【SS】ルパパト(サンプル?)

1月のイベント用の魁利と透真の話を書いてたんですけど、こういうのが読みたいんじゃないんだろうなとビビリ期に入ったので途中経過を晒します。
いちおう今度は魁利×透真で最後までやろうと思ってたんですが、気を抜くと逆になりそうなのでいっそないほうがいいのかもしれない。

あ、以下のサンプルはまだどっちでもないです。

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 意識のない人間は重たい。自分も変身を解いてしまったから余計にそう感じる。ぶつぶつと悪態をつきながら、透真を背負ってなんとか自室までたどりついた。
 部屋に入って彼を下ろそうとしたところで、頭の後ろから呻きが聞こえた。
「ぅ……」
「気がついたか……」
 背中にかかる重みが軽くなった、と思った瞬間、力なく肩にかかっていた腕が、いきなり魁利の首に絡みつく。
「透真!?」
 どういうつもりかと叫ぶ暇もない。手加減などなしに背後の男は仲間の首を容赦なく締め上げる。
 ふりほどけないと早々に悟った魁利は、透真の腹に肘鉄を食らわせ、わずかに力がゆるんだところで長身を投げ飛ばした。
「なんだってんだ……」
 言いながら思い出した。あの毒を受けた人間は凶暴化すると……。
 床の上で透真が呻きながら身を起こす。だがこちらを向いた表情は、予想とは裏腹に困惑を見せていた。
「魁利……」
 信じられないほど弱々しく囁く声で、心までは操られていないと知ることができた。
「おい、だいじょうぶかよ」
「いや……」
 立ち上がりざま、彼は銃を抜く。
 すでに抜いていた魁利が先に銃口を向けたため、二人は互いに牽制することができた。魁利の頭に銃を突きつけた透真は、苦しげに顔を歪める。やはり、意識は正常なままのようだ。
「体だけ操られてんのか?」
「……わからない」
 透真は自分の意志に反する手をむりやり下ろし、銃を部屋の隅へ投げ捨てる。
「おまえはさっさと戻れ……」
 魁利から距離を取ろうとした透真は、しかしさらに表情を険しくして顔を上げた。
「……いや、俺を縛ってから行け」
「あ?」
 眉を寄せる魁利に、透真はワイヤーを仕込んだ自分のバックルを差し出す。これで拘束しろというのだ。だが、傷を負っている人間にそこまでする必要はあるだろうか。迷う魁利に対して、透真は表情も変えず告げた。
「たぶん、俺はおまえを追いかけて殺そうとする」
「殺……」
 物騒な単語に突き飛ばされるように、魁利は彼のバックルを受け取った。

 ベッドのヘッドボードに両腕をくくりつけられた姿は磔のようで、自分がしたこととはいえ背筋が寒くなる。だが怖じ気づいてはこちらの命も危ない。
 魁利に手を出せなくなった透真は、衝動を身の内に抱え込むように、苦しげに喘いでいた。
「脱がしときゃよかったか……」
 そう呟きながら、今さらシャツのボタンをはずして首のスカーフを抜いてやる。これで少しは楽になるだろうか……。
「え!?」
 あらわになった首元に見慣れないものが見え、ぎょっとして思わず襟を大きく広げていた。
「なんだこれ……」
 左肩を中心に、黒い模様が同心円状に広がっていた。首や胸まで伸びるそれは、蜘蛛の足にも似て気味が悪い。透真も自分の肌を見下ろし、表情を強ばらせた。
「痛いか?」
「いや、なにも……」
 だが先ほど撃たれた場所と一致する。毒の浸食とこの模様の広がりに関係があるかはわからないが、どう考えても楽観できる状況ではない。
 腕を縛りつけられたまま息苦しそうに胸を上下させる透真が、荒い息のあいだから囁いた。
「水をくれ……」
「わかった、待ってろ」
 急いで階下の厨房に駆け下り、水差しとグラスを持って戻る。
「おい水……」
 グラスに水を注ぎながら渡そうとして、相手が手を出すどころか起きあがれもしないと気づいた。そうしたのは自分だ。
 こちらを見上げた透真は、こんな状況なのになぜか愉快そうな笑みを浮かべて、自分の唇をわざとらしく舐めてみせる。
「飲ませてくれるな?」
「あーもー、めんどくせえ!」
 頭から浴びせてやりたい気分になったが、そうもいかない。
 仕方なく、彼に直接飲ませるつもりだった水を自分の口に含み、透真の口元へ持っていった。
「ん……」
 それなりにこぼれはしたけれど、冷たくもないだろう水が透真の喉へと流れていく。
「……もう終わりか?」
 かすれた声に強請られるまま何度か同じ動作を繰り返し、コップ一杯ぶんの水を彼に与えた。
 もう終わりにしようと思いかけたとき、さらに水を求めてか、相手の舌がこちらへ入り込んできた。すっかり馴染んだキスの感覚に、思わず応えて深く追ってしまう。
 つかの間、この状況を忘れて浸りかけた瞬間。
 尖った歯の先が、舌に食い込むのを感じた。
「!」
 すんでのところで顔を引き剥がしたと同時に、相手の歯が鳴る。
 手から放り出されたグラスが床に叩きつけられ、粉々になった音が聞こえたが、それどころではない。
「今……舌噛もうとしたよな?」
 口元を拭いながら見下ろすと、透真は愕然とした表情でこちらを見つめた。
「すまん……」
 さっきは露骨に挑発するような笑みを見せておいて、また元に戻っている。

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つづく!かどうかは……(笑)