚に「自分のコーヒーしか淹れない男はモテない」なんて難癖つけてくるの、異性でも同性でもセクハラだし仕事できないやつでしょ。実際、浅見自身はチェーンソー持ってくる場面以外ほとんど「仕事」してない。
ウルトラマンの「相棒」として浅見が正解だったのかとはずっと思ってました。人類としての好感度が低くないか。
あとホントにわからなかったのが、靴を履き替えるシーン。どうせ見せ場はタイトスカートとヒールで決めるなら、ずっと同じ靴でよかったじゃん……混乱させられただけで結局なんの意味も見いだせなかったのがモヤッとしました。
限られたカットの中でそういうノイズはいらない。その演出はリアリティやキャラクターの掘り下げには繋がってない。少なくとも私には、上長にスニーカーで挨拶してデスクでヒールに履き替える意図や、そうする浅見の性格が全くわからなかった。
肝心の浅見がそんなだから、禍特対があんまりちゃんとしたチームに見えなかったのです。
滝・船縁のキャラがまた古くさいセリフ回しで、プロのアニメ声優ならまだ耐えられるかもしれないところを演出によってセリフっぽさや残念さが勝ってしまう。俳優が拙いんじゃなくキャストと役と演出が噛み合ってない。ミサトさんが「ちょっち」って言って許されるのはアニメだから……
ネタになるくらいのセリフでキャラ立ってるのメフィラスだけってあたりで、結果が出てしまっている。
今回は「愚かな人間」をウルトラマンがなぜか愛してしまうという展開なので、危機に対応できる有能な人間ばかりではなく、知的生命体としての未熟さ、生々しい愚かさを描かなければいけない。オフの顔もあっていい。滝みたいに、ウルトラマン神だから丸投げでいいんじゃないのとか言っていい。
ただ巨災対までとはいかなくとも、禍特対がもうちょっと優秀でもよかったんじゃないかなとは思う……決してそうなってほしかったというわけじゃないんだけど、私があのメンタルの滝ならデータに気づかず飲んだくれてた自分のタイムロスを悔やむし、船縁が放置しておいた無責任さを責めてしまう気がする。浅見は仕事しないし、禍特対機能してる?ってジリジリした。
滝の絶望は仕方ないとしても、船縁はもっと必死に足掻いてもよかったんじゃないか。
浅見が公安経由じゃなく自力で神永を見つけ、正体を突き止め、彼に作戦を提示してこそ、ウルトラマンの「バディ」を名乗れるんじゃないか。だから加賀美のポジションが浅見だったらよかったのに、と思ったのです。
あと特撮映画としてなんだけど。
個人的には「巨神兵」のファーストインパクトが強すぎて、「巨大な人型が実写で動く」という絵面にそこまでの感慨はなかった……ウルトラQも知識としてしか知らないから盛り上がるポイントがよくわかんなかった、というのが正直な感想です。
逆に「知識だけはあった」せいで、新鮮な衝撃もノスタルジーも得られなかったのかも。
これは完全に私個人のせい。
蛇足:シン・仮面ライダー。
これは……観ないかも……
初めて予告を見たんですが、自分でもびっくりするほどわくわくしなかった。
ウルトラマンは知らないなりにおもしろいものが見られそうだぞ、という予告だったんですよ。でもライダーは、「いつもどおりかもしれない」と思っちゃった。
1号の焼き直しなんか一年おきくらいで何パターンも見せられてるから、「またかー」くらいにしか思えない。個人的に興味を惹かれる俳優がいるわけでもなく、まだ披露されてないこういう特撮を見たい!という確固たる何かを持っているわけでもない。
今回のように「由緒正しい」アクションを再現するなら、「いつもの」採石場で「いつもの」ジャンプやキックをノスタルジーたっぷりに見せられるだけなら、べつにいいかなって。
事前公開されてるショッカーの設定はおもしろそうだけど、ウルトラマンと同じく昭和ライダーにほぼ思い入れがない状態で観ても、今回と似たような感想になりそうな気がする。
追加キャストや公開後の評判で決めますが、今のところは「私向けではない」と思っています。この印象をひっくり返してほしい。