晴人/ユウゴ

2012_仮面ライダーウィザード,[!],[R18]

「フェニックスが倒されずにユウゴとして戻ってきたら」というパラレル設定です。
しかも前に書いたSSの自分設定を使ってます。
どんな捏造でもアクロバティック妄想でもOK!という方のみどうぞ。


青年はユウゴの手を取り、大きな石のついた指輪を震える指に嵌めた。
その指輪をどこかで見たことがある気がしたが、どうしても思い出せなかった。

燃える花

「どうしたんだ、心配してたんだぞ!!」
花屋の店長が、喜びと驚きの混じった顔で出迎えてくれた。
自分ではなにひとつ覚えていないが一年近くも行方不明だったらしい。住んでいた部屋は空っぽで、友人や遠方の家族の支援でなんとか生活を始めることができた。
失った記憶と、それから全く機能しなくなっていた味覚に戸惑いながらも、ユウゴは少しずつ、花に囲まれた日常を取り戻していった。

だがそれは唐突にやってきた。

鉢が割れる音が店内に響く。
店長が怪我はないかと駆け寄ったが、ユウゴは謝ることさえ忘れて、青ざめた顔で店の裏へと走っていった。
裏口から外へ飛び出し、壁に寄りかかる。
「なんだ今の……」
手がすべって落としたわけではない。
自ら床に叩きつけていた。不意に理由のない怒りがわいてきて、衝動のまま、持っていた鉢にその感情をぶつけてしまった。たしかに自分がやったのに、一瞬前の感情がまるで理解できない。
混乱しながら、それでも心を和ませてくれる花に目をやる。バケツの中に咲き始めのヒナギクが一束。
震える手で、ユウゴは花を取ろうとした。
「うわ……っ!」
可憐なヒナギクが一瞬にして燃え上がり、灰となってバケツの水を濁らせる。
なにが起きたのか、今度こそすぐには飲み込めなかった。
「どうなってんだよ……」
手は焼けていない。だが火はたしかにユウゴの手から出た。
「なんだよこれ……っ!」
だれも知らない空白の時間。味を感じなくなった舌。身体の中の炎……自分になにかが起こっているのに、どうにもできない。
目の前が真っ暗になって地面にひざをつく。
「俺、どうなっちまったんだよ……」
呟きに答えるかのようなタイミングで、表通りからバイクのエンジン音が聞こえる。
気にも留めなかったが、近づいてくる足音には顔を上げた。店長だったら、なんと説明すればいいのか。いや、説明したところでどうなるわけでもない。もう辞めるしかないだろう……
うろたえるユウゴの前に飛び出してきたのは、見知らぬ青年だった。
「フェニックス……」
ユウゴを見て、彼はひどく驚いた顔でなにかを呟いた。
会ったことはないはずなのに、ずっと彼を待っていた気がして、そんな自分に動揺する。
「だれだ!」
「おまえ……」
彼は、ユウゴが自分を知らないことに驚いているようだった。狼狽と混乱でひどく腹が立って、彼に向かって怒鳴っていた。
「俺を知ってんのか!? 俺の身体がこうなっちまったのはおまえのせいか!? なんで俺がこんな……」
新しい生活を始めたときの前向きな気持ちも消え失せている。
ユウゴは今、絶望の手前に立っていた。
青年は暫し呆然とユウゴを見下ろしていたが、やがてなにかを悟ったようにうなずき、ユウゴの前に跪いた。
「だれだかわかんねえけど、俺に近づくな!」
身を引いた拍子に尻餅をついたユウゴに、彼は迷わず身を乗り出す。
「だれかって訊いたな。おれは、おまえの最後の希望だ」
告げられた言葉は、全ての疑念を振り払う力を持っていた。
「手を出して」
今度は花ではなく人間を燃やしてしまうのではないかとためらうユウゴの手を、彼は優しく持ち上げ、指輪を取り出す。大きな石のついた指輪が自分の中指に嵌められるのを、ユウゴはただ見つめていた。
指輪を嵌めたユウゴの手が、青年のベルトの前へかざされる。
オレンジ色の石が瞬いた。
「あ……」
全身を駆けめぐっていた荒々しい炎が、指輪から流れ出ていくのを感じる。身体が、それよりも心が、苦悩から解き放たれるように鎮まっていく。
ぱき、と音がして、指輪の石に亀裂が入った。
青年が険しい表情で、壊れた指輪をユウゴの指から抜く。
「魔力が強すぎるのか……」
言葉の意味を尋ねようとしたとき、彼がユウゴの頬に触れた。ひんやりとして、なめらかで心地よい手だった。
「ちょっとだけ我慢してくれ」
とっさに払いのけようとした腕を掴まれて、首を抱え込まれる。
「おまえが教えたんだからな……」
不思議な呟きとともに、有無を言わせず唇が重なり、冷たい舌がすべり込んできた。
「ん……っ」
長い腕を振りほどこうとするが、見た目によらず青年の力は強かった。ユウゴは舌を絡め取られながら、先ほどの指輪と同じであることに気づいた。指輪でもベルトでもなく彼自身が、忌まわしい熱を吸いとってくれている。
ユウゴは抵抗をやめ、祈る思いで彼の口づけに応えた。
「……もうだいじょうぶ」
青年は指先でユウゴの口元を拭いながら、小さく息をついた。
身体の奥が燃えるような不快感はもう消えている。自分の手を見つめたが、炎が出る気配はない。
「今の……」
壊れた指輪をポケットに突っ込んで、青年は立ち上がる。なんの余韻も残さずに。
「行き場のない魔力がたまってたんだ。でも全部おれがもらった。だから、今はもう普通の人間と同じだよ」
「魔力って……あんた、なんなんだ……」
「魔法使い」
なにもわかっていないのは変わらなくて、彼が口にする言葉もいちいち信じがたい。それでも状況が、自分の本能が、全て事実だと告げていた。
初めてではない。なぜだかそう感じた。彼と会うのも、この行為も。
「指輪の……魔法使い……」
その言葉を聞いた青年の表情が、一瞬硬くなった気がした。しかしすぐに曖昧な笑顔で、手を差し出してくる。
「操真晴人だ。そっちは?」
「藤田……雄吾」
華奢な手が、苦もなくユウゴを助け起こした。


おはようございます、「趣味の園ゲイ」ナビゲーターのMカミMサシです。
今日ご紹介する花はこちら! ヒナギクです。
ヨーロッパ原産の多年草で、3月から5月にかけて可憐な花を咲かせます。
ちなみに花言葉は「希望」。「無邪気」「純潔」などといったイメージもあります。今後、このサイトでのフェニックスSSでは重要なワードになるかもしれませんね。
ちなみにインターネットで画像検索しますと、アニメキャラしか出てきませんのでご注意ください☆

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