真田丸文まとめ1

前戯でどっちつかずエロ2。

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広い掌が胸に押し当てられ、その熱に震える。
無骨ながらも優しい手が、衣の下の冷たい肌を確かめるようにゆっくりとなぞっていき、そして長く力強い腕が背後から抱きすくめる。
はだけた首元に主の息を感じながら、兼続は自ら帯を解いた。
女になる作法は心得ている。だが、幸か不幸か兼続を求める男は多くなかった。機会があってもおもしろみがないと放り出されるのが常であり、己も名折れとは思わない。文武ならまだしもそういう方面では役立たずだと自認していたから、早々にとり繕うこともしなくなった。
だが景勝だけは、おもしろくないだのかわいげがないだのと言わず、ただ黙って兼続を抱く。兼続のほうも、この寡黙でどこか頼りない男に応じることに、これといって疑問は抱かなかった。そうするのが当然だと、互いに信じ込んでしまった節がある。
馴れた心と体は今さらどうにもできないし、どうする気もない。
肩へと唇が押し当てられる。
その触れ方が妙に丁寧で、くすぐったさと同時におかしさもこみ上げてきた。無論笑い声など洩らすことはない。自ら衣を落とし肌を晒す。
大きな手は浮いた骨をなぞり、筋張った首を覆うように撫で上げる。この節くれ立った長い指に締め上げられ事切れるなら悪くはない、と兼続は埒もないことを思う。だがそれも一瞬だけだ。
あごを辿ってきた指先が、唇に触れた。
迷わずその先端に口づける。こちらの魂胆などわかっているのであろう……いや、気遣いか。律儀にも兼続の誘いに応えようとする景勝は、二本の指で唇を押し開けた。
遠慮がちに押し入ってくる指を、舌先で迎え入れる。
本来ならば刀を握り弓を引くべき、力強い指だ。その長い指が手持ち無沙汰に文を開き、疲れたように脇息を掴み、そして所在なく長身の横へ垂れ下がっているのを目にするたび、わけもわからず胸がざわつく。不敬とは承知していても目が離せなくなる。
虚しさやもの悲しさともちがう。だがその心かき乱す感覚がなんなのか、兼続は未だにわからないでいた。わからないまま、その長い指に舌を這わせる。平たい指先に、四角い爪に、張り出した節に。
片腕を兼続に抱え込まれた景勝は、もう一方の手で愛撫を再開していた。
胸から腹へ、その下へと下がっていった手が、下帯の上からゆるく握り込んでくる。
「……っ」
小さく洩れそうになる声を噛み殺した。
決して器用ではないが、だからこそどう動くかわからない大きな掌と長い指に翻弄される。その手に自らを擦りつけたくなる心を押さえ込み、且つ従順に体を開かねばならない。
後ろから抱えられていなければ、こちらから奉仕できることはいくらでもあったのだが。兼続よりも上背があり手脚も長い景勝に抱え込まれては、逃れるのも容易ではない。ままならぬ我が身に対する苛立ちも相まって、兼続の息は乱れていく。
しかしそれ以上に、首筋や耳に感じる景勝の息は熱かった。こうしている今にも、耳元で艶めかしい喘ぎが上がりそうで、今や兼続はただ景勝を乱れさせたいがために、音さえ立てて彼の指を舐め啜っていた。
「ふ……」
飲み込みきれなかったものが口の端からこぼれ出てあごを伝い落ちていくが、脱ぎかけの衣に腕を取られ、主の腕に邪魔をされ、拭うこともかなわない。下帯も濡れてきた。だが景勝も同様だろうと頭の片隅で思う。
愛おしい指が抜き去られた。名残惜しげに舌先から糸が引く。
「……兼続」
一度だけ、かすれた声で囁かれるのは、了承の確認。
立場上拒まれることなどありえないのに、気まずい頼み事をするときと似た口調で、控えめにその先を促してくる。
当然、了承など不遜なことはしない。どうあっても景勝はこの地の領主で、兼続はその下に仕える大勢の一人でしかない。この城内で肌を合わせるのが、互いだけであったとしても。
そして、媚びや嘘を嫌がる男に慣れない色目を使っても意味がない。
「お屋形さま、どうか……」
かわいげのない低音が心から懇願するのを聞き、景勝は満足げに息をつく。
己を抱く腕にわずかな力が込められた刹那、主を押しのけ組み敷きたい衝動が湧き上がったが、兼続は気づかぬふりでその腕に身をゆだねた。

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東国No.2の会。
兼続「この胸のトキメキ、恋ではないかと存ずる」
江雪斎「どちらかというと萌えではござらぬか」
正信「いや、フェチですな」
信幸「…なにがなんだかわけがわかりませぬ!」