コウ/カナロ

2019_リュウソウジャー,[R18]

ほしのいろ

 アスナの屋敷はいつも子供たちの声と活気に満ちている。
 同じ種族の次世代がこれほどいるのだという希望は、カナロの心を明るくしてくれた。
「海のリュウソウ族は、泡になって消えちゃうってほんとう?」
 一人の少女が、遠慮がちに尋ねてくる。空がだんだんと暖かな色に染まりはじめているのを眺めながら、カナロは子供たちの好奇心に応えてやっていた。素朴な質問に、ときには噴き出しそうになりながら。
「それは人間が作ったおとぎ話だ。海の一族だってきみたちと同じくらい……いや、たぶん海のほうが環境の変化が少ないぶん、長生きのはずだ」
「へえ、そうなんだ」
 感心したように相槌を打ったのは、彼らの後ろで話を聞いていたコウだった。
「カナロはおれより長生きなのか」
「コウはおれより若いだろう」
 言い返すが、二人とも寿命が尽きるにはまだ先が長い。現実感のなさに、子供たちがどっと笑った。
「海からも、あのいちばんに光る星は見える?」
 やんちゃな少年が、立ち上がって空を指した。
「あの金色の……」
「ちがうよ、赤だよ」
 別の子が横から口を挟む。暮れゆく空にひときわ明るく輝いているその星は、たしかに金にも赤にも見える。カナロを置きざりにして始まった他愛もない議論に、正解などない。
「おれは金だと思うなあ」
 コウがカナロの隣に座った。何気なく置かれた手の先が触れ合う。素知らぬ顔をして自分も意見を述べた。
「先陣を切るのは、赤に決まっている」
 二人は笑い合ってこっそり手を繋ぎ、煌めく明星を眺めていた。

(星空ワードパレット:金星「いちばん」「繋ぐ」「泡」)

深海の褥

 海の底は、静寂に支配された暗闇だと思っていた。
「風の音がするね」
「海流だ」
「星が光ってる」
「光る魚やクラゲも多い」
 カナロは愉快そうに笑って、夜光貝のグラスを差し出してきた。コウも笑って、しかしおそるおそるその杯に口をつける。なじんだ味にほっと息をついた。自分が土産に持ってきた酒だ。
「オトちゃんいなくて、さびしくない?」
「今はおまえがいる」
「そっか」
 グラスを返して、ベッドに倒れ込む。騎士竜のいない空虚さは、二人とも同じだ。だからこそこうして寄り添っているのだろう。
 地上の花嫁を迎え入れるはずだった寝所は、陸のそれとなんら変わらない。薄暗くて、風が吹く音が聞こえ、窓から星が見える。そして、服を着ていなくても寒くない。
 シャツを羽織っただけのカナロをちらと見て、つい苦笑した。
「ごめん……」
 何がと問う彼の首筋を指さしてそのまま触れる。シャツのあいだから見える日焼けしていない肌に、紅い痕が点々と残っている。
「こんなにつけちゃって……」
 夢中になっていた証を星座のようになぞっていくと、カナロは言葉に詰まったときの癖で眉を寄せたが、すっと手を伸べてコウの胸元に押し当てた。
「おれのほうこそ……」
 自分では見えないけれど、同じようになっているのは想像がつく。
「襟では隠れないかもな」
 そう言いながら同じ場所に再び唇を寄せてくる頭を、笑いながら抱え込んだ。
「じゃあ、消えるまでここにいるよ」
「消えなかったら、ずっといるのか」
 そう囁くカナロの息はすでに熱く、コウも思わず相手に乗りかかって勢いのまま唇を重ねる。
 他愛もないおしゃべりはそこで終わり、二人は深海よりもさらに深い快楽へと身を沈めていった。
 風が鳴る。星が瞬く。
 海の底は思っていた以上に情熱的で、退屈しそうにない。

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