ラザロ文まとめ

アニメ・マンガ【SS】,LAZARUSラザロ

Words That We Couldn’t Say

アクセルとダグ、左右曖昧。8話後。ハグとちゅーだけ。


 その日、ダグは初めてアクセルの部屋を訪ねた。
 さっき貼ったばかりの絆創膏を剥がそうとしている男が、開口一番に尋ねてくる。
「クリスは」
「命に別状はない。今はエレイナがついてる」
 さすがに無事とは言えなかった。極地で監禁されて尋問を受けつづけた彼女に比べれば、あれだけ大暴れして骨にも筋にも異常がないアクセルは軽傷といっていい。それでも、今回ばかりは手当が必要だった。
「剥がすな、見せてみろ」
「俺はなんともねえよ……」
 下着一枚でベッドに座り込んでいる彼は、シーツにひざを乗せたダグが、頬のガーゼに触れてもとくに動じない。肩に渡した包帯に指をすべらせて、そのまま背中へ手を回す。
「おっ……」
 アクセルがなにか言う前に、両腕できつく抱きしめた。
「ぃって……」
「どこが痛む?」
 問いつつも腕に力を込める。肩も腰も、締めつけるように。アクセルは「いでででで」と大げさに呻いてじたばたと足掻いた。当然、少しも本気ではない。
「どこっておまえ……もう、全部だよ全部、眼鏡も当たってるし……」
 哀れがましい声を出しながら、ダグの背に腕を回して自らベッドに引き倒す。収まりのよい場所を探すように動いたその腕は、最終的に邪魔な髪を払って首の真後ろに落ちついた。
「……全部痛すぎて、わかんなくなっちまった」
「よかったじゃないか」
 生きるか死ぬかの場面も多い任務で、不思議と仲間のだれかを失うという想像はしなかった。互いの能力に対する無責任な信用と、それから自分を含めた全員への無関心。なにをしてもしなくても、リミットを過ぎたら全員死ぬ。生き延びても未来のことなどだれも考えていない。
 そんな諦念が、急ごしらえのチームの潤滑油だった。だがクリスの失踪は、それがただのポーズであることを自分たちに突きつけてきた。
 ダグはクレームがついた眼鏡をひたいに押し上げる。
「もし、クリスがおまえだったら……」
「助けはいらねえよ、自分で逃げられるし」
「いいや、行く。もう時間がないんだ。おまえが悠長に脱出するのを待ってられん」
 もちろんアクセルなら三日以内に行動を起こすだろう。しれっと一人で脱出して、かすり傷だけで口笛でも吹きながら戻ってくるにちがいない。
 それでも助けに向かわずにはいられないことを、今のダグはわかっていた。ハーシュを脅してでも「仲間」を取り戻すことに躊躇はできない。
「クリスも?」
「そうだ」
 尋ねる側も答える側も、欺瞞だと気づいている。しかしそれを暴かないことで、なんとか今までのポーズを保っていられる。
「俺は……おまえを助けにいくかな」
 アクセルはそう言って笑った。
「だって、惨めったらしく捕まってるとこを見にいかなきゃ損だろ。俺に助けられてどんなツラするかも拝まないとな」
 そういう男だということは知っている。安心と落胆が同時に襲ってきて、ダグはもう一度腕に力を込めた。
「心配するな、自力で脱出する」
「ムリすんなよ」
 じゃれるようにダグの頬へ顔をすり寄せてきたアクセルは、束ねた髪をいじりながら悪戯っぽく笑う。
「キスしてくれたら治るかも、痛いの」
「仲間が重体なんだぞ」
「俺らがキスしてクリスが死ぬのかよ」
 ダグはしみじみと嘆息を聞かせてから、「今夜中に治せよ」と唇を重ねてやった。遠慮はしたつもりだったが、アクセルのほうが深く口づけてきて無駄になる。
 口元の裂傷が開いたのか、血の味がした。


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