マーベラス/ジョー

2011_ゴーカイジャー,[R18]

その背中に

狭いベッドに腰かけて、ジョーは目の前にある背中の傷にそっと指をすべらせた。
「く……っ」
薬が沁みたのか、マーベラスは小さく呻いた。しかし痛いなどとは言わない。
ジョーは手際よく傷の処理をしていく。それが終わるころにはマーベラスも痛みに慣れていて、多少のことでは声も上げなくなる。いつものことだった。
包帯を巻き終わり、ジョーは手を止める。
「……終わったのか?」
そうだと答えて、後片づけをすればいいだけのことだった。負傷したまま戦って体力を消耗したマーベラスは、少しでも早く休ませたほうがいい。そんなことはわかりきっている。だから騒がしい他のメンバーを押しのけて、自ら手当てを引き受けたのだ。
だがジョーは、目の前の背中から視線を逸らすことができなかった。
この背中に傷などあってはならないのに。
「背中守れなかった……なんて思ってんじゃねえだろうな」
笑み混じりの声に、はっと顔を上げる。
マーベラスはふり向きもせず、後ろに倒れ込んできた。ジョーはあわてて彼の身体を抱きとめる。彼も当然それを予想していたのだろう、くくっと満足げに笑った。
「俺の背中は俺のもんだ。俺が預けたいやつに預けるし、俺が守りたいやつを守る。おまえがぐちゃぐちゃ考えることなんかひとっつもねえよ」
「……………」
返す言葉も思いつかずに、ただ裸の肩を抱きしめる。
この男についていくと決めた。自分の全てを捧げると。そこにはなんの後悔も不満もない。
しかし笑ってうなずけないのはなぜだろう。
マーベラスが、すぐ横にある頭を軽くぶつけてきた。
「おいおい、こんな時間にハグで済ませる気か、ジョー?」
あからさまな誘いの言葉。彼はまだジョーを自室へ帰す気はないらしい。
「でもおまえは早く休んで……」
「早く寝ろだぁ? ガキじゃねえんだよ。キスでおやすみ、なんて言ったらぶっ殺すぞ」
本気で剣でも振り回しかねない声音でそそのかされては、ジョーも笑い出すしかなかった。
「俺のせいで治りが遅れたなんて言うなよ」
腰にまわした腕で彼の前を開けながら囁くと、にやついた返事が返ってくる。
「それはわかんねえなあ」
へたに手心でも加えて彼の機嫌を損ねでもしたら、ほんとうに皆の前で愚痴られる危険もある。
そうなったら自分の立場は相当微妙になるな……などとどうでもいいことを考えながら、ジョーは彼の肩を押して前に手をつかせた。
下をひざまで脱がせて、今まで傷口に塗り込んでいた軟膏を手に取る。気が急いているときのマーベラスはこの段階さえ省きたがるが、さすがに怪我人相手にむりはできない。
「んぅ……」
四つん這いにさせられた船長は、最初こそおとなしくジョーの指を受け入れていたが、しだいに焦れったくなってきたらしい。苛立った様子でベッドマットを叩く。
「そんなんじゃ足りねえよ……もっと太くて硬いの、あんだろ?」
肩越しにこちらを見上げる目は、笑っているが真剣だった。本気でジョーを求めている。喉を鳴らし、ジョーは自分のベルトに手をかけた。
すでに臨戦態勢の中心が露わになったのを見たマーベラスは、楽しそうに自分の唇を舐めた。
「そうこなくちゃな」
「あんまり、騒ぐなよ……」
いちおうの警告をしてから、腰を押さえつけ一気に貫いた。
「うぁああっ!!」
警告も虚しくマーベラスは上ずった悲鳴を上げ、ジョーが見つめている背中は衝撃にのけ反る。かまわずに腰を打ちつければ、そのたびに派手な嬌声が洩れた。
さすがに痛みが上回っているのかと少し不安になり、彼に身を添わせて腰を抱いてみる。その腕に当たるほど反り返った欲望は、マーベラスがこの瞬間を楽しんでいることを示していた。痛みも快楽も、今の彼には大してちがいはないのだろう。
「おい、休むな……」
「休んでない、気を遣ったんだ」
口のへらない船長を真上からシーツに押さえつけて、手加減せずに激しく突き上げる。
「あぁっ、ジョー、ぁう……っ!!」
「くう……ぅうんっ……」
二人は同時に身を震わせ、同時に欲望を吐き出した。
そのまま力が抜けていくマーベラスの身体を後ろから抱きしめて、ジョーはこみ上げる思いを衝動のまま口にする。
「この背中は、俺のものだ……だれにも渡さない……っ」
自分で言葉にしてみて初めて気づいた。マーベラスが「自分の背中は自分のものだ」と言ったときに感じた、かすかな反発の正体だった。
ジョーの下で、小さな笑い声が上がる。
「ったりめえだろ……だれが他に……」
そこまで言って、今度こそマーベラスの全身から力が抜けた。
ジョーは気を失った彼を抱いたまましばらく動かなかったが、やがて自分だけ身を起こす。
シーツを適当に直してから彼を横たえ、汚れた身体を拭き直し、包帯がゆるんでいないか確かめてから、毛布を掛けて、ジョーの仕事は完全に終わる。あとは朝まで起きずに寝ていてくれれば、だれに責められることもないだろう。
出ていく前に、おとなしい寝顔に唇を落とそうと身をかがめてから、ふと呟く。
「ああ……キスでおやすみ、はNGだったか?」


ちなみに隣の部屋はハカセなので、なんもかもバッチリ丸聞こえです。かわいそう…!

★★★

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