べらぼう始まってますね。
美術は素人だけど浮世絵大好き、ニッケルです。
ドラマ感想ではなくただの雑談です。なぜなら観てないから……
江戸時代っていかにも時代劇の世界って感じであんまり興味がなくて、浮世絵もなんか絵柄がみんな同じ?っていうか、とにかくなんかよくわかんなくて、さらに日本美術なんてみんなそんなもんでしょ~?っていう侮りを持ってました。
解像度が、北斎の富士山!歌麿の美人絵!程度だったんですよね。
ところが。
大学生のとき、初めて浮世絵を「生で」見たんですよ。
ただ白抜きの線画だと思ってた鶴の羽が、エンボス(空摺り)で表現されててびっくりしました。浮世絵って確かに「手に取って間近で鑑賞する絵」だったんだなと。他にもラメ入りインク(雲母摺り)とか、同色を重ねてたりとか、版画の表現がものすっごい。一気にハマりました。
印刷や映像の技術も上がってきて、そのへんの細部を画面越しに見られるようにもなったんですが、やっぱり生で対面できる機会があれば出向きます。
美術史上にはいろんな種類の版画があるけど、浮世絵は木版であの多色刷りをやってるというのがすごい。
浮世絵というのは当世の風俗を描写している「流行り物」です。必然的に江戸文化にも触れることになるわけで、時代劇を観てないわりには江戸の知識がちょっとだけ身についたのですが。
まだ理解できてない部分がありましてね。
①版元(依頼)→②絵師(元絵)→③彫師(製版)→④摺師(印刷)→⑤版元(販売)
①と⑤が蔦屋の仕事。いわゆるアーティスト/クリエイターとしては②が有名で、③と④は職人という認識。
なんですが、気になるのは②と③のあいだの工程です。
元絵から、色別に版を分けて描いて、それを板に貼って彫っていきます。時には数十色にも及ぶ版を作る必要がある。その工程をやってるのは、絵師なのか彫師なのか。
色を決めたり効果を決めたり、版分けにはクリエイティブな要素も大きいと思うのですが、絵師が自分で一版ずつ描いてるのか、彫師がトレスしてるのか。とはいえコピー機もない時代ですから、彫師が模写するってこと? それって彫師の筆致じゃない? とか謎が多くてね。
ドラマになったら、そのへんを省略せずに全部やってくれるんじゃないか。細切れだって、一年もあれば全ての工程が映像化されるんじゃないか。
『光る君』だって、製本作業を丁寧に映してくれたし。
じゃあ、蔦屋重三郎なんか待ちに待った題材だね!と思うじゃないですか。
もちろんですよ、アダチ版画研究所の実演なんか見たいに決まってます。今でもそれはそうなんですけどね……
5話現在、全く観てないです。
江戸時代に対しては、やっぱり「時代劇の世界」って印象があって、なんかこう未だに心理的距離はあります。
あと、服にときめかない……個人的には直垂までなんだよな日本の装束って。
町人も武家もビジュアル的にあんまりテンション上がらないのは、江戸と距離を置いてる一要因ではある。
このへんは単なる好みだから仕方がない。
70年代ファッションはかっこよく見えるけど80年代リバイバルはやめてくれ、とかいうのも世代だと思うし。
それはさておき「吉原が舞台」というのが何よりきつい……
日本の異世界ファンタジーでは奴隷制度が肯定されがち、というのはよく聞きます。それと同じことを、江戸時代をテーマにした全ての作品に思ってしまうのです。吉原を肯定しがち。その残酷さも悲哀も「味」として消費しがち。
江戸時代の文化を形成する大きな要素として吉原は外せない、それはよく理解してるつもりなんですが。自分も、江戸の美術博学を楽しむときにそれを考えないようにして受け入れている部分があるから、正面から突きつけられると余計にきつい。
そもそも社会構造の問題なので、「大逆転」なんか存在しないわけじゃないですか。どういう流れでも、檻の中で小さな幸せや勝利を掴んでいくしかない。搾取されつづける閉塞感を勝手に感じてしまうんですよね。
江戸時代云々や映像や作劇の質がどうこうという前に、そういう展開がとても苦手でして……。かの『NHK大奥』なんか怖くて観られないんですよ。原作でさえ読むの苦しかったのに、実写で容赦なく作っちゃうなんて。
その『大奥』の制作陣が一年かけて吉原を描くというのだから、もう震え上がってしまいました。初回でさっそく負の側面が描写されていると聞くだけで、もう怖い。そのエネルギーを連ドラで一年間受け止めつづける根性はないです、ごめんなさい。
あとこれは別ベクトルの話なんですけど、初回放送後に「蔦重がカラッとしたキャラクターなので、虐げられていても悲壮感が薄い」という感想を見かけまして。全く同じ言葉を、陵辱系のBL作家が自分とこの受けに対して言ってたのを思い出しました。「かわいそうに見えないからかわいそうじゃない」という発想がけっこう怖くて私は引いてしまったんですが、そういう自己防衛的な鈍感さというのはフィクションを接種する上で必要なのかもしれない。
おもしろい(質が高い)という噂は聞きます。
大河ドラマは他のドラマとは規模も別次元ですから、何より全世代が観られるドラマですから、毎年そうであってほしい。
でも私が観なければならないということではないので。
よほどの版画制作描写があれば、NHKオンデマンドで観るかもしれないかもしれないけど、ちょっとリアタイは難しい。みんな、私のぶんまで楽しんでね。