【SS】ルパパト「クリスマス2」
サイト的には魁透なんで、そういうパートも。
透真が優しいです(内容説明)。
ところであいつ咲也のこと先輩って言ってたから、実はそんなに黒歴史と思ってないんじゃないのかレオタード。
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酔いつぶれた咲也を、つかさとノエルが担ぐようにして帰っていき、いつもより楽しげにしゃべっていた初美花は、後かたづけの最中も大きなあくびを連発するから寝室へ追いやった。
ほとんど手伝いもしていない、当然ながらしらふの魁利は、カウンター席でつまみのナッツをまだかじっている。
一通りの片づけを終え、透真はグラスを持ってカウンターの外に出た。
「主賓が来なくて残念だったな」
「べっつに。あの緑のが落ち込んでたから気ぃ遣ってやっただけ」
落胆していたことを認めたくないのか、自分の本心に気づいていないのか。聡い彼が自覚していないとは思えないが。
「それよりさ、つかささんになんかプレゼント渡してた? なんで?」
つかさにプレゼント……一瞬なんのことかと思ったが、帰りがけに渡したランチボックスのことだと気づく。
「料理の残りだ。同僚がまだ職場にいるだろうから、差し入れに持っていくと言われた」
「……へえ」
結局圭一郎の話題に戻ってしまったせいか、魁利は頬杖をついて顔を背ける。
気を引くように、カウンターにワイングラスを二つ並べた。振り返った魁利が目を丸くしてこちらを見上げた。
「つき合え」
「いいのかよ」
「少しだけな」
片方を魁利に勧め、「おつかれ」とグラスをぶつけ合う。くいと飲んだ魁利は、すぐ顔をしかめた。
「ジュースじゃん」
「少しは入ってる」
「酒じゃねえよこんなの」
期待していたからか、かなり不満げな表情になっている。
「じゃあ追加だ」
彼の細いあごを持ち上げて、身をかがめ唇を重ねた。魁利は迷わず、透真の舌からワインの味をさらおうと挑んでくる。息が切れるまで、二人は静かに水音を立てていた。
「……これで我慢しろ」
顔を上げ、指先で口元を拭う透真に、魁利はわずかに眉を寄せ尋ねる。
「酔ってんの?」
普段ならジュースで割っても酒を飲むことなど許してはいない。店内で透真から誘うこともめったにない。魁利が面食らうのもわかる。
「かもな」
たしかに、酔っているのかもしれない。気が沈んでいるときはいくら飲んでも全く酔えないが、今日はよく笑ったから。自分の顔に赤みが差しているであろうことは、鏡を見なくても想像はつく。
だが魁利のほうは、心から楽しんでいるようには見えなかった。取り繕ったつもりでも、「圭一郎は来ない」と告げられてから目に見えてテンションが下がっていく姿は、どうしても気にかかって仕方がなかった。
なぜ魁利がそこまで圭一郎になつくのか、透真には未だに理解できないでいる。彼にとってあつかいやすくも話しやすくもなさそうなのに、なにかを求めるように、圭一郎に近づいていく。直接的な情報ではなくて、魁利にだけ必要ななにかを。
濡れたまま半開きになっている赤い唇を、ゆっくりなぞる。魁利はまぶたをゆっくりと下ろし、透真に触れられるにまかせていた。酔っぱらいにつき合ってやっている、といった風情で。
「気分じゃないか?」
「や……」
彼は目を閉じたまま少し考え込むように息を止め、それから長い睫毛を上げて椅子から立ち上がる。
「ちょー気分」
にやっと笑って抱きついてくる魁利の体を受け止めた。
子供だましの酒はともかく、極上の料理でも、激しい行為でも、透真は決して魁利を満たせない。とうの昔に認めて受け入れてはいるが、以前はなんとも思わなかったその事実が、近ごろは妙に歯がゆく、苦しくもある。
圭一郎なら、満たせるのだろうか。その存在だけで魁利の心を晴らすことも曇らすこともできる彼なら。
だがあいにく今夜は……。
「クリスマスなのに、サンタは来ない、か……」
冗談めかして呟くと、魁利が喉の奥で笑う。
「オレ、いい子じゃねえもん」
「それもそうだ」
快盗にプレゼントは届かない。求めるものは自力で手に入れるしかない。
聖夜の奇跡などには頼っていられないのだ。
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圭一郎に差し入れ持っていったつかさ先輩とのドシリアスなやりとりとかも妄想したんですけど、たぶんそれは年明けに本編でやってくれるので……
透真は魁利を圭一郎のところに行かせまいとするのか、圭一郎に魁利を託そうとするのか、クライマックスに関わってきてほしい要素です。
その前に楽しい女装だけどね!!