【SS】由利と等々力「渇望」
とどゆりエロ。
実はちゃんと書いたのは初めてかも。
由利先生は受けでもガンガン攻めてくるので、こっちが力尽きました。
疲れるから今後はゆりとどにしよう(?)
あいかわらずノーテンキなエロです。
「渇望」
五十を過ぎてなお、その肉体には衰えが見えない。
若いころは鋭かった体が、今は重厚な印象を纏っている。しかし余計な贅肉などとは無縁だった。白いシャツが無残に腕へまとわりついていて、浅黒い肌を際立たせているのも変わらない。
逞しい胸が汗ばんで上下する光景に、知らず息を飲んでいた。
それなりにいかつい男たちに囲まれた職場にいながら、等々力を熱くするのはただ一人、この男だけだ。
ともすれば絡みついてくる頑丈な腕を、余計な悪戯ができないようにシーツへと押しつけ、その首筋に噛みついた。由利が機嫌の悪い猫のように唸る。タイで隠れるからいいだろうと笑い、等々力はその下に吸い痕を残した。男所帯の警察時代ならともかく、今はだれに見られることもないのだから。
「とど、」
どこか焦れたような呼びかけをあえて無視して、女とはちがう旨の膨らみを撫でながら口づける場所を下げていった。
胸の先端に唇が触れ、そのまま吸い上げる。「やめろ」とは言うが、その声は艶っぽくかすれ、舌先で転がすだけで鼓動が速くなるのがわかり、口元だけで笑みを浮かべた。由利の弱いところならすべて知っている。元々の性質でなく、等々力の愛撫に「馴れて」いった経緯も。
割れた腹筋をくすぐり、突き出た腰骨に噛みつきながら、ひざを押し広げた。わずかな抵抗は反射のようなものだ。
下着は脱がせず、ひざに口づける。そしてゆっくり内腿にも痕跡を残していった。この身を包む黒の下に、無数の淫らな痕が存在することを知っているのは自分だけなのだという優越感に酔いしれながら。
「……っ」
抗議か、誘惑か、由利は等々力の髪をかきまわしては静かに喘ぐ。
横目で窺うと、下着の中にあるものははっきりわかるほど形を変えていて、解放を切望していた。それを放置できるほど等々力は冷淡でもなく、つまりはつい手が出る。
「んぅっ……」
布地の上から指で押さえつけるようにこすり上げれば、髪を掴む力が強くなる。唇を寄せている腿にも力が入り、硬くなったその付け根に今度は歯型をつけた。独占欲の顕示にも見えるこんな真似は、他のだれにもしたことがない。だれが確かめるわけでもないのに……。
「いてて、抜ける」
さすがに髪束を強く引っぱられて降参し、改めて正面から抱きついた。
昂ぶっている中心同士がぶつかり、互いに押しつけ合う。荒い息を吐いている口元を舐め上げると、相手から唇を重ねてきた。舌の根まで絡ませて、息がつづかなくなるまで幾度も幾度も……まるで、今夜が最後かのような必死さで。
そう頻繁に肌を重ねるわけではないとはいえ、毎回これほど没頭してしまう理由が等々力にはわからない。もしかしたら由利は知っているのかもしれないが、なんでもご教示願いたいというわけでもなかった。
「あ、」
下着をずらされ、生々しい熱が直に触れて敏感な部分を抉る。
たまらずに、枕元に散らばるパッケージを手探りで掴んだ。シーツの上に余計なものが投げ置かれるのを由利は好まなかったが、等々力としてはできることなら、手を伸ばせば届くところにすべて置いておきたかった。
眼鏡も煙草もコンドームも、愛し合う相手も。
「由利、もう」
「ああ……」
紅い痣を肌に散らした男は、自ら脚を開く。なんの羞恥も躊躇もないようでいて、その目は伏せられたまま決してこちらを見ない。
必要ないと知りながらも入口に指を這わせると、いつもどおりに濡れた感触があった。わかっているのに思わず唾を飲む。
自分が抱くときには等々力に事前の準備などさせないのに、抱かれるときにはすでに自分で支度を済ませている。どんな顔をして、どんな姿で、なにを考えながら、一人で受け入れる準備をしているのだろうといつも気になるが、尋ねたところで無視されるだけにちがいない。
ただ、こちらがあらぬ妄想に身を熱くするだけだ。
ひざを持ち上げて長い脚を自分の肩に乗せれば、ふっと息を吐いて身がまえるのがわかった。こんなときでも呼吸を整えようとする姿には苦笑するしかない。もう少し、我を忘れてくれてもよさそうなものを。
「ぅうっ……」
繋がる瞬間に声を上げるのはいつも等々力ばかりで、由利は眉を寄せて喉の奥で嬌声を押しとどめる。多少手荒に突き上げても、みじめな悲鳴を上げたりはしない。
等々力の腹をこする屹立は猛々しく、催促しているかのようだった。誘い込まれるがままに、より深く繋がろうと奥を目指す。若い時分のように力まかせの勢いで突っ走ったりはしないが、それでも激しくぶつかり合う肌からは汗が散った。
ふと先の見えた終わりが惜しくなって、責めの手を緩める。
「なあ、由利」
返事の代わりに、濡れた目がこちらへと向けられた。その目はなぜか等々力を口ごもらせる力を持っていた。
「……気持ちいいか?」
やっと喉から出た文句は、ほんとうに言いたかった言葉とはかけ離れていた。気まずさを隠すために彼の首筋へ顔をうずめれば、由利の手があやすように髪へと差し入れられた。
「快楽のない行為に望んで耽る趣味はない」
一息に答えた彼は、ふっと息を吐いて呆れた声でつけ加える。
「……と、何度言わせる気だ」
ということは、以前にもこの問答をしているということだ。それも一回や二回ではないらしい。
「そうだっけ」
たぶん、そのたびに訊きたいことはちがうのだろうけれど、いつも適切な問いは出てこない。だから何度も空虚な質問をしては彼を呆れさせる。
「なあ、由利」
火照った耳を甘く噛んで囁いた。
どうせ、的を射た問いかけなどできはしないのだ。同じ言葉が出てくることもあるだろう。だったら、なにを言ってもさして変わらない。
「……おまえの中で、イっていいか?」
後始末をぞんざいに済ませて裸でベッドに転がると、起き上がった由利が未開封のパッケージを手にした。
「俺、もうそんな体力ないよ」
それを横目にしながら言ってやるが、彼は口角を上げて等々力にのしかかってくる。
「心配するな。勝手にやる」
「おい……」
あわてて身を起こしかけたところへ、急所に指を這わされ再び倒れ込んでしまった。
「勝手にって……」
「そのまま寝ていろ。『おれの中で』いかせてやる」
無骨な指が器用に性感を刺激し、一仕事終えたばかりのそれに再び熱が集まっていく。由利は満足そうに唇を湿しながら、音を立ててその先端に口づけてみせた。
「ぅあっ」
こうなると拒否権はない。文字通り精根尽きはてるまで搾り取られるのだ。等々力の弱点を知り尽くしている彼は、いともたやすく等々力の体を「その気」にさせてしまう。等々力が明日動けなくなったところで、自分にはなんの関わりもないとばかりに。
五十を過ぎてその欲望は衰えるどころか、盛んになっている気さえする。
等々力は思わず両手で顔を覆い、「うええ」と呻いた。
攻めが「うええ」って言うほうのBL。