マーベラス/ジョー

2011_ゴーカイジャー,[R18]

Sweet Sweet Night

勢いよくドアが開いて、見慣れたブーツが現れる。
床に手をついていたジョーに見えたのはそこまでだったが、あえてブーツの持ち主を見上げることはせずに腕立て伏せをつづけた。
「……あと何回だ」
無視されたことにむっとしているのだろう、ふてくされた声が振ってくる。
「……今終わった」
ほんとうはあと10回ほど残っていたけれど、マーベラスの機嫌が本気で悪くなる前に切り上げることにした。ジョーが立ち上がると、開いたままのドアに寄りかかっている船長の仏頂面が、一瞬で不敵な笑顔へと変わる。
「今日は寝かさねえから、覚悟しとけよ?」
その言い方と表情があまりにも堂に入っていたので、ジョーは思わず噴き出した。
「なに笑ってんだよ!」
本人としては完璧な誘い文句だったにちがいない。たしかに完璧だ。完璧すぎて断りようがない。
「いや、べつに」
こみ上げてくる笑いを噛み殺しながら、ドアに歩み寄る。マーベラスを抱き寄せながらドアを閉めると、彼は当然の顔で口づけてきた。荒々しい唇と舌をいなして手探りで鍵をかけ、ようやく両腕で彼を抱きしめる。
しかしそのままドアに押しつけられ、さすがに抗議しないわけにはいかなくなった。
「おい……っ」
「んぁあ?」
すでに返事は上の空だ。片腕はジョーの首をがっちり押さえながら、もう片手でベルトを外しはじめている。
「ここでする気か」
「そのために来たんだよ」
「じゃなくて……」
広くもない船室でベッドまで数歩というのに、なぜ立ったまま始めようとするのか。この唐突さは嫌いではないが、夜は長いのだからそこまでがっつく必要はないだろうとジョーは思い、そして無意味な反論よりも実力行使に出た。
「ジョー!?」
キスをやめて叫んだマーベラスは、ジョーの太い腕で腰を抱え上げられていた。同じくらいの背丈だが、ぎりぎりで足が床に着かない程度に身体が浮いている。
「なにしやがる……」
「歩きたくないなら運んでやる」
そう言ってドアから背中を離したジョーに、マーベラスは落とされまいとあわててしがみつく。息が止まりそうなほどきつく首にかじりついてくる相手に見えないよう微笑みながら、ジョーはたしかな足どりで狭い部屋を横切った。
「おまえ……っ」
ベッドに転がされた船長は、しかしすぐに体勢を変えてシーツの上に横たわると、シャツのボタンを外しながら指先で招く。まるで娼婦の真似事だと思ったジョーは、再び噴き出しそうになるのをなんとかこらえた。
靴を脱ごうとベッドに腰かけて身をかがめると、マーベラスが背中に張りついてくる。こんなちょっとした時間が待てないのはいつものこと。
「あとにしろよ」
そう耳元で囁いて、熱い吐息を首筋にぶつけるのも普段どおりだから、腹を立てるという選択肢はジョーの中に存在しない。
ブーツを蹴り飛ばして脱いだジョーは、マーベラスに引っぱられるままベッドに身を沈める。頭突きの勢いで降ってきた口づけを受けながら、彼のベルトに手をかけた。
どちらが「女」になるかは、だいたいの場合マーベラスの気持ちしだいだ。今夜は自分の役目らしいと、相手の出方を見ながら思う。
服を脱ぐのもそこそこに腰を押しつけてくるのはいつものことで、ジョーは自ら服を脱ぎ捨て、性急な彼を受け入れた。
「ああ……っ、ジョー……」
目を伏せて喘ぎながら、彼はいつも愛しい男の名を呼ぶ。荒っぽくて、技巧などなくて、それでもただジョーを求めることだけに全てのエネルギーを注ぐ姿はいじらしい。
もっと彼の肌に触れたくて、ジョーはマーベラスの襟に指をすべらせ、ボタンをひとつずつ外していった。
「なんだ……気が散ってんのか……」
「……っ」
身を乗り出し顔を覗き込んでくる表情に、息を止める。
ときには少年のように無邪気な顔も見せるくせに、こんなときだけひどく男くさくて。彼になら、どれほどめちゃくちゃにされてもかまわない、とさえ思える。そして、そんなことを考えている自分がおかしくなるのだ。
「どうした……」
笑いを噛み殺していることに気づかれたか、マーベラスが口をへの字に曲げる。それだけで、一瞬前までの色気は消え失せ、普段の顔に戻ってしまう。
「いや……」
どう弁解したらいいのだろう。あまりにその顔が艶めいていて。その顔で求められていることがたまらなくうれしくて……
「なんでもない」
結局そう答え、目の前の唇に口づけた。
言葉にしてしまうと、感情はとたんに陳腐になる。言わなくてもお互いわかり合っている部分さえあれば、その場のささやかな情動など大した問題ではない。
「ぅあ……っ」
深く突き上げられ、喉を反らして衝撃に耐えた。今はまだ余裕があるが、あまり長くはもちそうにない。
だが先に達してしまってはいけないとジョーは思っていた。申し訳ない気持ちと癪な気持ちが半々だが、きっとマーベラスも同じだろう。二人は睦み合い、だが同時に意地の張り合いも忘れない。
ジョーはマーベラスのシャツを掴み、必死に波をやり過ごそうとする。
「んぁあっ……」
「ああ……っ!!」
努力の甲斐もなく、腹の中でマーベラスの熱が弾けたときには、腹の上はジョー自身の白濁ですでに汚れていた。
「……へっ」
勝ったと言いたいのか。
見下ろして、人をバカにしたような笑みを浮かべたマーベラスは、ジョーから身を離してシーツの上に転がる。
そして猫のようなあくびをしてから、そのまま動かなくなった。
「マーベラス?」
「ぁん……?」
にやけた声が、今にも寝入りそうなくらいぼんやりしている。ジョーは彼の肩に手をかけ揺すった。
「おい、寝るな」
「起きてるよ……」
そうは答えるが、うつぶせのままこちらを見ようともしない。触れた身体からは完全に力が抜けていて、なにをする気もないのは明白だ。
ジョーは大きなため息をつき、動かないマーベラスにむりやり腕を回して抱きすくめる。
「今夜は寝かさないと言ったのはどこのだれだ」
「さあ、どいつだったか……」
こちらにしてもほんとうに朝までつき合うつもりだったわけではないが、灯りを消して寝るには早すぎる。
「起きろ、あんなの準備運動だろ?」
さんざん煽っておいて、一回きりで終わりなどとあっていいはずがない。その気になった身体はそう簡単に熱が引くようにはできていないし、おとなしく引き下がってやるつもりもなかった。
気まぐれな男をなんとかその気にさせようと、ジョーは彼の耳を甘く噛んで舌を這わせる。マーベラスはくすくすと笑いながらも目を開ける様子はない。
「くすぐってえよ……」
ピアスを噛んでひっぱるが、反応は同じ。
埒が明かないと業を煮やしたジョーは、マーベラスの身体を抱えてひっくり返した。軽くはないが特別重くもない。
仰向けにさせられてようやくまぶたを押し上げた彼は、愉快そうに肩をすくめた。
「今日はずいぶんがっついてるな」
「おまえほどじゃない」
真上から覗き込んで笑みを返せば、にやけ顔は本気で笑い出して両腕を持ち上げる。その腕に抱きすくめられながら、上機嫌な頬に唇を落とせば、熱い息に混じって説得力のない言い訳が聞こえてきた。
「それが悪ぃんだ……」
心地よくて、眠気を誘うから。
勝手なことを囁く船長に心底呆れ、ジョーはクルーとしての慎みは朝まで忘れることにした。

わずかに眠気が差したのは事実だが、そんなことでこの時間を終わらせたくはなかった。
ただ、ジョーがあんまり必死だから、からかってやりたくなっただけで。
唇が重なった瞬間にマーベラスは眠いふりを忘れ、ジョーの頭を抱きしめた。
お互いの唇を押し開け、ぶつかった舌を迷わずに絡める。
「んっ、んふ……」
キスは嫌いではない。それだけに熱中してしまうから、他の欲求が先に立っているときには煩わしく感じるだけで。
「ふぅ……っ」
さっきからかったせいか、ジョーの口づけがいつもより荒っぽい。それが自分のやり方に似ているとは気づかずに、マーベラスは常にない荒々しさを楽しんだ。息苦しさも快感のうち。こんなにも激しく求められているという実感が、マーベラスを奥から疼かせる。
我慢ができなくなって相手の腰を抱き寄せ、狭いベッドの上で転がってジョーの胸に乗り上げた。
「また、上か?」
「さあ……どうするか……」
ジョーの唇を舐めながら、考えているふりをする。
するとジョーの手がマーベラスの腰を撫で下ろし、服の上から尻を掴んできた。
「焦らすなんて柄じゃないだろ」
「そうか?」
そうとは限らない。普段はクールで落ちついた彼の、こんなに気が急いた表情を見られるなら。
不意に背筋を指がなぞり、マーベラスは身を反らせる。
「なんだ……」
その反応がおかしかったのか、ジョーがおかしくてたまらないといった顔でこちらを見上げていた。
ときどき、最中だというのに彼は噴き出しそうな顔でマーベラスを眺める。なにがそんなにおもしろいのか、心当たりがないだけに不可解だ。
「おまえ……っ」
むっとして身を起こしかけるマーベラスを、ジョーは厚い胸板に引き寄せる。文句を言う間もなく、無骨な手が下着の中に這い込んできた。
「ジョー……」
その指が後口を撫でるだけで、マーベラスはついジョーの胸にしがみついていた。謎の表情の理由などはどうでもよくなり、与えられるものを貪ることだけに意識が向かう。
「ぁ……っ」
指がねじ込まれると、声が上がってしまうのは生理的反射だ。ごつごつとした男らしい指が、本人の剣捌きのような繊細さでマーベラスの中をゆっくり慣らしていく。
「ぁあっ……」
弾力のある筋肉に指を食い込ませ、身をのけ反らせて、その緩やかな刺激に身を任せる。焦れったいが、こうして焦らされている時間も楽しいのだと、ジョーと肌を重ねるようになって知った。
もう一方の手が、脱ぎそこねてルーズに尻のあたりで引っかかっていたボトムを下ろす。すでに脱いでいたジョーの腰に、マーベラスは自分の露わになった股間を擦りつけた。
「う……っ」
ジョーが眉をひそめ、ひそやかに喘ぐ。その顔を見下ろして笑みを浮かべたマーベラスは、ひざに引っかかったズボンを蹴って脱ぎ捨て、脚を絡めてさらに強く腰を押しつける。濡れた陰茎はすぐに両方とも硬くなり、互いを突き上げるようになっていた。
「おい……」
子供でも叱りつけるような口調で詰りかけたジョーは、だが結局言葉もなく喘いでいた。意趣返しのつもりなのか、指が数を増やして奥までねじ込まれる。
「んぁ……!」
中と外の両側から刺激を受け、マーベラスの息が荒くなる。こんなことで、とは思いながらも、身体は絶頂を求めていた。衝動に突き動かされるまま、愛撫の指をさらに深く受け入れるため、そして腰に集まる熱を解放するため、ジョーの上で身をくねらせる。
「ぁは……っ!!」
再び欲望を迸らせて、マーベラスは大きく息をついた。
後ろから指が引き抜かれる。目を落とすと、ジョーが潤んだ目でこちらを睨みつけていた。むりもない。ジョーはまだ解放されていないのだ。マーベラスはにやっと笑って身を起こした。
「イかせてやるよ」
完全に身体を起こしてひざ立ちになり、自分の真下……ジョー自身が上を向いている場所へ手を下ろす。硬くなったそれに指をすべらせると、ジョーの身体がびくりと跳ねた。腹も胸も精で汚してただマーベラスを待っているだけの姿。
「さっきのじゃ足りねえなあ……もっと楽しませてくれよ……」
頬がゆるむのを抑えられずに、彼の上へ腰を落としていく。
「く、ぅあ……っ」
「あぁ……」
呻きながらも、マーベラスはジョーを飲み込んだ。ジョーのほうは衝撃に耐えるのがひどく困難らしく、歯を食いしばってマーベラスから顔をそむけている。素直に声を上げて楽しめばいいものを。そう思ったマーベラスは、跳ねるように腰を揺らしてやった。
「……ぅあっ!!」
下から突き上げられた、と思った瞬間、ジョーが達したのを感じた。弾ける直前だったのだからべつに早くもないが、マーベラスは挑発の笑みをジョーに向ける。
「……終わりか?」
「いや……」
完全な涙目でこちらを睨んだジョーは、腹筋だけで起き上がった。
中の角度が変わってマーベラスは呻き、そしてつながったままの部分が硬さを失っていないことに気づく。だがそのときには、太い腕がマーベラスの腰をしっかりと抱いていた。
「足りないな。もっと楽しませてくれるんだろ?」
「てめ……」
マーベラスの言葉をくり返すジョーの顔には、不敵な笑みが戻っている。
「簡単だ、さっきみたいに腰振ればいい」
「くっ……」
そう簡単でないことは、お互いによく知っている。だがジョーが動かない以上、他に選択肢がないのも事実だった。
「ふん……また泣かせてやる……っ」
負け惜しみにしか聞こえないと自分で思いながら、マーベラスは再び腰を浮かせた。
「くぅ……あっ……」
勢いで動けたときとはちがう。今度は正面からジョーが覗き込んでいて、しかも腰を掴まれている。抜こうとしても引き戻され、さらに深く楔を打ち込まれてジョーの肩にすがりつくはめになる。相手の勝ち誇った笑みを見るのが悔しくて、マーベラスは固く目をつぶった。
「ぁんっ、はぁっ……」
視界が閉ざされたぶん、他の感覚へ意識が向く。一度ジョーの精を受け入れた中は気持ちが悪いほどにすべりがよく、濡れた音が耳を犯す。勝手に昂ぶった自身の熱は、ジョーの腹を突き上げて、ねだるようにその身をすり寄せている。
「あぁっ、くそ……っ」
悪態をつきながら腰を揺らすマーベラスの耳に、自分とはちがう荒い呼吸が聞こえた。
ずっと聞いていたから気にしなかっただけなのだが、そのせっぱ詰まった喘ぎは、マーベラスの首をも締め上げて否応なしに欲望のテンションを上げていく。
「んぅっ……」
ふと目を開けたマーベラスは、こちらを見ているジョーの表情を見て噴き出しそうになった。
「……なんて顏してやがんだ」
恍惚としか言いようがない。上気した顔でマーベラスを見つめ、息を荒くしている姿はとても沈着冷静な剣士とは思えなくて、彼もただの男なのだと教えてくれる。マーベラスが出会った瞬間欲しいと願った男の顔だった。
そのままの顔で、彼はもそもそと口を動かす。
「……そんなにひどいか?」
「ああ……サイコーにそそるぜ」
「……………」
ふっとうつむいた顔が長い髪に隠れ、腰を抱え込まれたかと思うと、ベッドに倒されていた。
「おい……ぅあっ!」
天井は見えない。影になって表情のわからない顔が真上から覗き込んでいるから。
「ひどい顔はお互い様だ」
ふてくされたように呟いて、ジョーはマーベラスの両脚を持ち上げる。
「ん、はっ……」
たくましい肩の上に脚をかけられ、不自然な角度で貫かれるかたちになったマーベラスは身をよじった。
「バカっ、なにしやがる……ああぁ……っ!!」
マーベラスが絶頂の悲鳴を上げるのに、ジョーは数度腰を叩きつけるだけでよかった。
「んぅう……っ!!」
ジョー自身も二度目を注ぎ込んでくる。抜いた口から残滓がだらしなく零れるのを感じたが、マーベラスは後始末をする気力もなくベッドに沈み込んでいた。
「……なんて顏してるんだ」
覗き込むジョーの顔が笑っている。マーベラスはのろのろと腕を挙げ、目の前の頬をぺちりと叩いた。
「うるせえよ……」
それでもジョーはうれしそうな表情で、汚れた身体を拭っている。
「さっきから、なにがおかしい?」
自分のほうが終わってから、今度はマーベラスにとりかかった。体液が肌に残らないよう、ていねいに拭い取りながら、彼はまたあの顔になっている。噴き出す寸前の、愉快そうな表情。
「そっちだって笑ったじゃないか」
「ぁん?」
そうだったか……と思い出そうとするそばから、優しい手つきで肌を拭われるから、考えが少しもまとまらない。
「同じ理由ってことにしとけ」
彼はそれで決着をつけたことにしたらしい。
お互い細かいことを引きずるたちでもないが、うまく言いくるめられた気がして悔しい。マーベラスは口をとがらせ、ジョーを引き寄せた。
「おい……」
倒れかかってくる相手の鼻先に自分の鼻を押しつけてやる。
まだ終わりではない、と言外に伝えられたジョーは、マーベラスをあっけにとられた顔で見下ろした。
「マーベラス……」
「言ったはずだ、覚悟しとけってな」
その言葉に、ジョーは肩を震わせて笑い出す。
「覚悟ならしてるさ、最初から」
「そうこなくっちゃな」
二人は、その夜何度目になるかわからない口づけを交わした。


にやにやにやにやにやにやにやにや……
いいかげんにしたらいいよあんたたち!!(ハカセに入ったルカの勢いで)

★★★

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