【SS】おっさんずラブ「かすみ草」

唐突なのは通常運転です。

週末のイベントが特撮とOLのホール同じだから、今度こそ買い物行くぞ!と思った勢いで、一年前に書いた春田×武蔵を出します。同棲中の話です。
牧春も大好きだけど、春黒も買えたらいいなあという気持ちを込めて!

いやずっと火種は消えてなかったんだけど出す機会がなかっただけだよ!
映画は初日に行ったしね! 狸穴さんかっこよかった! ジャスかわいかった!

——————————–

正直、おっさんずラブは二次創作よりも考察したい派なんですけど、それやるとたぶん考察用にブログ一本用意しなきゃいけなくなると思うんで自重してます。語りたい、一話ずつ一シーンずつ語りたい。どれだけ自分のツボに刺さったかをムダに理路整然と語りたい。ここはちょっと……みたいなところも全部語りたい。

牧春は、本編以上はもう望まなかったし、映画って言われて正直制作陣困っただろうなって思いました。そりゃもう爆発炎上くらいしかやることないだろ。でもまあすっごいがんばってくれた、すっごいよかった。男も女も関係ないと喧伝してはいるけど、「受けが女性化するBLって地雷なんですよね(真顔)」って人が作ったラストって感じで爽快感があった。
映画ですっかり満足したので、二次創作はもちろん、本編の続編さえいらないです。もし続編やるなら、主役は別の二人で彼らは背景でいいの、と思っています。
これ以上の牧春は、もう戦国時代にタイムスリップするしか手がないと思う(それはやってもいい)。

春田と牧に上下はいらないと思ってるんだけど、まあ牧はそういうとこ譲らない気もするので、強いて言うなら牧春で。でも今なら春牧もぜんぜんありです。でもホントにどっちでもいいです。だってそういう話だから。
ていうか、もうちゅーするだけでエロいからあの二人。ズルイ、田中さんと林さんズルイ。

ハセ春は、放映後半年くらいで自分の中でやりきったので(笑)もう成仏した。
最初はハセが気を遣った春ハセからの、春田がうっかり「受けってそんなに気持ちいいの?」って興味持ってハセに完全調教されるハセ春、という流れでした。
でも部長が黙ってないよなって当時から思ってた。

主任と部長は……ちょっと予想外で、まだ自分の中でしっくりきてません。足ドンはおもしろかったんだけど、どっちもお互いの好みじゃなくない……?
主任には牧一筋でいてほしいし、部長は何度でも春田に恋してほしい。そんで何かあったとき、それぞれの背中押してほしいんですよ。
部長が牧に言い放った「かまってヒロイン爆誕~!!」ってのが最高に爽快でよかった。そういう立ち位置でいてほしいの、あの二人には。

てことで、ここから「やってみたい」やつです。

牧武は、あれだけ露骨に年下攻めを推してきているくらいだからテッパンだと思うんだよな。少なくとも武牧ではない(笑)。
いや作品的にはどっちでもいい話なんですけど、全体的に純愛貫いてる中で、牧って一人だけ性的な要素を出してくるんですよね。「巨根」だったり、春田にキスしたり、裸の春田と絡んだり。
だからやっぱりドSで巨根の牧が攻めなんだろうな、牧なしでは生きていけない武川さんはドMな受けなんだろうな、と考えてしまうんですよ!
「政宗」「牧」の呼びかけとかも、いろいろ考えちゃう。牧は関係性でいちいち相手の呼び方変えたりしないタイプだと思ってるから(映画でも春田から言ってたし)、武川さんが言わせてたんだろうなと……そういうとこがダメっぽいのよね(愛)。
ちなみに、つき合ってたときはベタベタでエロエロだったけど、別れてからは牧のほうはぜんぜんその気がなくて一度もヤってないの希望です。放置プレイもまたよし。

春黒は、公式で「主人公とヒロイン」と銘打っているくらいだから、まあ春田×黒澤でまちがいないでしょうが、展開からするとちゅーもしてない完全プラトニックですよね。牧武の対極。ちゃんと牧に対して操立てさせてもらってる。
ハセ春のときに「春田がハセとくっついたことを知ったら部長は攻勢かけてくるよな」と思っていた私としては、部長の反撃は単純に(予想どおりで)すごく楽しくて、そのあと部長にも春田との蜜月を用意してくれたのは(予想外で)うれしかった。
牧春勢がなんと言おうと、あの期間があったから春田は大人の男に少しはなれたんだろうし、牧への気持ちをきちんと整理することができたんだと思う。
映画で部長が記憶喪失になったとき、春田は「はるたん」と呼んでほしくてもだもだしてたので、部長との時間は春田にとっても大事だったんですよ。春黒があっての牧春という点は主張していきたい。

だからこそ、さっくり過ぎていた一年をちょっと巻き戻して、「春田が牧とよりを戻すまでの部長との一年間」を妄想してもいいんじゃないかと……

あれ……なんか語順に覚えがある……

「戦兎が万丈と出会うまでのマスターとの一年間」
「魁利が圭一郎と出会うまでの透真との一年間」

……性癖ですかね!!
NTRではないあたりがちょっとこじらせてる感。

という流れでの春黒SSです。完全プラトニックです! 部長にエロいことなどできない!

——————————–

【かすみ草】

来月の予定を訊かれて、深く考えずに「空いてます」と答えた。
「行ってみたい店があるんだが、予約を入れてもいいかな」
「へえ、いいっすね」
こんな前から予約を入れなきゃならないなんて、きっと人気店なんだろう。部長の選ぶ店はいつもオシャレで味もよくて、俺ひとりだったらぜったい入れないようなところばかりだから、文句なんかあるはずがない。
「どんな店なんですか」
「ヒミツ」
「えー、教えてくださいよー」
そんなやりとりを、食卓を挟みながらあたりまえみたいな顔でしている。ちょっと不思議なこの日常も、いつのまにか慣れてしまった。
なんかヘンだな、とたまに思うけれど、なにがヘンなのかはわからなくて、結局メシも美味いし体の調子もいいしまあいいか、と結論づけて終わる。
それから、カレンダーの予定表に部長が書いた「デート」の文字が目につくたび、ちょっともぞもぞしながら、どんな店なんだろうと期待しながら、それでも日々の忙しさにまぎれて頭の片隅に置いておく程度で、その日を迎えた。
定時でいっしょに出ましょうと言ったけど、部長は先に行っててくれと言う。
「待ち合わせたほうが、デートっぽいだろ?」
「はあ……そうですね」
そうなのか? そうかもしれない。
うちの最寄りのバス停で待っていてくれと言われて、そんなに近くなのかと驚いた。
一本遅いバスでやってきた部長は、家と反対方向に歩き出す。
連れていかれたのは、カジュアルフレンチのレストラン。知る人ぞ知る名店で、完全予約制だそうだ。正直、フレンチって何入ってるのかよくわかんなくて苦手……
「めちゃめちゃ美味いッスね!」
「そうだろ」
うろ覚えのテーブルマナーでもなんとかなる雰囲気で、周りの客もビシッとしてるわけじゃなくて、そこそこ気安い。家からそんなに遠くないのに、ぜんっぜん知らなかった。
部長と食事や飲みにいくときは、さすがに酔いつぶれちゃいけないと思って、飲みすぎることはあんまりない。部長も「これは強い酒だから」とかうまいことセーブしてくれる。そのへんの飲み屋だと、店出たころには何食ったかも覚えてないのに、部長と行った店はわりと覚えてる。
「うちから近いし、また来たいッスね」
「……そうだな。はるたんがそう言うなら、また来よう」
にっこにこで賛成してくれると思ったら、なんだかそうでもなさそうな微妙な笑顔で、もしかしてものすごく高い店なのか?と不安になった。でも行事大好き部長が、とくになんのイベントもない完全な平日に、そんなに奮発するとも思えないし……
トイレに立ったときふとスマホを見ると、メッセージが入っていた。蝶子さんからだ。

――誕生日デート、楽しんでる?

え、誕生日? だれの?
とっさに聞き返そうとして息が止まった。

――今日って部長の誕生日なんですか?

知らなかったのー!?と驚きのスタンプが返ってきて、頭を抱える。
先月からこの日ってわかってただろ、オレ! なんで、なんの日か調べようとしなかった!?
だから、平日ど真ん中の今日にわざわざ、予約までして。定時退社で待ち合わせして。次にこの店に来るのは、たぶんクリスマスとかオレの誕生日とか、そういう特別な日だきっと。
席に戻ったけど、本人に「今日お誕生日だそうですね」なんて今さら言えるわけもないし、どうしたらいいんだってぐるぐる考えてたらもうデザート出てきちゃうし、部長はなにか楽しそうに話してるけど、ぜんっぜん頭入ってこない。
ええ、どうしよう……
「あの、今日オレが払います……」
「なに言ってんだ、俺が誘ったんだから」
それはそうなんですけど、あなたの誕生日ですし。
財布を出そうとするオレの手をそっと押さえて、部長は笑う。
「それに、おまえが気安く出せる額とは思えないな」
「……はい……」
でしょうね。
帰る家は同じだから、「お疲れさまでした!」なんてタイミングもなく、二人で通りに出る。うわホントどうしよう、うち帰ってもなんにもねえし……
立ち止まったオレを、少し先に歩いていた部長がふり返った。
「春田?」
「あの……ちょっと買うもん思い出したんで、先帰っててもらっていいですか」
「なんだ、買い物なら俺もいっしょに行くよ」
「や、だいじょぶっす、大したもんじゃないし、一人で走ってったほうが早いんで」
一瞬さびしそうな顔をして、でもすぐに笑いながら、彼はオレの背中を叩く。
「そうか……気をつけてな。早く帰ってこいよ」
「はい! 部長も、気をつけて!」
駅前の花屋、たしか十時までやってたはずだ。
ここから今の時間じゃバスや電車だと遠回りになるから、ほぼ直線ルートの近道を抜ける。
部長は、大きな赤いバラの花束をくれた。あのときはわけわかんなかったけど、一回はお断りしたけど、でも、だから、あの人にあげるならやっぱりバラだ。
時計を見ると十時少し前。露店の花屋が見えてきた。やっべえ、もう片づけはじめてる。
「ちょーっ、ちょっと待って、待ってー!」
周りの人がふり向くのも今はどうでもいい。大声で花屋に叫びながら必死に駆け寄る。
「バラの、花束、ください!」
半分くらい片づけられた花を見渡しもせず、驚いた顔の店員にとりあえず注文した。
ところが、店員はバケツを抱えたまま困った顔でオレを見る。
「申し訳ありませんが……」
売り切れ!? バラの花ってそんなに人気!?
「えっと、じゃあ……」
考えてみれば、この時間にあるのは全部売れ残りか。カワイイ系の花はいくつかあるけど、でも大人の男っぽくない。ええと、なんか大きくて落ちついてて……
「そこの、白いやつ! まとめて全部ください!!」
「かすみ草、だけですか?」
すごく小さい花だけど、そこにある花束の中でいちばん大きく見えた。白くてなんとなく上品で、子供っぽくなくて、きっとあの人に似合う。
それからオレは、花の値段の高さに引きながら、花屋の店員に何度も礼を言って家に帰った。日付がまだ変わっていないのを、家の前で確認する。
玄関を開けると、もうスーツを脱いでいる部長が出てきた。
「おう、おかえり。遅かったじゃないか……」
「部長っ!」
先手必勝とばかりに、花束を差し出す。
あれっ……なんか明るいとこで見るとそんなに大きくもキレイでも大人っぽくもないかもしれない……
でも、もう遅い。
「これっ……ギリギリだけど、お誕生日、おめでとうございます……っ」
「え……?」
返事がなくて不安になって、花束の影から窺ってみる。
彼は優しい笑顔で、花を見つめていた。
「知ってたんだ……」
いや、さっき知ったんですけど。
ゆっくりと伸ばされた手が、オレの手から花束を受け取ってくれた。
「はるた……」
ん、と呟いて、部長は片手で顔を覆う。
「……ありがとう」
「いえ。遅くなってすみません。しかもこんな……」
「ありがとう。すごくうれしい」
オレの言い訳を遮るように、白い花束を抱きしめた部長は泣きそうな顔で笑った。
誕生日プレゼントをだれかに贈るなんて、子供のころちずにカブトムシあげて以来だ(当然返品された)。
贈るのもうれしいもんなんだな、と思った。

あいつの誕生日はいつなんだろう、と一瞬でも考えた自分は脳内でぶん殴って、玄関先に転がしておいた。

——————————–

全力で走る、というのは春田の愛情表現なのだと思います。
全力少年(スキマだけに)

黒澤武蔵のことを「部長!」って呼ぶはるたんが好きだし、牧凌太のことを「牧~!」って呼ぶ春田さんが好きなんですよね。
この成功体験で牧にもチューリップとか贈って、思いっきり憎まれ口叩かれてほしい。