アンドレア×ベルッチオ

2004_巌窟王,[!],[R18]

巌窟王:ベルッチオ/アンドレア R18 !

※アンドレア×ベルッチオ、非合意


ご注意!
この話は原作(デュマ)の設定を元にしております。
原作設定が絡むのに抵抗を感じる方や、これから原作を読まれる予定の方は、各自の判断でバックボタンを押すなり読み進めるなりしてくださいませ。

Chocolat

その青年をどうあつかうべきかは、ベルッチオにとって大きな問題だった。
「よう、ベルッチオ」
時折ふらっと屋敷に現れては金をポケットにつっこんで去っていく。それだけならまだしも、我が物顔に屋敷内をうろついて静寂を乱す。
何度かエデの部屋に侵入しようとして伯爵から屋敷の大部分への立ち入りを禁じられてからは、召使い用のエリア……彼らの個室や厨房などがある空間で、そこが自宅でもあるかように過ごしていた。
「甘ったるい匂いだな」
今も、厨房に断りもなくやってきて、来客用の菓子を作っているベルッチオのじゃまをしている。
「用は済んだだろう。とっとと帰ってダングラールをたらし込んでこい」
午後にモルセールの息子たちがやってくる。子どもは菓子で懐柔、とばかりに、伯爵がベルッチオに用意を命じたのだった。
繊細な薄焼きのクッキーからはじまり、何層もあるミルフィーユ、ホールサイズのモンブラン、純白のチーズタルト、料理人の肌のように美しく輝くショコラのパルフェ……高級菓子店さながらの作品が、最後の仕上げを待っている。
モルセールの息子とさして歳も変わらないアンドレアは、美しいスウィーツを無感動に眺め、パルフェの上にアレンジされた生クリームを指ですくって舐めた。
「おい!」
「なんだよ、いいじゃねえか。イチゴでも乗っけとけ」
彼は笑いながら、生クリームがすくい取られた場所に、飾りつけ用のイチゴをぞんざいに押しつける。
「やめろ、さっさと出ていけ!」
自分の作品を制作途中で荒らされたことにベルッチオは憤慨する。それが他の誰でもなくアンドレアだということが、怒りを増幅させていた。
だが大男の一喝にも、優男は動じない。とろけそうに凶悪な笑みを浮かべて、ベルッチオの肩に手を置く。
「そんなに冷たくしないでくれよ、おじさん」
昔と同じように呼ばれて、ベルッチオは怯んだ。
青年の声からも皮肉な色と笑みが消える。
「おじさんには感謝してるんだ。あんたがいなきゃ、俺は今ここにはいなかった」
再会してから今まで、そんな声で呼びかけられたことなど一度もない。
「ベネデット……」
この手で救い、育てた命。
それがこのアンドレア……いや、ベネデットだった。彼に家族というものが存在するとすれば、それはベルッチオただ一人なのだ。
さまざまな思いに言葉を失いうつむいたベルッチオに、ベネデットは先ほどと同じ真摯な口調で囁きかける。
「あのときあんたが俺を墓から掘りださなけりゃ、こんな悪魔が育つこともなかったのにな」
「!!」
はっと睨みつけた顔には、残忍な微笑が浮かんでいた。
「ベネデッ……!」
殴ってやろうと身がまえたのを感じたのか、ベネデットはすばやく身体を離す。
「おっと、俺はカヴァルカンティ侯爵だぞ? てめぇとは身分が違うってことを忘れるなよ」
美しく手入れされた髪をかき上げて、上等なジャケットからついてもいない埃を払う。それから小癪なあごを上げると、半眼にベルッチオを睨みつけた。
「てめぇは俺に逆らうなんてできねえはずだろ? この顔に少しでも傷がつけば、俺の価値が下がる。伯爵の計画にも関わるかもしれねえなあ……」
伯爵の名はベルッチオにとって、すべての自由を奪う呪文だった。
そう、この自分にはなにもできない。ベネデットがなにをしようと、口出しできないところに立っている。相手もそれを知っているからこそ、こうして傍若無人にふるまっているのだ。
アンドレアという毛皮を手に入れたベネデットは、完成間近だったパルフェに指をつっこみ、その上品な甘さを手づかみで口に運ぶ。最高級のスウィーツを、彼が味もわからないような顔をして嚥下し、指についたぶんまで品なく舐め取るのを、ベルッチオはただ見ていた。
ベネデットは口の周りのショコラも舐め取りながら……それはまるで野獣の舌なめずりだった……ベルッチオを眺めた。
「さあ、俺の前にひざまずけベルッチオ。悪魔を世に送り出した償いをさせてやる」
当の悪魔自身から裁きを受けるなど、茶番でしかない。
だが、ベルッチオは床にひざをつくしかなかった。この悪魔を死の世界から連れ戻し、これほどまでに凶悪な存在になるのを止められなかったのは、自分の責任なのだ。
「手は後ろに組め。口だけでできるだろ。さあ、俺を味わえよ、シェフ。若い男なんざごぶさただろ? それとも、初めてか?」
前を開けて腰を突き出してくるのを、できるだけなにも考えないようにしてくわえ込む。奥までねじ込まれるそれに咽せながら、彼が望むとおりにした。
「はははっ、こいつぁいい! 巧いじゃねえか。伯爵に仕込まれたのか?」
「……伯爵を愚弄するな」
思わず口を離したベルッチオの頭を、ベネデットは乱暴に押さえつける。
「愚弄? 誰に口をきいてるんだ。ぉら、つづけろよ。伯爵だと思ってもいいぜ!」
硬く成長していくそれは、若さゆえの角度と大きさでベルッチオを戸惑わせた。下から突き上げられる感覚には、吐き気を覚えるほどだった。
欲望が吐き出される直前にベネデットの手から逃れ、必死に顔をそらす。
「っ」
サングラスの上にもスキンヘッドにも、白い精がまき散らされた。
「はっ、見ろよ、てめぇの自信作とおんなじ、チョコレートに生クリームだ! どうぞ侯爵さま、特製デザートを召し上がれ、ってな!」
甲高い声で笑いながら、青年は床に養父を突き飛ばした。
「さあ、今度は本番だぜ。とっとと尻を出しな」
そう言いながら、四つん這いになった相手に自分で乗りかかり、衣服を引き剥がしにかかる。
前戯などない。強姦という行為そのものに興奮したのか、さっきよりも勢いよく勃ち上がった中心を凶暴にねじ込んできた。それが彼のやり方なのだろう。
「…………っ」
馴らされていない場所へいきなり突き立てられ、ベルッチオは苦痛の呻きを噛み殺す。痛みをこらえるのは、昔からの習性のようなものだった。
だがアンドレアにはそれが気に入らなかったらしい。
「どうした、泣けよ! イイ声でよがれよ! 伯爵にはそうやってサービスしてんだろ?」
身体だけでなく言葉でも与えられる責め苦に、冷たい床の上で拳を握りしめたとき。
唐突に、厨房の扉が開いた。
「!!」
もう一人の家令を伴って、この屋敷の主人が立っていた。
「伯爵……」
呟いたのは、犯している男だった。
犯されている男は、なにを言うこともできず頭を抱えて床に伏す。強引であれ合意であれ、他人と交わっているのを見られる恥辱は、この子どもに抱かれることよりも耐えがたい。
バティスタンはそこでなにが行われているのかを見てとるなり顔色を変える。
「ベネデット、なにしてやがる……」
飛びかかろうとしたバティスタンを、伯爵が手で制止する。
「でも伯爵……」
伯爵は言い募るバティスタンを無視し、ベネデットを睨みつけた。
「金はいくらでもやる、だが私のものには触れるなと言ったはずだ」
ベルッチオの上から降りようとしない、どころかつながったままのベネデットは、小ばかにした笑みさえ浮かべて伯爵を見やった。
「……これは、失礼……ッ!」
観客の前でベネデットは勢いよく自身を引き抜き、褐色の背中に欲を吐き出す。すべて、見せつけるように。
「……中には出してませんよ、これでいいですか?」
汚れをベルッチオのスカーフで拭い、乱れた着衣をなおしながら立ち上がる。その表情にも所作にも、自分が悪事をはたらいたという自覚は見られなかった。
バティスタンは無意識のうちにナイフを探り、伯爵の腕が下ろされるのを待つ。アンドレアの足下には、文字通り蹂躙され尽くしたベルッチオが、哀れな姿で横たわっているのだ。
「ああそうだ」
身支度を終えた青年は、なにかを思いついたように指を鳴らした。
皿の横にあったマーマレードジャムの瓶をつかむと、それを惜しげもなくベルッチオの服へ、肌へと垂らす。乳白色だけでなくオレンジ色の粘液が、チョコレート色の肌を犯していく。
そのさまにバティスタンは息をのみ、同時にベネデットを絞め殺してやりたい衝動を必死に抑えていた。なぜベルッチオは立ち上がらないのか。彼の力なら、あの小生意気な子どもなどかんたんに畳んでしまえるだろうに……
「アンドレア、聞こえなかったのか。それは、私のものだ」
「ええ、知ってますよ。だからこうして……」
瓶を置いた彼は優雅に手をのべ、微笑んだ。
「どうぞ、召し上がれ」
「このやろ……」
「バティスタン!」
今度こそナイフを手に飛び出そうとした家令を、伯爵は厳しい声で抑えつける。
バティスタンを制する腕はわずかほども動かず、震えもしていない。バティスタンにはそれが腹立たしかった。少しはベルッチオのために憤ってくれてもよいではないか、と。
「アンドレア、屋敷への立ち入りを禁ずる。口座の金だけで我慢しろ」
口座への入金だけでも莫大なものだ。殺しても足りないほどの男に、そこまでしてやる義理などない、とバティスタンは身を震わせながら思う。
だが、常人なら恐怖に凍りつくはずの存在を前にしてなお、青年は不遜だった。小銭が手に入らなくなったことについては、それほど気にしていないらしい。
「あれぇ、おかしいなあ」
陽気な足音で伯爵に歩み寄った彼は、長いブロンドを揺らしながら首をかしげてみせる。
「あなたがベルッチオをそばに置いていたのは、ぼくを手に入れるためだったんじゃないんですか?」
「誤解するのは自由だ。だが二度とベルッチオに近づくな」
肩をすくめて出ていくアンドレアを、伯爵は一瞥もしなかった。その目はまっすぐに、こちらを見ようともせずうずくまる犠牲者に注がれていた。
アンドレアが立ち去るのを待たずに、バティスタンが床に這いつくばる友人に駆け寄る。
「おいだいじょうぶか、ベルッチオ!」
「ああ……」
身体がべたついて不快だったが、それ以上に、冷徹な足音がベルッチオを震えさせた。
歩み寄ってきた伯爵は、絶対零度の視線で見下ろす。
「ベルッチオ……なんという姿だ」
弁解の余地もない。
仲間に抱きかかえられているこの身体は、汚され辱められ、伯爵家の家令としても一人の男としても、あまりに惨めな姿だった。蔑まれても当然だ。
「申しわけ……ございません……」
「でも伯爵、悪いのはベネデットの野郎で……」
バティスタンのフォローになど耳を貸すはずもない、とベルッチオにはわかっていた。この主人に、使用人への情けなどない。
「やつの匂いを、私の寝室へ持ち込むな」
伯爵は、彼ら自身が不始末をしでかしたかのように家令二人を睨みつけ、無表情な声でそう言い放つと、落ち着きはらったようすで厨房を出ていった。
だがいつもより靴音が高い、とバティスタンは直感的に思った。

不機嫌の絶頂、といった表情を窺ったベルッチオは、心中ひそかにため息をつく。
伯爵は休息用のソファに身をゆだね、ワインを飲んでいた。
あれから、気分が悪いという理由で午後の予定をすべてキャンセルし部屋にこもっているのだ。彼の予定を狂わせたのは自分だと思うと、ベルッチオはどうすればいいのかわからない。
彼がこの身を弄び気が済むなら、どんなことでもするつもりだった。
「先ほどは、お見苦しいところを……」
その謝罪を最後まで言わせず、彼はこちらへ手をさしのべる。おそるおそるその手を取ると、そのまま引き寄せられ腰を抱きしめられた。
「ベルッチオ、おまえは誰のものだ」
震え上がるほどに冷たい、しかし激情を抑えたような声で彼は問う。
「モンテ・クリスト伯爵のものでございます……」
「そうだ」
冷たい唇が脇腹に押し当てられ、思わず震えた。
「では、なぜアンドレアを拒まなかった」
「それは……」
できるものなら、殴り倒していただろう。
だが、彼はアンドレアであると同時にベネデットでもあるのだ。アンドレア・カヴァルカンティ侯爵と、自分の養子だったベネデット。どちらの彼に対しても、自分が手を上げる資格などなかった。
「……これは、アンドレアにつけられた傷か」
彼の手が服の中へ侵入する。
アンドレアになにをされても反応しなかった中心が、彼の指と目に晒されただけで脈打ちはじめた。
「は……んんっ」
彼に触れられただけで、反射的に身体が快感を覚える。そうさせられ、そうあるべく自分を変えてきた。だが、彼はそう思ってはいないらしい。
「アンドレアにもそのように喘いでみせたのか」
「いえ、そのような……っ」
アンドレアの相手をするのとはちがう。自分が身を捧げるのは、たった一人だけなのだと。
与えられる感覚によって拡散する思考を、懸命に言葉にしようとしたとき、伯爵の声が聞こえた。
「おまえはベネデットの親ではない。アンドレアの従僕でもない。あの男とは関わりがないのだ。罪悪感など持つな。なにも考えず、ただ私だけに仕えていればよい」
「はい……」
返事を待たず、彼はベルッチオ自身に舌を這わせる。
ベルッチオがアンドレアにしたように、だがそれ以上に巧みなやり方で。
「は、伯爵……このようなことは……」
だが彼は耳を貸さず、執拗にそこを舐め上げては口に含み、緩慢にベルッチオを追いつめていく。ひざまずき奉仕することには慣れていても、されることには戸惑いと躊躇いがある。
「ぁあっ、お願いです伯爵、もう……っ!」
解放を口で受けた彼はためらうことなく飲み下し、さらに先端に舌をねじ込んで吸った。
「っは、伯爵……」
ひざから力が抜けて崩れ落ちてしまいそうなのを必死にこらえ、ようやく顔を上げた彼の口元を、震える指先で拭う。
「ベルッチオ……」
こちらを見上げた表情は苛立たしげに歪んでいて、泣き出しそうにも見えた。
復讐の絶対神としてのプライドか、単なる独占欲か。いずれにしても、この主人のなにかを傷つけてしまうほどに、自分は彼の一部となりつつあるのかもしれない。ベルッチオは、闇に取り込まれる恐怖と誇りとに胸を高ぶらせる。
「……わたくしは、あなたになら、なにをされても……罰さえも喜んで受け入れましょう……わたくしのすべては、あなただけに……」
伯爵は暫しベルッチオの顔を見つめていたが、やがて目を閉じ、再びその腰を抱き寄せた。
「……当然だ」

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!