キュウレンジャー文まとめ1
牙と針
縋りついてくるだけならまだしも背中をやたらと行き来する手が煩わしくて、両の手首をシーツに押しつけた。
懲りずに今度は足を絡めてこようとするから、こうなるとこちらも相手の自由にさせるのが癪で意地を張りたくなる。片ひざを自分のひざで押しやり、もう片脚は尾で腿を締め上げて動けなくしてやった。
「早くしろよ」
自分で動けなくなったせいで焦れったそうに眉をひそめて急かす顔は、この場には不釣り合いな幼さを残していて、それが妙にスティンガーをざわつかせる。
「少しは黙ってろ」
せがまれたからというわけではなく、ひざまで巻きつけた尾を持ち上げて脚を開かせた。ラッキーはつかまれている腕を外そうともがいたが、体の重みをかけているぶんスティンガーのほうが有利だった。逆のポジションなら、逃れられなかったのはスティンガーのほうだろう。
くねる体を胸で押さえつけ、ほしがっているそこへ自身を突き立てる。
「……ぁああっ!」
すぐ耳元で、抑える気がまるでない嬌声が上がり、口もふさいでおけばよかったと顔をしかめながら思った。だが体のほうはすでにそんな余裕はなく、勝手に腰が動く。
奥を穿つたび、ラッキーは堪え性のない悲鳴を上げた。苦悶ならまだしも、普段は決して他人に聞かせることのない甘い喘ぎを。
「っ、んっ……」
スティンガーのほうは歯を食いしばって声を殺そうとするが、相手が騒ぎ立てるのに引きずられそうになる。恥も外聞もなく目の前の体を貪って、胸の奥に押し込めている感情をすべてぶつけてやりたい衝動に駆られる。
「ぅるさっ、黙れ……」
「むちゃ、言うなよ……っ」
騒ぐわりには、息のあいだから文句をこぼす程度にはこちらの声も聞こえているらしい。
「スティンガ……っ!」
不意に、ラッキーがこちらへ頭を寄せてきた。どういう意図かと考える間もなく、肩に噛みつかれる。
「……っ」
痛いというほどではない。本気なら肉も噛みちぎるだろうし、抵抗するつもりでも皮膚くらいは食い破れるはずだ。
歯は食い込んでいるが、敵意はなかった。角度を変えてはしゃぶりついてきて、こちらの肌を唾液まみれにする、それだけだった。
ふと気づいて、片手を解放してみる。予想どおりにラッキーは猛然とスティンガーの首を抱き寄せ、そして距離の近くなった首筋へ歯を立ててきた。急所に歯が触れたときにはさすがに不安を感じないでなかったが、凶暴な甘噛みは変わらない。
「んんっ……」
スティンガーの首に食らいついたまま、ラッキーが身を震わせた。さすがに痛みを感じたがそれよりも。
「っ……はっ!!」
首から口を離した獅子が大きく息をつく。
どちらが先に、などという差は今に限ってはどうでもよかった。二人は今、同じ余韻に浸っていたから。
だるさが襲ってきてもう片手を離す。ラッキーは待っていたかのように両腕できつくスティンガーを抱きすくめた。終わったことにも気づいていないかに思える必死さだった。
「……まだ足りないか」
すぐ横にある頭に問いかけるが、彼は首を横に振り、しかし腕の力をゆるめようとはしない。
それから呼吸が収まってきたラッキーが体を離すまで、スティンガーはどうすることもできずただ抱擁を受けるがままになっていた。
満足したらしい腕がベッドの上に投げ出されてから自由になった身を起こし、相手を見下ろしてぎょっとする。
ラッキーの目は濡れていた。
「あれ……」
彼もスティンガーの顔を見て(あるいは見えないことで)気づいたのか、掌で両目をこすり、そのまま頬もごしごしと拭った。
「気持ちよすぎて、涙出た」
「……………」
返事のしようもない。
だからなにも言わずに彼のほうへ身をかがめた。
幼児よろしく自分の唾液でべったりと濡れた口元を、ただ舐めてやる。彼も当然のように口づけを期待して応えようとするが、わざと逸らして口の端からあごへと舌を這わせた。ラッキーのほうもむきになって茶色い髪をつかみ、なんとしてもこっちの口に自分の唇を重ねようとする。
髪を引っぱったり頭や腕を押さえつけたりと取っ組み合いになったあげく、ラッキーが上を取ることで勝敗は決した。
半ば諦め気分でラッキーの楽しげな口づけを受ける。噛みつくような仕草は変わらず、唇にも歯が当たる。
「……噛み癖は直しとけ」
彼の頭を押さえてそう言うと、まだ触れたかったのか唇を突き出してラッキーは不満そうに返した。
「痛いならそう言えよ」
痛みなどない。ただじゃれついているだけなのは知っている。
だが逆の立場なら、彼は痛いと騒ぎ立てるのだろうか。そこまで考えて、一度も「痛い」とは聞かなかったと思い出した。
「……そっちはどうなんだ」
「え、なにが?」
ラッキーはスティンガーの視線を追って目線を落とす。
長い脚に、赤く残った鬱血の痕。絞めつけていた蠍の尾が、くっきりと浮かび上がっていた。
オリオン号大浴場:
小「わ! ラッキー、なんか足にヘビみたいなアザついてるキモい!」
赤「あ、忘れてた…大丈夫、これステ…(ドスッ)」
小「わああラッキーどうしたの!? ねえみんな、ラッキーがいきなり倒れちゃったよ!」
橙「湯あたりしただけだろう、心配ない。一時間もすれば起きる」
黄「ちょっ…しっかりしてラッキー! きみも安易に神経毒使うのやめてくれない!?」
橙「教育上の配慮だ」
金「ボクとしては、サソリさんの肩についてる歯型のほうが気になるけどね~」
銀「この船に…人食いエイリアンがいる…!?」
金「うーん、この場合どういう教育上の配慮をすべきか悩むなあ…」
各個室にシャワーもついてますが、みんな洗面器片手にやってきます。扇風機とか体重計もあるよ。