キュウレンジャー文まとめ1
幸せの運行
時間や場所を決めて示し合わせたことなどないし、わざわざ部屋を訪ねていったこともない。
廊下で彼の背中を見つけたとか。部屋に戻るタイミングが重なったとか、ちょうど部屋に入るところに出くわしたとか。必ずラッキーが声をかけてどちらかの部屋になだれ込む、以外のきっかけは今のところなかった。
部屋が近いからか、他のメンバーよりも遭遇率は高いかもしれない。
それでも想定外の出会いは、幸運の中でも最上級だとラッキーは思う。
「お、スティンガー」
今日は自分の部屋に入ろうとしたとき、彼が後ろを通り過ぎようとしたのを捕まえた。
「よっしゃラッキー!」
「人の腕をいきなり掴んでなにがラッキーだ」
スティンガーは眉を寄せて睨むが、それほど機嫌が悪そうでもない。気難しそうな彼の機嫌を損ねなかったのもラッキーといえる。
彼を連れて自分の部屋に入った。他に廊下を歩いている者がいたら、引きずり込んだように見えたかもしれないが。
ラッキーは大して力など込めてはいなかったし、部屋に入ってすぐに手を離した。しかしスティンガーは自分から手を振りほどかず、今も出ていく様子はない。どすんと勢いよく自分のベッドに腰を下ろすラッキーを半眼に見ながら、閉まったドアに寄りかかっただけだった。
起きてすぐに部屋を出て、よほどのことがないかぎり寝る時間まで戻らない。単に体を休めるだけの個室が、他人がいることで不思議と楽しい空間になる。
「今日は作戦延期になっちゃったけど、一日の最後にスティンガーに会えたからラッキー!」
Vサインを突き出してみせれば、呆れかえった嘆息が返ってきた。
「雑な帳尻合わせをするな。俺に会わなかったら、今日はアンラッキーで終わったのか?」
「うーん……?」
ラッキーは天井を仰いで少し考える。
「スパーダのシチュ―が美味かったから、やっぱラッキーな日だ」
二度目のため息。
自分だっておかわりしたくせに、とラッキーは思ったが口には出さないでおいた。
「結局、他人頼みか」
「まあな」
反論もせず笑い返したラッキーに、スティンガーはわずかに戸惑ったようだった。
だが彼の言うとおりだと、ラッキーは知っている。
スティンガーは他人と言葉を交わしたくない気分のとき、ラッキーとの不意の遭遇を避ける。反対に、今日のような日はわざと部屋の前で行き会うように仕組んだりもするようだ。だから、ラッキーが彼を捕まえられたとき、彼が不機嫌なことも部屋の前で拒まれることもまずない。本当の偶然でばったり会えたら、まちがいなく自分自身の運だが。
スパーダの料理が美味いのは彼がそう作ってくれるからで、スティンガーと二人で過ごせるのは彼が合わせてくれるから。
自分のところへ幸運を運んできてくれる誰かがいる、それ以上の幸運はない。
「ラッキーだろ、そういうの……」
笑顔でベッドに倒れる。ふわふわした気分のまま一日が終わるのもいいな、と思う。
だが、ジャケットを脱がずに寝てはいけなかったと思い出した。ランドリーだって一瞬で汚れや傷みを消してくれるわけじゃないんですよ、とラプターから朝食前に説教されたことがある。
「……客を呼んでおいて寝る気か」
低い声で呻ったスティンガーが、ジャケットを脱ぎながらこちらにやってきた。さすが、ラプターに怒られたことはないんだろうな……そう思っていると、彼はラッキーの脚のあいだにひざを置く。
「もてなす気はあったんだろ?」
「ん……」
それはたしかにそうなのだけれど。
今こうして同じ時間を過ごしている気分の良さを味わうだけというのも悪くはない。
悪くはないが、その手が頬に触れて指先がゆっくり唇をなぞっていくと、さすがにぼんやりしてはいられなくなる。直前まで忍び寄っていた眠気は吹き飛んで、体が次のアクションを考えはじめる。
「待った、ラプターに怒られる前に……」
「ラプター?」
あわててジャケットから腕を抜いて、部屋に備えつけの椅子に放り投げた。うまく背に引っかかって床に落ちなかったから「よっしゃラッキー!」と叫んだ横で、スティンガーがどうでもよさそうに自分のジャケットを投げた。
赤とオレンジのジャケットが重なるのを目の端で捉えながら、相手をベッドに押しつけ乗りかかる。もちろん抵抗されることも嫌な顔をされることもない。
「最後まで他人頼みかと思ったぞ」
こちらを見上げる顔が、かすかに皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「まさか」
自分でつかみ取れる幸運までなにもせず待っていたら、きっとなにも手に入らない。
同じ幸運を彼も感じていてほしいと思いながら、半開きの唇に噛みついた。
ラッキー参入時。
桃「ラッキーさんの個室は1番です」
赤「よっしゃラッキー!…って、他のみんなは?」
黄「ぼくは9番だよ。ハミィちゃんは7で、チャンプは5」
黒「ガルは3だな。わはは、ちょうど一つ飛びだ」
赤「えーっ、じゃあ俺4がいい!6か8でもいい!」
桃「部屋はキュータマの番号に割り当てられているので変更はできません」
赤「そうなのか…おっきな部屋でみんなで寝たら楽しいのに」
緑「異種族混合の雑魚寝とかちょーウケるんですけど(真顔)」
赤「まあいっか、空き部屋どんどん減らしていこうぜ!とりあえず2番のやつ早く見つけないとな!」
両隣がいるほうが安心できるらしいです。
部屋番号のルールは司令が決めたので意味はありません。この時2番は開かずの部屋でした。
ちなみに。
金「ボクが4でナーガが6ね。一人ずつ個室って反乱軍の船にしちゃ気が利いてる…」
銀「バランスと、離れた…チャンプ邪魔…」
金「わーかったわかった、今までどおりナーガが寝るまでボクついてるから。部屋だってそんな離れてるわけじゃないし、全然大丈夫だよ!だからいうこと聞いて、ね?」
黄「お母さん…?」
チャンプとばっちり。