マーベラス/ジョー
酒盛り
自分の部屋に、なぜか船長がいた。
「よぉ、先にやってるぜ」
彼は当然の顔で、飲みかけの酒瓶を掲げてみせる。ベッドの上にはもう一本。
勝手に部屋に入られたことに文句を言うべきなのだろうが、そんなことで目くじらを立てていたらキリがない。自分のぶんのボトルを取って、椅子に座る。
「ほらよ」
飛んできたナイフを受け止めて封を切った。グラスなどという気の利いたものは用意されていない。相手も瓶からそのまま飲んでいる。
「乾杯」
言うだけ言って、そこから二人だけの酒盛りが始まるのはすでに恒例となっていた。
ルカに見つかると面倒だからと、マーベラスはいつもジョーの部屋でこっそりと酒を飲む。船長室にはかなり隠してあるらしいが、広くもない船室のどこにあるのかはジョーも知らない。
マーベラスは酔わなかった。平然とボトルをあおり、顔色も態度も変わらない。
そして普段どおりの顔で、人のひざの上に乗ってくる。
「酔わせてくれよ」
どんな強い酒でも酔わないというのに、こちらの酒を求めてジョーの唇を舐める。
もちろんそんなのはただの口実に過ぎないことはわかっていた。酒の味など彼にとってはどうでもよくて。
「なあ、ジョー……」
口づけの合間に熱い囁き。酒くさい吐息が淫らな色を帯びている。悪戯な手は勝手に人のボトムの前を開けて、まだその気になっていない中心を引っぱり出していた。
「こいつで、酔わせてくれるんだろ?」
どこまでも自分勝手で、こちらの意志などおかまいなしで。ほしいと思った瞬間に、手に入れようとする。純粋なまでのわがままっぷりは、いっそすがすがしい。
ジョーは一口だけ自分の酒を飲み、彼の目を覗き込んだ。
「そうだな……おまえが自分でここに乗って動いてくれるなら、考えないこともない」
目が大きく見開かれるのを、愉快な気持ちで眺める。しかしその目が再び細められ、濡れた口元が笑みを作るまでにはそうかからなかった。
「気が変わった」
陰茎を強く握られ、思わず息が止まる。
「う……っ」
「上で腰振んのはてめーにやらせてやるよ。イイ声で泣いて俺を酔わせてみな」
こんな気まぐれも、毎度のこと。振り回されていては身がもたない。
「それなら、ベッドがいい」
いちおうの希望を述べると、彼は愉快そうに首をかしげて迷うふりをした。
「まあ、いいだろう」
立ち上がりざまに尻を叩かれ、目の前のベッドへ追いやられる。
椅子の足下に置かれた酒瓶を気にしながら、ジョーは絡みついてくる腕に応えてマーベラスを抱きしめた。まだ飲みかけだが、酒などなくても存分に酔える。マーベラスもほんとうはわかっているのだろう。
それからすぐに、二人は酒のことなど忘れてしまった。
★★★
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