晴人/ユウゴ

2012_仮面ライダーウィザード,[!],[R18]


二人の世界を彩るお題
https://shindanmaker.com/717789
「流れ星」
「原石」
「守りたいもの」

あなたがわたしを甦らせる(ローズマリー)
操真晴人 22歳 175cm
藤田ユウゴ 23歳 180cm


1641字(50分)

工房では、職人が朝早くから石と対峙している。
あまりに根を詰めているようだったからそれとなく様子を尋ねると、輪島はふり向いて愛嬌のある笑顔を見せた。
「そろそろ仕上がるから」
「うん、楽しみにしてる」
それから、店番をしている少女にも声をかける。彼女は小さく微笑み、ゆっくり目を閉じた。
「そうだな……そんな時間だ」
晴人は指輪を取り出す。目を閉じ呼吸もしていない彼女は、人形にしか見えず不安になるから。
事実、彼女は人形だった。生きてはいない。
あのフジタユウゴと同じだ。
目を開けたコヨミは静かに深呼吸をして、晴人をまっすぐ見上げた。
「晴人」
「ん?」
「ときどき、どこへ行ってるの」
不意の質問に、どう答えようかと迷う。目を泳がせた先には、小さな鉢植えがあった。昨日までなかったものだ。
「……これは?」
話を逸らそうと思ったわけではなく、純粋な興味だった。
「ハーブよ。殺風景って言われたから、植物を置いてみようと思って」
そう言ったのはあの二人のうちどちらかだろう。さまざまな石が煌めくこの店内を殺風景とは思わないが、たしかに生きている実感のあるものは少ない。極端な話、店主くらいだ。
「うん……いい香りだ」
その香りと結びつく記憶があった。
「ちょっと出かけてくる」
バイクのキーがポケットに入っていることを確かめながら、店を出ていこうとすると、奥から輪島が声をかけてきた。
「待ちなさい、できたよ」
「おっ……」
受け取った指輪の石は、原石のときには黒にしか見えなかったのに、深い紫色をしていた。
礼を言って、それでも外出の予定は変えない晴人に苛立ったのか、コヨミが椅子から立ち上がる。
「ねえ、晴人……」
なにか言いたげな彼女を制するように、笑ってみせた。
「おれの希望をたしかめに」

「この香りだ」
ベランダに出てプランターを覗き込んだ晴人はそう言って笑った。
花屋の部屋には売れ残りの花がたくさんあって、それでも彼はうれしいと言う。生きているものに囲まれているのが、たまらなくうれしいのだと。
「昔は、枯れると悲しかったけどさ。今は羨ましいよな」
窓枠にもたれて晴人の後ろからそう言う彼を、思わずふり向いた。ユウゴはあきらめたような笑みを浮かべている。
「それ、ローズマリー。ハーブの中ではメジャーどころだと思うけど?」
「へえ」
メジャーといわれても、聞いたことがあるようなというくらいだ。さっきコヨミが教えてくれればよかったのに。
「料理とか、薬とか、魔除けにも使うな。花言葉も効能寄りで……」
「こんな葉っぱにも花言葉ってあるんだ」
「花が咲くんだよ」
愉快そうにひざで背中を小突かれ、しゃがんでいた晴人は倒れそうになって立ち上がる。
「魔除けっていえば……」
宝石にも石言葉があるという。晴人はほとんど知らないけれど、魔宝石に関しては名前と用途が一致しているからわかりやすい。
「これ試すの忘れてた」
先ほど受け取った指輪を取り出す。ただし名前を聞くのは忘れてしまった。
「どんな魔法が出るかわかんないから、覚悟しとけよ……」
「なんだよそれ」
不思議そうな顔の前で指輪を嵌め、ベルトにかざす。
『シャワー』
まずい、雨でも降らせるのか……と思って晴れた夜空を見上げた。つられて顔を上げたユウゴが、感嘆の声を洩らす。
晴人も息を止めていた。
「すげえ……」
降り注いでいたのは雨ではなく、数え切れない流れ星。
そんな予報は出ていないし、なにより都会の明るさでこんなにたくさんの星が見えるはずもない。
二人はアパートのベランダで、言葉もなく流星雨を眺めていた。
「……なにに使えばいいんだろ」
「いいじゃねえか、そういうのも」
星もまばらな夜空に戻ってから、晴人は新しい指輪を困惑して見つめる。ユウゴは笑いながら部屋に戻ろうとしていた。
「そうだ、ローズマリーの花言葉、教えてもらう前だった」
ユウゴの背中を追って部屋に入る。明るい部屋の現実感に、ほっと一息つきかけた魔法使いだったが。
「『あなたがわたしを甦らせる』……」
肩越しにこちらを見たユウゴの目に、炎がちらついた。

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