翔太郎/荘吉
仮面ライダーW:左翔太郎/鳴海荘吉 PG
真夏の夜の
どこからともなく花火の音が聞こえる。
鳴海荘吉は、窓の外に半分ほど見える光の花を眺めていた。夜になっても暑さは引かないが、どんなときでも風が吹いているのがこの町のいいところだ。
生ぬるい風を頬に受けながら、荘吉は皺になった浴衣をぞんざいに引っかけ、煙草に火をつける。どーんともう一度花が開く音がした。
今日も騒がしい日だった、と失笑気味に夜空を見上げる。ハードボイルドなんてそうそう毎日はやっていられない。
今週はお祭り好きの風都を代表する大きな夏祭りで、昔なじみに頼まれて断れず、ハードボイルドの帽子を脱いでテキ屋の手伝いをするはめになっていた。今年は翔太郎もいたから余計に騒々しかった。
堅気とはいえないゴロツキ連中に囃し立てられ、調子に乗って飲みすぎた翔太郎を連れ帰るのがどれほど手間だったか。そして酔いのまわりきった翔太郎が意識を手放すまでに、荘吉がどんな苦労をしたか。だれにもわかるまい。
「翔太郎、花火見るんじゃなかったのか」
部屋の奥に声をかけたが、返事はない。
すっかり酔いつぶれた青年は微動だにせず寝息を立てていた。帰り道で、花火が見たいとかなんとかずっと呟いていたくせに。
荘吉は苦く笑って、二本目の煙草をくわえた。花火はいつのまにか終わっていた。
事務所の上には昔下宿として使われていたらしい部屋がいくつかあって、そのうちのひとつを荘吉が寝室にしている。
押し掛け助手の翔太郎も、その隣の畳敷の部屋を借りていた。そこはあっという間に服も散らかしっぱなしの万年床となり、翔太郎を抱えて足を踏み入れた荘吉が、ついため息をついたのもむりはない。
「翔太郎、着いたぞ」
耳元で囁かれ、翔太郎は身を震わせる。
気づけばそこは自分の部屋で、荘吉がたくましい腕で翔太郎を支えていた。せっかく借りた浴衣は見事に着崩れて、かなりだらしないことになっている。
「あれ、俺なんで……」
「思い出すのは明日でいい。さっさと寝ろ」
翔太郎を部屋に押し込んで出ていこうとする荘吉の袖を、思わずつかむ。
いつもきっちりとした3ピースを着込んでいる荘吉が、今日に限っては色こそ同じ白だが、着なれた風の浴衣姿だった。
「翔太郎……」
たしなめるような視線が向けられたが、翔太郎も駄々っ子のように首を振って譲らない。なおも袖をひっぱると、荘吉は根負けした顔で低い天井を仰いだ。
「だから飲ませるなって言ったんだ……」
暗がりで晒された首筋が妙に艶めいていて、こらえきれなくなった翔太郎はぶつかる勢いで荘吉に抱きつく。普段ならシャツとネクタイで強固に守られている胸元が、今は汗ばんだ肌を垣間見せて、翔太郎を誘っていた。
彼の襟に顔をうずめて、煙草と酒と汗の混じった匂いを吸い込んでみた。それからざらついたあごに頬を寄せた。なにもかもが男くさくて、翔太郎がほしくてやまないものだった。
「おやっさん、俺……」
耳朶に唇で触れながら囁くと、返事の代わりに硬い両腕が背中にまわされた。さほど大きくもない身体に、しかし包み込まれたような気分になる。
大きな手が翔太郎の髪を優しく撫でる。
「悪い子だ」
笑み混じりの声が、承諾の合図だった。
「は……はっ……」
荒い息が不規則に吐き出される。それが自分の動きに合わせてのものだという事実に、翔太郎は酔っていた。
荘吉を布団に押しつけ、叩きつけるように腰を進める。浅黒い肌に白い浴衣がまとわりついて、細く引き締まった裸体を完全には見せてくれない。だがそれでもよかった。手を伸ばせばその肌のどこにでも触れられるのだから。
「ぁあ、んぅ……っ!」
喉をそらせて矯声を上げたのは翔太郎だった。どれほど歯を食いしばっても腰から全身を貫く快感に耐えられず、一人で喘いでしまう。せめて荘吉がともに乱れてくれたらいいのに。そんな歯がゆさも込めて、翔太郎は荘吉をがむしゃらに責めつづけた。
「やっ……ぁっ!」
そんな調子だから、先に達してしまうのはいつも翔太郎のほうで、荘吉を解放しないまま終わってしまうこともある。
今夜も、翔太郎が荘吉の中に最後の楔を打ち込んだとき、荘吉の欲望は翔太郎の腹を突き上げたままだった。
「はっ……ごめ、おやっさん……」
汗が伝い落ちる髪を乱暴にかき上げ翔太郎は必死に呼吸を整えようとする。苦しげに息をついている荘吉をなんとかしなければと思いながらも、頭がついていかない。酸素不足のまま、翔太郎は荘吉に再び覆い被さって、その唇を塞いでいた。
「んぅ……」
舌で口の中を犯しながら、腹のあいだで押しつぶされるそれに指を絡めてがむしゃらにしごく。荘吉が身をよじらせるたびに硬い筋肉がぶつかりこすれて、それだけで翔太郎は再び自分の中に熱がもどってくるのを感じた。
「ごめん、ほんっとごめんなさい、おやっさん……」
口づけの合間に、うわごとのように呟く翔太郎を、荘吉はしかし蹴り飛ばしはしなかった。ただ熱い息を吐いて、翔太郎にすべてをゆだねてくれていた。
「くぅう……っ!」
押し殺した呻きとともに、荘吉が絶頂を迎える。翔太郎もあとを追うように二度目を吐き出した。
浅黒い肌に二人の白濁が飛び散って、淫靡な光景を見せている。つい身震いしてしまったのは、快感の残滓か後ろめたさか。
「おやっさん……」
不意に眩暈が襲ってきて、布団についていた腕から力が抜けた。白い着物、白い体液、視界までもが白く霞んで……
倒れる痩身を、頑丈な胸が受け止める。腹が濡れて気持ち悪い、と思いつつ、翔太郎はあっさりと気を失った。
花火、見られなかったな、と頭の片隅で思いながら。
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