るひま祭シリーズ2
大江戸鍋祭:浅野内匠頭×源五右衛門
大江戸鍋祭:徳川綱吉×柳沢吉保
る・フェア:海尊/義経
SS大江戸1
SS大江戸1
浅野内匠頭×源五右衛門
元禄満開
目の前に彼がいる。それだけのことがうれしくて、つい顔がほころんだ。
「こちらへ来い」
「はっ、いえしかし……」
口ごもるのがじれったく、こちらからひざを進め、きっちりとひざの上にそろえられた手に触れる。
「殿!?」
「もう殿ではないと言っておろうが」
そうはいっても、この男はこれからもその呼び方を変えないだろう。
真下から顔を覗き込むと、源五右衛門はあまりの近さにぎょっとした様子で身を引こうとした。
「いやか?」
少し意地悪く訊いてみる。彼は必死の形相で首を振った。
「いえ、滅相もない! ただ……」
なにに戸惑い、躊躇っているのかわからなくもない。浅野は小さくため息をつき、腰を浮かせた。
「他の者ではない、源五右衛門がよいのだ」
思いきって相手のひざに乗りかかり、正面から抱きつく。「おおおっ」と妙な声を上げた源五右衛門だが、さすがにその体躯はよろめくようなことはない。腰にまわされた手は、ただ浅野をひざから落とさないためだけに添えられている。
そうではない、とごねる代わりに、両手で頭を押さえて上向かせる。驚きに見開かれた目がまっすぐにこちらを見上げているのが面映ゆく、つい苦笑いを噛み殺していた。
「目を閉じよ」
「は……」
戸惑いながらも従う源五右衛門を愛おしく思いながら、そっと唇を重ねる。
触れた刹那、わずかに震えた唇は、即座に主の意図を汲んで応えた。浅野は源五右衛門の首をかき抱き、変わらぬ忠誠を迷わず受け止める。
「ん……っ」
腰を抱く腕に力が込められ、合間に洩れる息が熱く荒くなっていく。
浅野は鼻先が触れる近さで、源五右衛門の顔を覗き込んだ。潤みかけた目はどこか恨みがましさが込められているようでもあり、口にできぬ想いを隠しているようにも見える。
「わしがほしいか」
「あ……」
返答に詰まって、目を泳がせるのも予想どおり。
「わしは源五右衛門がほしい」
そう耳元に囁いて首筋に唇を押し当てると、熱を帯びた吐息が洩れた。口にすると、より強く彼を求めたくなる。
「今宵は帰さぬ」
それまで狼狽えているばかりであった源五右衛門が、小さく笑いを洩らした。
「……?」
改めて覗き込んだ顔は上気こそしていたけれど、浅野を見つめる目にもう迷いはない。
「もとより……」
そのつもりでございます。
あとにつづく言葉はわかっていたから、浅野は彼の唇をふさぐのを待つことはしなかった。
押し殺した声が息となって洩れ、浅野の耳をくすぐる。
「んぅ……っ」
艶めいたその呻きに促されるまま、彼の奥を深く穿った。食いちぎらんばかりに締めつけてくる内側は、それでも浅野を受け入れようと必死に絡みつき、ひくついている。
太く逞しい腿をそっと撫で上げると、頑丈なひざから力が抜けそうになり、彼はあわてて自らの脚を抱えなおした。
「も、申し訳ございませ……」
脚を開き、自ら抱え上げて、小柄な主とつながりやすい体勢をとっているが、彼にしてみれば楽な姿勢とは言いがたい。
「いや……よいのだ……」
体格差のせいで、かなりの無理を強いていることは承知していた。申し訳なく思う心より、そのまっすぐこちらへ向けられた想いへの歓喜が勝ってしまう。
硬く強ばった腿をさすりながら、厚い胸板に頬を寄せ、唇を落とす。腰を揺らすたびに突き抜ける快感が、この男をより味わいたいという欲をもふくらませていく。どの動きも、彼を苦しさに喘がせることになるとわかっていて、それでもやめられない。
ふと、自身の腹を突く一物を見下ろした。図体に見合った大きさのそれは、声を上げることさえ躊躇う本人とは裏腹に、たしかな欲望の証としてかたちを成している。それが浅野にはたまらなくうれしかった。
「源五右衛門……」
「は……」
律儀にいらえをよこした顔を、真下から見上げた。
それから見せつけるように唇を舐めてみせると、彼はぐっと詰まり、しかしすぐに苦笑いを浮かべて、首を下へ曲げる。
「ふ……っ」
浅野は真上を、源五右衛門は真下を向き、腰をつなげたまま口づけを交わす。息が止まるほどに苦しくて甘い接吻を。
舌先が糸を引いて離れると、源五右衛門は主の顔を覗き込んで苦しげながらも微笑んだ。こんなときでさえ、笑える男なのだ。
なぜだか無性に切なくなって、浅野は源五右衛門の首元にひたいを押しつけ、激しく突き上げる。
「く、ぅう、……んっ!」
「ぁああ……っ!」
歯を食いしばったままの源五右衛門とは逆に、浅野の喘ぎ声だけがやけに大きく響き、二人は同時に果てる。
肩で息をしながら広い胸に寄りかかる浅野を抱えなおし、彼はやっとひざを下ろした。こんなにむりをさせたのに、文句ひとつ出ない。それどころか浅野より先に息を整えている。
「苦しくは……ないのか?」
「……いえ」
源五右衛門に身体を拭われながら、ぽつりと訊いてみた。苦しいなどという答えが返ってこないのを承知の上で。
「私は、殿のおそばにいられるだけで幸せなのでございます。その上、お相手に選んでいただけるなど、天にも昇る心持ちで……」
照れくさそうに語る源五右衛門に、少し腹が立つ。
「……選んでなどおらぬ」
「殿?」
数ある中から選んだわけではない。はじめから、源五右衛門だけがほしかったのだ。
不満をうまく口にできず、やおら彼の首にしがみついて後ろに倒れた。
「殿……っ!?」
引き倒される格好になった源五右衛門だが、大切な主を押しつぶさぬように腕を立ててとどまったのはさすがという他ない。
「次はわしの番だ」
「え……」
驚きを隠そうともしない、間の抜けた顔を見上げるのは愉快だった。
「わしも天に昇ってみたい。連れていってくれるであろうな、源五右衛門?」
束の間、目を逸らして言い訳かなにかを探していた様子であったが、すぐにこちらをまっすぐ見据えて、真摯な言葉が返ってくる。
「殿がお望みとあらば、いかようにも……」
そして、源五右衛門はくしゃりと笑った。つられずにはいられない、極上の笑顔だった。
どうも…今回のSSにはもちろん出番がない、弟の浅野大学です。
内匠頭って役職ですし、長矩っていうのも耳慣れないんで仕方ない表記だと思うんですが、「浅野」だと「部活やめるってよ」的なフランクさが出てしまうのはなんででしょう。部活やめる以前にやってない、浅野大学です。
設定上っていうか史実では兄さんと源五右衛門は同い年らしいのに、ぜんぜんそうは見えないどころか、兄さんのほうが年下に見えてしまうビジュアルはなんなんでしょう。実は賢い設定なのにぜんぜんそうは見えない、浅野大学です。
ちなみにこの話、本編終了後から松廊結成までのあいだ、っていう設定らしいですよ。だから挿絵の服装もそういう感じなんですね。でも鍋ですから、フンドシじゃなくてパンツだと思います。袴の下はボクサーパンツ、浅野大学です…
作成日: 2012年8月18日(土) 21:39
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