あやしモード。

最近、健康のため?に歩いてます。距離的には、小笠原さんのお屋敷から南町奉行までくらいでしょうか。
夕闇のお江戸にはいろんな風景があります。
やおいよりは、狂斎モノローグなんかをぼんやり考えながら歩いていたりします。
本郷のあたりから
だって未来のお江戸は、こんなにも破滅的。
さて、ぶじに青赤アンソロも提出したので、そろそろあやしモードに切り替えないと。
でもちょっと遊ばせて……
というわけで、放映当時から書いてるにもかかわらず行き場に困ってるネタをココに晒してみたり。あやし部屋には置きにくいパラレルなのよね……
ここまでの流れで、なんとなく察しがついた方のみどうぞ。


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「こら、引きこもり少女」
「なんだ、暫定的居候のホームレス」
征壓が声をかけても宰蔵は振り返りもせず、居間のテレビの正面に座り込んでいる。
「昼間からゲームばっかしてると、目も頭も悪くなるぞ」
「まじめに勉強したって、どうせホームレスになるんだろう?」
「う……」
反論のしようもない。征壓が自分の情けない半生について考えをめぐらせかけたとき、宰蔵の携帯電話が鳴った。
彼女に電話をかけてくるのは、放三郎・元閥・アビの三人しかいない。口調からすると、後の二人だろう。
「……仕事か?」
ゲーム機を止めた宰蔵は、ようやく背後の中年に目を向けた。
「調査だ。『若者の街』原宿だから、年寄りはついてくるな」
「ひでえな……」
とはいえ、それもまた事実で言い返せない。アンニュイな気分でぼんやりと窓の外を眺めているあいだに、宰蔵はさっさと出かけてしまった。広いリビングには、ソファによりかかる小汚い中年と消し忘れられたテレビの画面。
「そんなにおもしろいのかね、ゲームってのは…」
「竜導! いつまでゲームしてるつもりだ!!」
放三郎が眉を吊り上げて怒鳴る。
「そうだ! 年寄りのくせに、それ以上目も頭も悪くなったらどうする!!」
数少ない娯楽を奪われた宰蔵も援護射撃する。
「いいじゃねえか、どうせ宰蔵がここでゲームしてるあいだは、俺はここで寝られねえんだしよ。それにしても、なかなかハマるもんだなあ」
放三郎は頭を抱えたかったが、説教中にそうもいかないので代わりに胃の上を押さえていた。
残業で疲れて帰ってきてみれば、居候がゲーム機を取り合って騒いでいる。しかも、女子中学生と中年男だ。なぜこんな無意味なことで胃を痛くしなければならないのか。
放三郎はとにかくこの非生産的な状況を終わらせたかった。
「宰蔵、ゲーム機は自分の部屋へ持っていけ。遊ぶときだけここにつなげばいい。ただし夜の12時以降はダメだ」
「はぁい……」
独身にして子育て気分を味わった放三郎は、深くため息をついた。早く風呂に入って寝よう……
「俺が12時前に寝たいときは? たとえば、今日とか」
「私の部屋で寝ろ!」
さっさと決着をつけたい一心で叫べば、征壓が含みのある笑みを浮かべる。
「……ベッドで?」
「不潔だ!」
征壓が言い終わらないうちに宰蔵が怒鳴り、放三郎もあわてて首を振らざるをえない。
「床に決まっているだろう!!」
これも仕事のうちなのか……と放三郎は今度こそ頭を抱えた。
風呂で居眠りしかけながらもなんとか溺れずに上がってくると、宰蔵は居間でゲームをしていた。
「宰蔵、あと45分だからな」
「はーい」
もう一人の姿はない。ということは……
「はあ……年寄りを板張りの床に転がして平気なのかねえ、最近の若者は」
寝室の床に毛布をかぶって転がっている中年男を見下ろし、放三郎はドアの前で立ち尽くす。
「この高齢化社会で39歳のどこが年寄りだ。屋根の下で寝られるだけいいと思え」
「まったくだな」
元ホームレスの男は、床の上で丸くなってくすくすと笑った。
「……さっさとベッドに入れ」
「え?」
「朝になれば、身体が痛いとか寒いとか騒ぐつもりだろう! せっかくの休みに朝からおまえの愚痴を聞きたくないだけだ!」
「……別の理由で身体が痛くなりそうだなあ」
のんびりした口調を聞いて頭に血が上りかけたが、なにを言うのも面倒で、立ち上がった征壓をそのまま背後のベッドに押し倒した。なにか言おうとする口も、むりやりふさいで黙らせる。だから、征壓が言いかけた言葉は放三郎の耳には入っていなかった。
「ゲームよりは、おもしろそうだ」
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あやしを知ってる友人と話をしていると、最終的にいつもこんな展開になるのはなぜだろう。天保より世知辛さが激増です。