お兄ちゃんといっしょ

あ、映司くんの話ね。
妹萌えアニメのタイトルみたいだ。
いろいろ書いてはいるんですが、なんかこう……しっくりこないです。
おとなしく冬の映画まで待ったほうがいいのかなあ……12月なんてあっという間だよね……
いや、映アンのほうが楽なのはわかってるんですが、そっちはもうネタがないんで!(笑)
以下、だらっと映信語り。
なんかBLっぽい! 恥ずかしい! みたいなことしか言ってませんが。
それはべつにわざわざ表明することでもないんじゃないか。


まあ、百歩ゆずってキャラ変えて、映司も信吾さんも「ムラムラします」って言えるようになったとしてですよ(それはオーズではなく銀魂ですね)。
最大の障害って、比奈ちゃんだと思うんですよ。比奈ちゃん本人の気持ちはさておいても、映司と信吾さんの中では無自覚にそうなってるはず。
二人とも比奈ちゃんには後ろ暗い秘密を作りたくないし、直接的でも間接的でも比奈ちゃんを不幸にする道だけは選ばない。それなら自分がちょっと我慢すればいいって考える人たちのような気がするんですよね。とくに片想いだって思ってるときは。
だからね、比奈ちゃんが別の人と結婚しちゃって家を出てったらうまくいくんじゃない!?
と思ったんですけど。
「妹と同じ相手を好きになってしまって片想い歴数年、妹が結婚したのをいいことに告ったら実は両思いでした☆」
っていう展開があんまりにも素人くさい残念系BLっぽくて、まちがって読切で載ったとしても連載はぜったいないな……と扉絵の構図やアオリなんかを考えながら思ったのでした。
うん、そんなの考えてる暇があったら話の中身を考えろっていうツッコミは甘んじて受ける。
ボツる前にMottainai精神でちょこっと晒してみます。
カップリング要素ないからそのまま貼りつけ。
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白のネクタイをゆるめながら、映司は黒い礼服の背中をさする。
「もう……泣かないって言ってたじゃないですか……」
「そんなこと言ったって……」
言うそばからまた声を詰まらせた信吾は、ハンカチを顔に押し当てた。
「比奈ぁ~!」
映司は途方に暮れ、よく晴れた窓の外を見やる。レースのカーテン越しに差し込む陽光はあたたかくて、今日という日を祝福しているようだ。
小さな教会で互いの家族と親しい友人だけを招いて挙げられた結婚式は、地球の反対側から駆けつけた甲斐のある、幸福な式だった。なぜか信吾の横に新婦側の家族として座らされた映司も、式の最中はもらい泣きしそうになっていた。
「比奈ちゃん、とってもきれいでしたよ。あんなに幸せそうに笑って……」
「そうなんだよ、比奈はおれから離れて幸せになったんだよ……」
映司の言葉に、信吾はまたすすり泣きはじめる。
これは仕方ないんだろうな、と映司は彼の肩に手を置いて思った。二人きりで身を寄せ合って生きてきた兄妹が今、それぞれの道を進みはじめたのだから。
信吾は今日、最愛の妹とともにバージンロードを歩き、そして彼女を送り出した。比奈にとって信吾は、兄であり父でもある。信吾が抱えている思いは、さびしいなどという言葉で片づけられるものではないだろう。
気持ちはわからないでもないけれど、放っておいたらずっと泣きつづけていそうなので、映司はなんとかして信吾をなだめようと必死になっていた。
「ほら、ブーケもらったじゃないですか。信吾さんも幸せになれますよ……」
笑顔になってもらおうとしたのだが、失敗したらしい。涙目で睨みつけられただけだった。
「男が……っていうか花嫁の兄がブーケ受け取ってどうするんだよ!」
信吾の手には、白いブーケが握られている。
「女の人たちからは睨まれるし……あいつ、最後の最後まで……」
怪力の花嫁が後ろを向いて投げたブーケは、手を伸ばす女性たちの頭上高く通りすぎ、遠巻きに見ていた兄の正面へ飛んできた。間の抜けた沈黙のあと、招待客が爆笑したのは言うまでもない。
「受け取ったのは信吾さんですよ」
「落としたら縁起悪い気がするじゃないか、こういうの!」
「あ、なんとなくわかります」
自分のところに落ちてきたら、やっぱり手を伸ばしていただろうなと映司は思う。
妹を他の男に引き渡し、手元に残ったのはブーケだけ、という切ないのか愉快なのかわからない状況のせいか、信吾はなかなか泣き止まない。
映司は努めて明るい声を出した。
「でも、いい人なんでしょう?」
昨日帰国した映司はそこで初めて比奈の伴侶となる人を紹介されたが、握手をした瞬間に信頼できる人だと直感した。比奈と同じくらいの背丈で、特別に目立つ顔立ちでもない。それでも、比奈が彼を選んだ理由は理屈でなく感じられた。
「そんなことは知ってるよ」
ふてくされたような声で呟く信吾も、その印象はきっと変わらなかっただろう。しかし最初は素直に二人の関係を認められなかったらしい。なかなか会ってくれなかったし、ちょっと意地悪なことも言ったのよ……とは比奈から聞いた内緒話だ。
「でも映司くんとタイプがちがいすぎて、すぐには納得できなかったんだ」
「そこでなんでおれが出てくるんですか」
驚く映司を、同じような表情の信吾が見返す。
「だって、比奈は映司くんのことが好きだったじゃないか」
「えっ……いやまさか! ないない、ないですよ」
「……………」
信吾は怪訝な顔で映司を見つめるが、これに関しては映司も素直にうなずけない。
比奈とのあいだにあったのは、友人以上の気持ちではあったがどちらかといえば家族愛のようなもので、だからこそ比奈は映司を「家族として」式に招待し、「家族として」信吾の横に座らせたのだと思っている。
刑事さんでも事実誤認はあるんだな、と他人事のように考えたとき、控え室のドアがノックされた。
「どうぞ」
信吾の代わりに映司が答える。開いたドアから顔を出したのは後藤だった。彼も折り目正しいスーツ姿で、普段は身につけないドレスシャツを着ている。もちろん警察関係者としてではなく、泉兄妹の友人として招かれたのだった。
「火野、そろそろ行かなくていいのか。知世子さんはもうとっくに帰ったぞ」
「あっはい、今行きます」
腰を浮かせて信吾の顔を覗き込む。
「行きましょう、お祝いのパーティですよ」
信吾は鼻をすすり、映司を見上げて無言でうなずいた。
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最初に言っとくと、ブーケのくだりはただ絵的におもしろいと思っただけで、べつに伏線でも暗喩でもなんでもないです(笑)。

特撮

Posted by nickel