土方/山南
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意地っぱり
行燈の横に、彼が座っていた。黙って煙草をふかしているだけなら、鬼の副長といえども角は見えない。
布団に転がったままの俺を見て、世間話でもするような口調で言う。
「武士ってのは、みんなそうなのかい」
「なにが」
彼はじれったそうに眉を寄せて煙管をくわえるが、わからないのだから仕方がない。
「なにがなんでも声出さねえで耐えるってのが、武士なのかい?」
ぼんやりとした頭で少し考えて、なんのことを言っているのかやっとわかった俺は、思わず口元だけで笑ってしまった。
「俺は……意地っぱりなだけだ。他のやつは知らん」
彼は煙を吐き出して、その行方を見守っている。
「そうか……意地っぱりか……」
言いながら宙をさまよっている視線が、煙を追っているんじゃないことくらいは俺にもわかる。
俺はじっと彼の顔を見つめた。表情は言葉よりも読みやすい。
「……どうした?」
探られていることに気づいたのか、むっとした目つきで睨んでくる。
「いや」
「まだ足りねえって顔してやがるな……」
彼は煙管を置くと、俺のほうへ這い寄ってきた。ちがうと言っても聞かないだろう。俺は観念して目を閉じた。
「……っ」
遊び人を自称しているだけあって、強引なだけでなく技巧にも長けている。
おかげでこっちは苦痛以外の呻きを噛み殺すのに常の二倍以上の努力をするはめになる。
痛めつけられるだけなら慣れているが、こんなのは苦手だ。
「……土方さ……っ」
「なんだい、女郎みてえな声出せとは言ってねえぞ、意地っぱり」
あまりに的外れな言葉に、また笑いが洩れる。なにがおかしい、と問う代わりに、彼はぐいと腰を突き上げてきた。思わず、息が止まる。
「斎藤?」
苦笑と呻きを噛み殺して、なんでもないと首を振った。ほんとうに、なんでもない。
ただふと下世話な考えが頭をよぎっただけだ。
かつて同じようにこの腕で抱かれた、意地っぱりな武士がいたのだろうかと。
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