ムライ祭。

今さら感想シリーズ、舞台編。
たいへん遅まきながら、出しそこねてた感想を一気に消化します。
まずは「こころ」と「天正遣欧少年使節」。
ムライ&サボさんつながりということで。
サボさんが「ムライとは今年4回目」となにかで言ってらして、よく考えたらその4回(新春鍋・パン・こころ・天正)全部見てました……
年末は5回目にもおつきあいしちゃうよ……もうニッカリはムラサボ(なにそれ!?)でなにかすればいいと思うよ。
で、ウチワサボテンのウッチー役でムライがEテレに来るのはいつですか。


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2011.8.14
「舞台 こころ」
ファンの人曰く、ムライはどの公演でもすっごい噛みまくる日があるんだそうで、その回に当たったみたいです。いつもはムライすげーなーとしか思わないんですが(もちろん今回もすごかったですが)、ちょっとだけあたたかい気持ちで見られました。
まず夏目漱石作「こころ」の話から。
一度ならず読んでるはずなんですが……いやあ、こんなにモラトリアム全開な話だったんだね。知らなかった(笑)。
文章だと読み流せる部分を、セリフでむりやり聞かされると、いやでも認識せざるをえないわけでね。マンガ→アニメでもそういうことありますね。
先生も「私」もこんなにイライラする人たちだっけ?みたいな。しかもその煮えきらない若者二人をムライさまが微妙にキャラを変えて熱演してくださるわけで、もう真に迫るの迫らないのって、軽く死にたくなるくらいですよ(笑)。
じゃあ今までナニを読んでたんだよ、っていうと、私にとってはやおいの入門書というか、手探りでやおいを書いていて自分の中で方向性とか意味合いとかそういうのが曖昧になってきたとき、読み返す本だったんですよね(笑)。
なんというか、萌えとはちがうんだけど、具体的に先生や私やKの関係に萌えているわけではないんだけど、そこにある緊張感とかホモソーシャリティとかがやおいには必要な気がしていて、それを再確認するために読み返す、みたいな。
今考えると全体的におかしいんですが(笑)、とにかくそれ以外の要素はほとんど読み流してました。漱石先生ごめんなさい。
脚本がね、オーズのゲストライターの人だったのよね。
正義のバッタ親子や、友だちになりたい北村くんの話を書いた人。映司がかっこよくて私は好きなんだけど、あれってある種の理想化なんじゃないかと。単に同人的っていうんじゃなく、メアリー・スー的な視点っていうか。理想化された映司やアンクに対して、理想から遠すぎるゲストの性格がホントに痛い。客観的に見て「イタイ」っていうより、同じ種類の人間として「痛い」。
この題材をセレクトしたことと、要所要所で原作の「痛い」部分がきちんと強調されてたことから見て、この「痛さ」を大事にしてる人なのかもしれないなあと思いました。
ま、個人的には同族嫌悪でうんざりしただけですけど(笑顔)
でも演劇として見たとき、原作を知らない人は理解できたのかしら……
ムライが現在の時間軸を生きる「学生の私」と手紙や回想の中での「学生だったころの先生」の二役を演ってるのも最初はわかりにくかった気がするし。そんなにきっちり切り替えてたわけじゃないから、お芝居のお約束を知ってたとしても、ちょっと入り組んでた。
原作知らなくてもわかりましたよ、っていう人はごめんなさいね。私みたいに読解スキルの低い観客だったら、途中でムライが先生だか「私」だかわからなくなってたと思うなあ。
あーでも、ひとつうまいなーって思ったこと。
なんでいるのかわかんないキャストが、「私」の兄さんことサボさんだったわけですよ。
「私」語りと先生の手紙で構成される物語をどう処理するのかなと思ったら、「私」が兄さんに先生のことを語る、という展開になっていました。兄さんという「私」を理解していない人を入れることで、むりなく「私」と先生の人間性を自分の口から説明できるのですよね。
しかも、サボさんもムライも二人の絡みも堪能できる(ニッカリにだけ)オイシイ展開!と感心したのですが。
やはりそこはサボさん、これだけ隙のないシリアス舞台でも、ぐいぐいきます。あの空気の中で笑いをとれるのは彼だけです。またしても笑っちゃいけない人(先生)をガチで笑わせてました。ここまでくると空気の破壊者だよね。全くわかんなかったーって人でもそこで息抜きできたんじゃないかしら。
余談ですが、公式ブログを覗いたら、ムライがどんどんサボさんの真似が上手くなってきて演出の人も聞き分けられなくなってきた、とありました。そんなファンは全国に数人でしょうが、ムライの「サボさんだぜぃ」が切実に聞きたいです。なんならサボさんの中に入ってもバレないと思います。みごとに同じ身長でした。本物の兄弟みたいでした。
そんで、肝心のエロ要素(違)。
先生への恋心に近い憧憬も、Kを弄んで浸る優越感も、全部ノーカットでやってくれましたよ。これはどっちかっていうと演出か役者のエネルギーかしら。ムライの一方通行じゃなく、ちゃんと先生もKも応えていたから「私」の迫力が増すんですよね。
基本的には会話劇だから動きが全くないところへ、むりやりKとの取っ組み合いを入れたりして、心理的な肉薄と拒絶を文字通り身体で表現するというのも芝居ならではだと思いました。
今回のムライは、演出でしょうか、ピーターのときと似たキャラだった気がします。
真面目に生きたいと願う真摯な青年から、友人を追いつめて裏切る悪い顔へ。でもその裏に隠された弱い本性が……ってピーターとおんなじパターンじゃない?
ともかくもそんなムライが、先生をキラキラと純粋な瞳で追っかけ、Kをいやらしく追いつめ、苦悩にのたうち、萌え的には申し分なかったはずなんですけど……どうも「かわいい」とか「えろい」の前に、「はー、マジすげえなー」と単純な感嘆が入ってしまって、そこでストップします。でもいっしょに行ったお友だちはかなり萌えたみたいなので、たぶん私だけだと思います。
うーん……もしかして私、ムライに萌えられない体質なのか? こんなに大好きなのに。
他の役者さんもハズレなしで。
お嬢さんがちょっと弱かったかなと思うけど、それはたぶん「奥さん」になったレオナのせいだと思うから(笑)。なんかもう立ってるだけで空気作っちゃうもんな。ズルイよな。
先述の通り、「読んでたけど読んでなかった」私みたいなふまじめな読者にとっては、それぞれの口からそれぞれの思いが語られて、あーその場面に隠された心情ってそうだったのね、という感じでした。
べつにダイレクトなセリフでなくても、役者さんの演技で伝わってくる部分は大きいですね。それができる人たちで「こころ」を見られたのはよかったと思います。
こんなことでもないと、ずっと本質を誤解したまま生きていくところだったからね!!(笑)
ただ残念だなーと思ったのは、円形劇場だったこと。
円形劇場の醍醐味は、キャストが縦横無尽にお客さんの合間を行き来するってとこだと思うんだけど、今回使われたルートは一直線の2本だけ。通常の舞台の上手下手と完全に同じ。
そして、大きなアクションや複数の動きを一度に見せるには向いてるかもしれないけど、今回は登場人物も全体的な動きも少ない、ほとんど会話劇なんです。二人が向き合ってしゃべりはじめたら、真横に当たらないかぎりずっと片方の背中を見ていることになるんですよ。
ムライとサボ兄さんなんか体型がほぼ同じもんだから、ムライがこっちに背を向けて兄さんと近い距離でしゃべってると、完全に兄さんが見えなくなるの。隠れるとかじゃなく、輪郭がぴったりと重なってんの!(笑) おもしろいからやめて!
あと、感情の流れや時系列とかで立ち位置を決めてるらしくて、それ自体はべつに悪くないと思うんだけど、円形でやるこっちゃないよね。だから私から見るとサボ兄さんが舞台のほぼ向こう側で芝居をしてて、そしてKもずっと同じようなところにいるから、見てる光景があまり変わらない。
せっかく円なんだからもっと活かせばいいのにと思うけど、そもそも円形向きのお芝居じゃないから仕方がないですよね……
もっと見やすくてリーズナブルなハコは山ほどあるだろうに……と思いながら見てました。
まあ、ムライを堪能するには申し分ないお芝居だったと思います。
でもパンフが同人誌みたいなのはいただけない。A5サイズの薄い冊子って!
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2011.10.10
「舞台 天正遣欧少年使節」
ヨーロッパ帰りのアイドルたちのために、はるばる行ってきました原宿ラフォーレ。
時間つぶしにうろついたラフォーレ内で、ゴセイレッドとかシンケンレッドとかがフツーにオシャレキングとして崇拝されていて、そっかー彼らこっちが本業だもんな、ヒーローのほうがバイト感覚だよな、と今さらの事実を確認しました。
ま、そんなことはさておき。
ええと……
軽いおつかい気分でなんの心構えもなく小舟に乗った少年使節が、
有馬・大友・大村から授けられた魔法の書とモーゼの杖とルービックキューブの力を借りながら、
「カレーの国」で勇者とまちがわれ怪物退治をするはめになったり、
美少年好きのヘンタイオヤジに襲われるはめになったり、
しかし「ヴァリニャーノはゴアまでなの」で、
途中からヌーノ・ロドリゲス(という名のリ*ックマ)にバトンタッチし、
巨大イカに襲われた……海賊と遭遇したり、
全滅してセーブポイントに戻ったり、
「情熱の国」でギャルを待ってた国王に接見したり、
メディチ夫人に惚れトマトを食べさせたけど腐っていてマルチノが腹をこわしたり、
「長靴の国」でどれが本物かわからない3人の法王に会って、
天正遣欧少年使節の曲と振り付けと、印刷機を持たされて帰る……
というお話でした。
ベースはドラクエです。冒険ですから。
セーブもできたので、全滅してもまたやりなおせばいいだけなのです。レベルEの「三次元でRPGやるもんじゃねえな」ネタもばっちりでした。仕込んでくるなあ。
ドラクエもそうですけど、やたらと三十路以上にしかわからないネタが挟み込まれていて、原宿だからってオシャレに若者に媚びる気なんか全くないんだな、アイドルのライブと見せかけて思いっきりおっさんメイン(ムライ含む)の鍋やる気だな、ていう舞台でした。
心配していたキャスト変更ですが。
ぶっちゃけジュリアンとマルチノは出たての本人たちより芝居できてたし踊れてたし、マンショはきらっきらのオーラそのままで、いやらしさとウザさだけがなくなっていて、要するにものすごく好感度が上がっていました。
や、ばっちが好感度低いっていうんじゃなくて、むしろ相葉マンショの真髄はウザいとこと完璧すぎて気持ち悪いとこだと思うからアレはアレで大好きで、天正のキモぐらいに思ってたんですが、それを抜いてもちゃんと成立するんだ、というのは発見でした。
まーつまり杞憂でした、ちゃんちゃん、ってことですね。
それならそれで、ミゲルも替えてくれればよかったのにと思わなくもないのですが、きっと彼がいたからあれだけのお客さんが入って、他の3人も好意的に受け入れられたのでしょう。
でも3人がどう新しいのかを追うのに精いっぱいで、今回あまりムライを見ていなかったことを白状します。だってほら、ムライの安定感は抜群だから。見守ってなくても安心だから。
新マンショが超カワイイ。ガチでカワイイ。ヌーノを抱えてる姿が「カワイイ~」と叫びたくなるくらいにカワイイ。だってばっちがリラックマ抱えててもたぶんキュンキュンしないもん。愛らしいマンショとヌーノについては、そのうちアルカリさんがビジュアルで見せてくれることでしょう(笑)。
あまりに愛らしすぎて、ヘンタイ村長に迫られてるところは本気で危機一髪!な感じになっちゃってましたね。客席の悲鳴もガチでした。
ムライも迫られてましたが、彼は逆に村長に自分からちゅーかましそうな抜群の安定感(?)でしたから。村長がミゲルじゃなくマンショメインで攻めてったのもわかる気がする……ムライってなんか怖いもん。いや、今回怖かったもん。
そもそも年上キャストからほぼ「ムライ」呼ばわりされていて、ミゲルつーか「美少年」あつかいはされてないんだな、というのがよくわかりましたが。
ムライ自身からも、自分はあくまで役者としてアイドルを演ってるんだ!という主張みたいなのが演技の端々から伝わってきました。リラックマもかわいく抱えることを拒絶していた気がします。ヌーノのあつかいが粗雑すぎて逆に萌えた(笑)。
そのとがった感じが今までのムライっぽくない気がしたんですが、まあ他の3人見てたんであんまりえらそうなことは言えないですねすみません。
いちばん走りまわって着替えて大変だったのは、たぶんおーほりさん。いや、ヴァリニャーノだけでもいいくらいのベテランなのに、なんでそんなモブみたいなことやらしてんの!? ぜいぜい走りまわって衣装替えしてた姿が印象的でした。あとで筋肉痛とかなったりしてないだろうか。
サトウさんは、やっぱりちまちまとメガネ替えてきてました……じゃなくて。最初のアナウンスからサボさんネタを振ってきたのに客席無反応で、あーやっぱ知名度ってそんなもんなのね、と思いました。笑っちゃったのが内輪ウケっぽくて恥ずかしかったじゃないか!(笑)
ちなみにムライは今回の稽古もサボさんの物真似をしていたようで……(公式ブログより) いつか舞台で披露してほしいものです。喜ぶ人少ないけど。
地味にいちばんネタを振ってたカトウさんの舞台人っぷりもさることながら、スズキさんの使い勝手がよくよく考えるとすごい。
最初はないがしろにされてる大村として登場して、少年たちに渡すのも、魔法の杖でも魔法の書でもなくルービックキューブで使えねーよってオチに見せておいて、いちばん(むしろ唯一)役立つのはキューブなんだよね。
いちばん偽物くさいのに実は本物とか、最後のシークレットゲストのとき兼続くんの中に入ってたところまで含めて、あのうさんくさい存在感を逆手にとりまくった配役だと思いました。
あとこれだけは言わねば。
うしろシティの漫才がフツーにおもしろかった件。
あと漫才のときは標準語。なぜ。むしろなぜ普段は関西弁?
休憩時間に大江戸鍋の新曲が流れて、おーこんな感じかー!と早くも気分は年末へ。
歌詞も、あのへんがなんとなく学べそうなテイストでわくわくしました。
あと大江戸鍋の宣伝として毎回シークレットゲストが来てたそうなんですが、私たちが見た回は座長、マサシくんでした!!
柳沢役で必死にミゲルに「殿!」とすがるも、ムライはガン無視で放置プレイという、なんかアレな感じで。この二人の絡みはおもしろいんじゃないかと思うので期待。
昔からのファン的には、歓声が大きくてほっとしました(笑)。ていうか半分くらいはファン歴同じだよね!みたいな。
お客さんはそんなに若い人ばっかりというわけでもなかったですが、ライブのときのムライにガチで「かっこい~v」という声が聞こえてきたので、彼はお姉さんたちからも男前キャラとして認識されているんだなと思いました。
新メンバーにも「マジかわいい」と絶賛の嵐だったし、ミュとかですでにファンの人も多かったのかもしれませんね。
で、今回のキャスト入れ替えで思ったことは、鍋らしさってキャラよりもストーリーなんだな、と。
小劇団ちっくな安定した芝居に、若くない小ネタに、なにも考えずに笑いながら見終わったらなんとなく歴史が学べているという「やられたー!」感。
そこにガッチリはまったのがムライで、彼を残していれば鍋らしさは損なわれないというのをちゃんとわかった上での公演でした。うーんやられた。ぶーぶー文句言ってたけど、ばっち不在のショックに本質を見失ってた(笑)。
そんな鍋だから、本編に出てない役者を座長にして、しかも時代の違う「大江戸鍋」とかできちゃうんだね。ヤバい超楽しみ!!

演劇・舞台

Posted by nickel