ラザロ文まとめ

アニメ・マンガ【SS】,LAZARUSラザロ

Skellig

アクセルとダグ、左右曖昧。どの時点かはわからないけど仲良し。


 こちらに向けられた背中を眺めていて、ふと思ったことがそのまま口から出た。
「おまえ……綺麗だよな」
「はあ!?」
 振り向きざまに飛んでくる拳をよけた勢いで、ベッドから落ちた。這い上がろうとするアクセルを、ダグは冷たい目で睨みつける。
「ふざけた意味なら許さんぞ」
「どういう意味なら許すんだよ」
「揚げ足を取るな」
 怒ったのか拗ねたのか、再び背を向けて寝転がった彼の肌に、そっと手を押し当ててみた。間接照明の温かい光で照らされた背中にはなんの瑕疵もない。首元まで隠された体が、今ここでだけ晒されていた。
「いや……背中がさ。なんもなくてするっとしてて、綺麗だなって思っただけ」
「それは、褒めてるつもりなのか?」
 綺麗は褒め言葉だろう。でも刑務所で「綺麗」な顔をしていた男は、碌な目には遭わなかった。ダグが嫌がるのもそういうことか。
 アクセルは掌で彼の背をさすり、突き出た肩甲骨を包み込む。ダグはもうなにも言わなかった。
「ガキのころ、天使って背中に傷がないんだろうなって思ってて。落ちても背中の羽根がクッションになって……いやそもそも背中から落ちねえか、飛べるんだし。なんてことばっか、牧師の話も聞かずに考えてたなって」
 まだ憧れもあった。あの大きな羽根があれば、自分も飛べるのだと。とても幼い、ほんの一時だけだったが。
「教会に行く信心があったのか」
「そこなら、食いもんにありつけたからな」
「だと思った」
 彼は横になったまま肩をすくめ、それからぽつりと呟いた。
「肩甲骨は翼のなごり……か」
「翼……」
 なにかの詩だったか詞だったか。思い出せないが、だれかから聞いたことがあるような気はする。だが背中の突起が翼をもぎ取られた痕なら、こんなに美しくはないはず。それに、翼がなくたって自分は「飛べる」。人間は元から羽根なんかいらなかったということだ。
「おまえが天使じゃなくてよかったよ」
 でなければ、こうして後ろから抱きしめられないから。
 ピアスに口づけながら耳元に囁くと、強めの肘鉄を食らわされた。


実際は傷だらけでしょうよ、あんなバカアクションしてたら。

『肩胛骨は翼のなごり』デイヴィッド アーモンド, 山田順子訳, 創元推理文庫)