真田丸文まとめ1

前戯でどっちつかずエロ1。

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ほつれた鬢をそっと撫でてやると、もの言いたげな目がこちらを見た。
この男のことだ、また乱れるものを今直してどうするのだなどと思っているのだろう。
主を恭しく褥に横たえ、兼続は自らの重みをかけないよう気を配りながら肌に触れてくる。平素の能面を装ってはいるが、その手も息もすでに熱い。
乾いた硬い肌に口づけた兼続は、胸の飾りに唇を寄せた。濡れた感触に景勝が小さく喘ぐと、念入りに舌先で責め立てられる。はじめは悦いのかどうかもわからなかったのに、今では触れられるだけで体が応えてしまう。兼続のせいだ、と景勝は思っているが、本人を詰ったところで「左様でございますか」と涼しい顔で流されるのかと思うと、口にする気にもならない。
腰に熱が集まるのを感じはじめたころ、兼続の手が下腹部をゆるゆるとなぞり出す。胸を吸われながら熱をゆっくり扱かれる、なんともいえない焦れったさに景勝は身をよじった。
兼続は決して急がない。景勝が忙しなさを望まないことを知っているからだが、彼自身がそうかというと、ひどく厳格に己を律している節がある。無礼にならぬ範囲で、冷淡に一方的に、自らの欲にまかせて貪ることもできるだろうに。
「ぁ……」
ゆるやかな愛撫で主の体が悦んでいることを察した兼続は、その指を後口に伸ばす。薬を塗り込み、受け入れやすくしてようやく繋がることができる……つまりここからまたさらに、兼続の手に身を任せて焦らされつづけるということだ。
景勝は兼続の頬に触れ、こちらを向かせる。
「わしだけ……というのは、つまらんな」
己で思っていたよりも声はかすれて途切れてしまったが、意図を伝えるには充分だった。
「……は」
兼続はわずかに怯んだように見えたものの、低い返事に動揺は感じられない。
真上に兼続の顔が現れたかと思うと、少し逸れて首筋に唇を落とされる。そちらに気をとられた刹那、露わになった雄に同じ形が重ねられた。
「……っ」
二人同時に、吐息とも呻きともつかぬ音を喉から洩らす。
熱を持っていたのは景勝ばかりではない。すり寄せられる兼続のそれはすでに硬くなっていて、手でさすられるのとは全く異なった感触を、生々しい刺激を景勝に与えた。
そうまでしてもまだどこか遠慮している様子なのがもどかしくて、景勝は薄い背中をかき抱いた。腹のあいだで屹立が押しつぶされる。
「お屋形さま……」
その声には少しばかり非難が混じっていたかもしれない。
それまで身を浮かせていた兼続の重みが景勝にのしかかってくる。さほど重くはないが、軽いわけでもない。襦袢を引き剥がせば、肉がついていない硬い胸がぶつかった。それでもわずかに吸いつく感じがするのは肌が汗ばみはじめているからだ。
「ん……」
肌をまさぐり合ううち、下着はただ身にまとわりつく布となっていく。こうなると、与えられた役目すらどうでもよくなる。兼続が主に楽をさせるため横たえたこと、自らの重みをかけぬよう気を配っていたことも、景勝自身がなかったことにしてしまった。
腹の上でくねる細い腰を抱え、景勝はそのままごろりと転がって上を取った。とっさに掴んだ手首を布団に押しつける。
兼続は、驚きも逆らいもせず、ただまっすぐこちらを見上げた。
眼光鋭いその目は情緒に欠けるが、脇見をしない。愚直なほどに景勝だけを見つめている。見守られている安堵はあるが、時に落ちつかなくなることもあった。こうして、彼から冷淡さを剥ぎ取り、欲を貪っているときにはとくに。
己でも気づかずうろたえた景勝は、衝動のままその口に噛みついていた。
普段はへの字に結ばれてとりつくしまもない唇がめずらしく半開きで、誘い込もうとしているように見えたのかもしれない。実際、兼続は拒むどころか自ら舌を絡めてきた。主の首をかき抱いて、息をつく間もなく口づけに酔いしれる。
湿った息が混じり合い、猛った逸物は互いを突き上げ、どちらが先に達するかといった瀬戸際。景勝は動きを止め、鼻が触れそうな近さから相手の顔を覗き込んだ。
彼は荒く息をついてはいるが、催促などしない。ただ従順に、主の命を待っている。疑いも迷いもせず、それがこの世の摂理だと言わんばかりの顔で。主を抱くときさえ、己が支配しようとは全く考えていない。
にわかにその表情が愛おしくなり、乱れた鬢を撫でつけてやる。
再び向けられた怪訝そうな眼差しに、景勝はつい笑みを洩らしていた。

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東国No.2の会。
正信「ほほう、皆さまはあるじに攻め受け属性を合わせられるのですな」
江雪斎「なんと、徳川家は違うとおっしゃるか!」
兼続「…そちらの殿が攻めを所望なされたらどうなさる?」
正信「うまく言いくるめて、それがしが攻めますかな」
兼続「では、受けたいと思し召したら?」
正信「焦らしたのち、攻めます」
信幸「…あるじの意向ガン無視ではござらぬか!」