【SS】コウとカナロ「ザッハトルテ」

最初に言っておく! チョコケーキは出ない!!

カナコウエロです。
いちおうリクなんですが、べつに左右もレイティングも指定はなかったので個人的なチャレンジです。
人間じゃなければゴムなしでもいいという俺ルールで失礼します。なんかあれだ、大丈夫なんだよイロイロ。

カナロの全裸を書くのは初めてだったので、勢いでヒレとかウロコとかつけようとして思いとどまりました。
コウとかバンバとかは脱ぐからあんまり人外パーツつけようって発想がないんですけど、ガードが堅いとつい考えてしまいます。危ない。

というかそもそも、コウとカナロで射精を伴う性描写が初でした。想像以上に難関だった。
……10本以上も書いたのに!?

【ザッハトルテ】「苦しい」「舌の上で」「真夜中」
リュウソウジャー:カナコウ

香炉から甘い煙が立ち上り、暗い部屋に満ちる。海にはないその香りのせいもあってか、今夜は高揚感がまるで違っていた。
衝動を抑えることなく相手をかき抱きながら、首筋に食い込む牙を感じてふと身震いする。
「コウ……苦しいのか」
背中を撫でながら囁きかけると、彼は息継ぎをするように天井へ向かって大きく口を開けた。
「なに、が……っ?」
返事はほとんど上の空で、力強い腕で引き寄せられる。爪が肩甲骨の上を引っ掻いて皮膚を抉った気がした。
彼らしくない手荒さだと思いながらも、誘い込まれるままに腰を突き上げた。耳元で喉を空気のすり抜ける音が鳴らされ、そしてまた肩口に噛みつかれる。恐怖とも快感ともつかない感覚が幾度もカナロを襲う。
「ぁ、あ、コウ……」
慄きながらも、快楽を貪る欲望は止められない。
絡みついてくる手脚以上に強く締めつける内側がたまらなく熱くて、なけなしの理性や自制はとっくに意味を失っている。抱き合う体も境目がなくなりひとつの熱い塊になってしまったようで、だから余計に相手の攻撃性だけが不穏だった。
「カナ……」
かすれた囁きとともに濡れた唇が耳朶に触れたかと思うと、その下のやわな首筋に肉食獣の牙が立てられる。ありえないとは思いつつも、肉を食いちぎられる恐怖が頭をよぎってしまう。
カナロはコウの頭を抱えなおすと、その口を口でふさいでいた。
「んんっ、ぅ……っ」
舌の上で声にならない喘ぎが溶けていく。さすがに舌に噛みつかれることはなかったが、背中に両手の爪が筋を残す。
相手の口を封じたまま最奥を穿った。
「!!」
ぶつかり合う体のあいだで脈打っていたコウの熱が、弾けて二人の胸まで濡らす。
「あぁっ……!」
堪えきれずにカナロもコウの中で果てた。もう口をふさいでいる余裕はなく、彼にしがみついたまま息を整えようとする。相手よりは呼吸が続くとはいえ、気を失いそうな絶頂の衝撃にはさすがに体がついていかない。
「あ……」
同じくらい息が切れているはずのコウが、小さく喘いだ直後におとなしくなった。
「……コウ?」
背中から彼の腕が離れ、抱えている体の重みが増した。

窓を開け、甘い香りと情事の空気を部屋から追い出す。
そのまま夜風に当たっていると、コウが意識を取り戻した。
「あれ……拭いてくれた? ありがと……」
「コウ!」
思わず声が大きくなってしまい、驚いたコウが飛び起きる。あわてて窓を閉めたカナロは寝台に駆け寄った。
「おれ、気絶してた? そんなに気持ちよかったんだ……」
のんきに呟く様子はいつもどおりで少し安心したが、懸念はまだ消えていない。
「その……今夜は、おれになにか落ち度があっただろうか」
「なんで?」
きょとんとこちらを見返してくる顔には嘘もごまかしもない。気のせいかと思いかけたが、背中の傷がシャツに擦れて痛みを訴えた。
「いや、その……これはなにかの抗議なのかと思って……」
気にかかっていた件を白状すると、彼は血相を変えて「ごめん!」と飛びついてきた。
シャツを引き剥がし、自分がつけた歯型や爪の痕を確認しては「うわああなにこれ」と声を上げている。
「覚えてないのか」
「すごく……よすぎて、わけわかんなくなってた……かも」
コウは気まずそうにカナロを覗き込んできた。
潤んだ瞳はまだ艶を引きずっていて、真正面から見返すにはなかなか覚悟がいる。目を逸らしたカナロの態度をどうとったか、コウはがっくりと肩を落とした。
「ごめん、傷つけるつもりはなかったんだ……」
香炉の効果もあったのかいつになく情熱的に交わった結果、彼の隠された獣性を引き出してしまったらしい。
抱く側でも抱かれる側でも、コウが我を忘れることなどなかった。どこか遠慮さえ感じられるほど、彼は慎重にカナロに触れていた、と今ならわかる。
本気でうなだれる彼の手をとり、その指に恭しく口づけた。
「そういうことなら、どんな傷も喜んで受け入れよう」
「え……」
ひた隠しにしていた爪や牙を剥き出すほどに、無我夢中で求めてくれた。遠慮も理性も飛ばして、本能のままに溺れてくれた。それが彼の偽りない姿なのだとしたら。
真夜中にしか現れない、禁断の本性を受け止められるのは自分だけなのだ。それ以上に激しい愛の交歓があるだろうか。
「もっとひどくしてくれてもかまわない」
たとえ血まみれになったとしても、その痛みはきっと甘美だろう。ついさっきまで部屋に満ちていたあの香りのように。
「カナロ……それは変だよ」
真顔で応じたコウは、その手を振りほどいて「優しく」抱きついてきた。

陸は瞬発力が高くて、海は持久力が高いイメージです(何)