ライダーのライター。
今年のライダーはプロデューサーもメインライターも女性だと聞いて、べつになにも変わらないだろうなあと思いつつも、その意味についてちょっと考えてしまいました。
その手の話は聞くだけでイライラするって人はやめといてくださいね。
ま、それを教えてくれたお友だちが、小林脚本がダメって人は彼女とジェンダー感覚がちがうからなんだよ、と言っててなるほどと思ったので便乗してみただけなんですけど。
イノウエ派かヤスコ派か、という乱暴な区分もいいかげん古くさい感じになってきたなとは思うけど（この一年どちらでもないベテランが完璧な物語を描いた事実を顧みると）、さらに乱暴にまとめてしまうなら、どちらのジェンダー感覚がより受け入れ難いかという消去法に基づいた区分のような気がしています。
個人的には、小林脚本は言うほど女性的だとは思わない。男同士の関係に夢を見てるとか女を描くのはヘタだとかもあんまり感じない。デフォルメはしてあってもデッサンは崩れてない、ていう感じ。多少王道すぎるきらいはあるけど、それなりに安定してるってことだと思う。
ホモソーシャリティの賛美と隠しきれないミソジニーというなら、むしろ井上脚本にこそ感じる。ただ、どんな絵柄も無視して俺絵にしちゃって線も雑なのに、理屈じゃなく惹きつけられる御大の魅力ってのも否定する気はない。あ、冨樫義博と同じ引き出しって言えばわかる？(笑)
つまりそう受け止めること自体が私のジェンダー感覚だってことで、そこにいいも悪いもないわけです。嗜好っていうか感覚の問題だから。
伝統的な特撮ヒーローって、基本的にはヒロイズムとホモソーシャリティの二本柱で成立していて、それ自体が視聴者にその感覚を植えつける再生産装置なのだけど、前者を意図的に崩そうとしたのがイノウエ御大、後者を無意識的に崩してるのがヤスコにゃんなのだと思うのです。
小林脚本に一貫して（話や作品によってじゃなく）もの足りなさを感じつづけている人は、それだけヒーローに古典的男性性を求めている（＝ヒーローにジェンダー的革新を求めてはいない）と見ることができる。
逆にそこが鼻についていた視聴者にしてみたら、ヒロイズムはそのままにニュートラルな視点を持ち込んだヤスコ話に心地よさや痛快さを感じるのは当然じゃないでしょうか。
もちろん脚本家はスタッフの一人に過ぎないわけで、作品そのもののジェンダー観とは別物なんだけど、まあストーリーを作品の軸と見るなら、そういう責任のなすりつけ方もあるかなと(笑)。
原作アニメとかとちがって物語の土台があるわけじゃなく、一年間撮って出しながら人気や販促しだいでどんどんルートを変えていくっていう作りの作品だからこそともいえますよね。他のスタッフが同じなのに、脚本家が交代しただけで話がすごくおもしろくなったり逆に作品自体がめちゃくちゃになったりっていうのも多いし。同じヒーローでも、撮り終わってから出すという光の国やタカトミ枠ではあんまり聞かないから。
噂に聞いただけなのでソースは知らないんですけど、キバのラストは皆殺しエンドになるはずだったのを武Pが御大に頼み込んでハッピーエンドにしてもらったんだとか。ヒロイズムやヒューマニズムの否定がイノウエ的美学だと仮定すると、真逆の方向転換ってことになりますよね。だって名護さんなんかあきらかに結婚式来る途中で刺されて殺されるために一年生きてたとしか思えないじゃん！(笑)
それとは別に勝手な想像だけど、電王のラストは純粋にその後の半永久的展開のためですよね。物語として考えたらイマジンたちはいなくなるのがきれいな終わり方だと思うし、ヤスコにゃんならそうすると思うもの。タイムや龍騎やシンケンの（カップリング的不満はさておき）「戦いが終わって主人公が一人残される」卒業式っぽいラストは、ここまで畳みかけられるとヤスコ的美学なのかなと思ってしまいます。
まあなにが言いたいかっていうと、Pが頼み込むほどにライダーのライター（御大だけかもしれないけど）は物語の舵を握ってるんだなってのと、それでも商業展開には勝てないんだなってことです。
で、そんな行き先不明のジェットコースターに慣れきっていた私たちが動揺するほど安定したダブルっていうのは、たぶん最初からゴールが決まってたんでしょうね。ふり返ってみるとたしかに、人気や売上云々でブレる物語じゃありませんでした。
オーズはたしかに新しいけど、ちょっとだけ平成ライダーの匂いがします。要素が多すぎてゴールが見えない(笑)。
最初の話に戻ると、アンチヒーローではないニュートラルな感覚のPとライターが「平成ライダー的」な世界観で、どんなルートを走るのか。期待半分不安半分ってとこです。もちろん信頼はしてるけど、やっぱりそれだけで走ってるわけじゃないからさ……
少なくとも、冬の映画は、ダブル側・オーズ側どちらが書いてもちゃんと成立しそうな気がします。両方安定してるっていいよね！（拳握りしめつつ）
久しぶりにちょっと難しい言葉使ったら疲れました(笑)。
おまえそれちがうよ、みたいのあったらコメントお願いします。