コウ/カナロ
寒い冬
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カナロの肌は、いつでも冷たい。
海の一族の特性だと聞いた。
だから、カナロはコウに触れるとよく「あつい」と言う。夏ならば「暑い」だったりするし、冬は「熱い」と言いながら手を離さない、なんていうこともある。
今は真冬で、しかも真夜中で、人間ほどに凍えはしないけれど全く寒さを感じないというわけでもない。
だからおとなしく部屋にこもって、毛布をかぶっていたほうが賢明だ。コウはそうしているのだが、カナロは窓際に立って吹雪を眺めている。
「そっち、寒くない?」
「だいじょうぶだ」
そうは言うけれど、同じ部屋でこんなに離れているのもおかしな感じがする。
「カナロ、いっしょに寝ようよ」
今度はストレートに言ってみた。
カナロはちらりとコウがいるベッドを見やったが、すぐに窓の外へ顔を向けてしまう。
「……俺といると、冷えるだろう」
「え?」
「体温の低い俺では、おまえを温めることはできない。こんな夜は離れていたほうが……おい!?」
焦れったくなってベッドを抜け出したコウは、勢いよくカナロに抱きついた。
「気にしてないよ、そんなこと」
抱きしめる服が冷たいのは、窓辺に立っていたからだ。
「くっついてたら、だんだん同じになるでしょ」
冷たいから近寄りたくないなどと、思ったこともないのに。なんだか少し悔しくなって、襟元に顔を突っ込む。
「それに……」
髪をかき上げて、氷のように冷たい耳を食みながら囁きかけた。
「カナロの体だって、すごく熱いとこあるじゃないか」
「そっ……」
なにか言いたげに震えたカナロは、言葉が見つからなかったのか黙って抱き返してくる。コウの首筋にかかった息は、ちゃんと熱を持っていた。
目が合うと、どちらからともなく唇を重ねる。その程度には、親しいはずだ。
「……っ」
海の一族は息も長い。呼吸が続かなくなって降参するのは、いつもコウのほうだった。大きく息をつくコウに、カナロは遠慮がちに尋ねる。
「……冷たかったか」
口の中も。
「うん……でもすぐに熱くなるよ、全部」
体の奥はすでに滾っている。肌の冷たさなど、すぐに忘れてしまうだろう。
白く荒れ狂う外界を遮るように厚いカーテンが閉められ、すぐに灯りも消えた。
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