【SS】バンバとマスターブラック
最終回おつかれさま記念。
バンマスだけど例によって左右は曖昧。
戦マスサークルだと誰だよ万丈か!?ってなるのでとってもまぎらわしい。
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「……重い」
目の前にある憎たらしい顔を睨みつけ、バンバは呻いた。
古びたシングルベッドは一人でも充分とは言えないのに、なぜか長身の自分よりも大きな男に乗りかかられている。
「何してる」
両手首は押さえつけられ、のしかかっている体もたやすく振り落とせるほど軽くはない。しかも、小ばかにしたようなにやけ笑いつき。
「久しぶりに添い寝でもしてやろうかと思ってな」
「……夜這いのまちがいじゃないのか」
「言うようになったじゃないの、バンバちゃん」
広い世界へ旅立った弟の代わりに居座ったのは、大昔に袂を分ったはずの師。仕方なくトワのベッドを貸してやったのに、おとなしくしている気はないらしい。
「いいじゃないか、今は、『フリー』なんだって?」
「……なぜ?」
真上から覗き込んでくる顔に睨みを飛ばせば、彼は愉快そうに笑った。
「トワから聞いた。幼稚園の先生がどうとか言ってたが……それは別件だろ?」
鋭い指摘に思わず口ごもるが、彼は視線を外さずにこちらを見つめてくる。
「……『孫』のようなもの、だ」
直接血はつながっていないが、彼女の祖母とは情を交わした仲だった。それを偶然知ってからは他人とは思えず、それとなく目をかけている。その関係はトワにも話してはいない。
「そんなことだろうと思ったぜ」
渋々白状した弟子の眉間を、マスターは軽くつついた。その手を払いのけ、バンバはすかさず身を起こそうとする。
「おっと……」
互いに相手を取り押さえようと軽い取っ組み合いになり、今度はバンバが上になった。
乱れて目にかかった前髪をかき上げながら見下ろすと、マスターは目を細めて首元のボタンを自ら外す。
「今夜は、譲ってやるよ」
「……!」
相手のペースに飲まれたと気づくが、すでにその気になっている我が身を鎮めることは、少なくとも彼のいるこの住処ではできそうになかった。
町外れの小さな家は人間の知己から提供されたものだったが、ずっと外見の変わらない二人が同じ場所で暮らせるのは、せいぜい十年程度だ。ここも、そろそろ引き払う時期かと思っていた。
だがトワがいない今では……
「く、ぁあっ……」
ベッドが軋み、マスターがシーツに爪を立てて身をよじらせる。バンバが裸の胸をすり寄せると、互いのペンダントがぶつかって小さな音を立てた。そのわずかな金属音が、遠い記憶を呼び覚ます。衰えを見せない引き締まった体躯もあのころとまるで変わっていなくて、自分がまだ甘えた青二才でいていいとすら錯覚させる。
「あんた、全然変わらないな……っ」
「褒め言葉、ってことか、な……」
決して細くないその腰を押さえつけ、バンバは幾度も奥を穿った。
生真面目で村の娘も歯牙に掛けなかったバンバの、初めての相手はこの男だ。口づけの仕方から何もかも教わった。そして、いつしか他人と睦み合うことでしか一時の安寧を得られなくなってしまったのも、この男のせいだ。
「うっ……」
呻きながらも、彼はバンバではなくベッドに縋っている。自分が挑発しておいて。
根元まで一息に押し込んだ勢いで、突き出た喉仏に唇を押し当てる。ざらついたあごに、そして荒い息を吐き出す唇に。
「バン……」
「あんたは、いつもそうだ……」
濡れた唇をついばみながら、恨み言をぶちまける。
「いつも、俺だけがその気にさせられて……」
わけもわからず振り回されて、気づけば彼に護られていて。超えたつもりが、ずっと先にいて。
「バンバ……」
大きな手が両頬に当てられ、そして髪をかき上げた。泣きたくなるほどに懐かしい感触だった。
「おまえは、変わったよ……いい男になった」
「……っ!」
彼の首元に顔をうずめ、その体を抱きしめる。優しい手が頭を撫でていき、そして背中に回された。
シャツを羽織ったバンバは、枕に頭をあずけたままのマスターに背を向けたまま尋ねた。
「いつまでここにいる気だ」
「かわいい弟子が、独り立ちするまで」
「俺はとっくに……」
まだ未熟者扱いする気かと憤ってふり向くと、笑っていない瞳と目が合った。
「俺も、まだおまえをちゃんと送り出せていないままなんだ」
やむをえないとはいえ、裏切り者として弟子の心に傷を残し姿を消した、あの日から。
「……好きにしろ」
二人の時は、やっと動き出したばかりだ。
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20年ぶりにー! この御方でエロ書きましたー!!(赤炎リバでした)