セイバー文まとめ
二人が「仲良く」してるだけの話。上下はないけどいたしてはいます。
「普通の関係」
*
長い空白がなければ、彼とは「普通の」友人だったのだろうかと考える。
同じベッドで雑魚寝するくらいはあったかもしれないが、きっとこうはならなかっただろう。
「……っ」
はだけたシャツを急いた様子で肌から剥がそうとする賢人の表情に、少しの余裕もなかった。長い指がシャツの下の肩を掴み、指の跡が残りそうなほど食い込んでくる。ひどく真剣な眼差しに煽られて、飛羽真も彼のベルトを引きちぎる勢いで外しにかかった。
熱い息と肉厚な唇が鎖骨に当たり、期待と昂奮で呼吸が浅くなる。彼が想ってくれているのは知っていても、それを我が身で感じられる機会はあまりない。
「ぁあ、賢……」
痕がつくほど肌を強く吸い上げられ、快感に喘ぎかけたとき。相手がふと動きを止めた。
こちらをじっと見下ろす先を見やれば、濃い痣が脇腹にかけて浮き上がっている。変身中は血こそ出ないが、切りつけられて完全にノーダメージというわけにはいかない。どんなに気に入った服を着ていても、その下にある体はいつもそんな有様だ。慣れてしまってほとんど忘れていたが。
「平気だって」
努めて明るい声を上げ、彼の頬を包み込んで撫でた。その端正な顔にも新しいすり傷が残っていて、まだ脱がせていない服の下には新しい痣も消えない古傷もあることを知っている。こちらよりよほど痛々しい。
「自分の怪我は気にしないくせに」
「……おれは、剣士だから」
「おれもなんだけど」
自らの傷には無頓着な彼を抱き寄せ、顔中に口づけを浴びせてやった。血が止まったばかりの頬にも、すらりとした鼻筋にも、まぶたにもひたいにも髪にも。
「……飛羽真!」
彼は苦笑し、飛羽真の手首を掴んで自分から引き剥がすと、そのままシーツへと押さえつけた。
唇が重ねられるのを、目を閉じて受け入れる。長い睫毛が顔にかするのを感じながら、昂る腰を相手に押しつけた。向こうも同じ状態で、賢人が喉を反らせて身をよじる。
「……ぁっ!」
瞼を上げて白い首筋を目にした瞬間、たまらなくなって彼の手を振りほどき、腰を抱き寄せていた。ゆるく体を覆うだけになっていた服を押しのけ、熱と熱を重ね合わせる。
「おいっ……」
焦ったような抗議の声に軽い口づけで詫びて、衝動のままに腰を揺らした。どちらからともなく脚が絡み合い、中心に集まる快感を追うことだけに集中する。
もつれ合ううち、飛羽真は賢人の上にのしかかっていた。一方的に熱を擦りつける格好になるが、気にしてはいられない。
「く……っ」
服を掴んでいた賢人の手が、飛羽真の頭を抱え込む。
「飛羽真……」
溺れたように喘いだ彼は、その口で飛羽真の口をふさいだ。体を押さえつけられている状態でせめてもの反撃のつもりなのか、巧みに舌を絡め取って呼吸を封じていく。
「んっ……」
目眩を起こしかけ、汗ばんだ胸がぶつかり、昂ぶりは限界を訴えている。もう理性もなにもない。傷だらけの体も、過去の空白も意識の外だ。
「ぅあっ……」
離れた口のあいだで獣じみた嬌声が上がったのと、絶頂に達したのは二人同時で、勢いのまま相手をきつく抱きしめ合う。
余韻が過ぎ去るまで、しばらく相手の心音と呼吸だけを聞いていた。
「……満足したか?」
体の下から低い声が尋ねてくる。大きく息をつきながら、相手に重みをかけないように体をずらして真上から覗き込んだ。瞳も唇も濡れた彼は、恨みがましげにこちらを見上げてくる。途中で主導権が入れ替わったせいだとは予想がついた。
彼が自分を求めているのだと感じたことで、それ以上に求めたいと思ってしまっただけなのだが……
「なんか、ごめん」
呆然と半開きになっていた唇が、ぎゅっと結ばれる。
「謝るくらいならなあ……」
かすれ声で呻いた賢人は、掴みかかるなり飛羽真の耳に噛みついた。
「ひゃっ……」
そのままやわやわと甘く噛まれて妙な声が出る。
「ごめんって、次は賢人がリードしていいから……」
バカバカしいほどに平和で楽しくて、笑い出さずにはいられない。
「ぜんぜん終わる気ないな?」
「賢人もだろ!」
意地になって乗りかかってくる相手を抱きとめながら、ふと考える。
戦いに巻き込まれることなく世界が平穏なままだったら、二人ともいつかは別の相手を見つけたかもしれないなと。だが現実はどんな空想からもかけ離れたところまできていて、「もしも」など受け入れない。
ただ、この世界で互いを求め合うことだけは「普通」で「必然」だと思いたかった。
*
賢人はタートルネックじゃないなコレ…
ソードオブロゴスの服がわからなさすぎてバンコレ行ったら着方の解説まで載ってた。ありがたい。