【SS】大也と玄蕃(ブンブン)
大也×玄蕃、いたしているだけ。
シャーはまだいない頃。
*
がらんとしたオフィスビルのロビーに、二人は立っていた。
「諸々の手続きは終わってる。ネットワークケーブルは抜かれたが、電気と水道は使えるよ」
ガラス張りのエントランスはシャッターが下りている。しかし眩しいほどに白い蛍光灯のおかげでフロアには影もない。
「ソファーまで置いていったのか」
「新社屋には似合わなかったのだろうね。どけるかい?」
確かに少し古めかしい革張りのソファーを大也は静かに撫で、腰を下ろした。
「このままでいい。試運転に立体的なコースが必要だっただけだから」
「いくら壊してもかまわないよ。解体用の防音壁も込みだからねえ」
「さすが玄蕃」
社屋移転で解体直前だったビルを、丸ごと一棟買い取ったのがつい先日。大也からよくある依頼だったから、玄蕃もいつもどおりに仕事をこなした。
ソファーの背に寄りかかった大也が、高い天井を見上げながら声をかけてくる。
「きみも乗ってみないか」
この勧誘も、いつものこと。
「遠慮しておくよ」
彼の前に立つと、互いの膝が当たった。当てたというべきか。大也と視線がぶつかったが気にせず、その膝のあいだに脚をすべり込ませる。
「どうせ乗るなら、こっちのほうが」
相手の膝から腿をなぞり上げ顔を覗き込めば、彼は苦笑してこちらへ身を乗り出してきた。
「ずるいな」
口ではそう言いながら、大也が拒絶したことは一度もない。玄蕃は広がる笑みを抑えきれず、大也の前に跪く。
「見てのとおり、咥えるモノを切らしていてね……」
膝のあいだにかがみ込むようにして、上目遣いにわざとらしく舌を見せつけた。だが今の彼はそれを望んでいないらしく、玄蕃の襟を掴んで少し強引に自分へ引き寄せる。
「口さびしいなら、こっちでいいだろ」
そういうところは相変わらずかわいらしくもあるのだが、と思いつつ重ねられる唇を受け入れた。玄蕃の舌を吸うたび、大也は何度でも「甘い」と嬉しそうに囁くのだ。自分のそれを咥え込んだ後ではそんな気になれないからだろう。
「……今日は、オレンジ?」
余裕がある時には、無邪気に味まで確認してくる。
「ずるいのはどっちだか」
そう呟いて、玄蕃は大也のジャケットを剥がしにかかった。
「や……ぁんっ!」
広い空間に反響する自分の声に酔いながら、喉を反らす。
壁も天井も遙か向こうで、見渡すかぎり無骨な柱しかない。広大なフロアの中心にぽつんと残されたソファーと、そこで絡み合う男二人だけが異質だった。
玄蕃は濡れた唇を舐めながら、自分を貫いている男を見下ろした。年相応に見える幼さと、見合わない精神年齢を滲ませる艶。平素の温厚さとはかけ離れた、玄蕃の奥を責め立ててくる熱量。
誰も知らない範道大也の痴態をもっと見たくて、自ら腰を揺らす。深い部分が突き上げられて、息が止まるほどに快い。
「くぅ……ぁっ、あぁっ」
強く締めつけられた大也は、玄蕃の肩に縋りついて喘いだ。玄蕃ほどの嬌声は上げないものの、遠慮している様子はない。ここはもう彼のプライベートな空間だから。
「まだ、余裕だねえ……?」
耳元に囁きかけると、真顔で「まさか」と返ってきた。玄蕃の腰を支える両腕には、確かに痛いほど力がこもっている。
「ねえ、大也……」
耳を甘く噛まれるのに大也は弱い。常に平常心で世の中を眺めている彼が、らしくもなく洩らす呻きを、自ら引き出すのが玄蕃は好きだった。
自分に回された腕を辿って大也の手を掴み、自分の服の中へと誘う。怪訝そうな瞳を見つめながら胸元へと彼の手を持っていった。
硬い指先が胸の突起に触れたかと思うと、玄蕃の意図を悟って強くつねり上げる。
「ぁっ、そこ……」
察しが良い男は黒いシャツをまくり上げて、もう一方に舌を這わせ吸い上げた。与えられる快感に、玄蕃は身を反らして吐息を洩らす。
「そう…イイ……っ」
腹の中で膨張するそれに内側を擦りつけ、さらに煽ろうとしたが。
「んぅ……っ!」
大也が耐えきれずに達するのが先だった。
体を沈めようとしたが、無情にも引き抜かれてしまう。玄蕃はあわてて相手にしがみついた。こちらはまだ終わってはいない。
「ダメだよ、今日は奥でイきたいんだ……もう一回、いいだろう?」
両手で仰向かせた顔は、幸い満たされた表情ではない。これだけで終われるほど、この男は冷淡でも冷静でもない。
「次は、ナカに出してもいいよ」
「バカ言うな……」
生真面目な青年は玄蕃の頬を軽く叩いて、不躾な提案をたしなめる。この自分がそれほどまでに大切に扱われているのが面映ゆく、どこか滑稽にも思えて、玄蕃は声を上げて笑った。
大也に再び口を塞がれるまで。
「……まだ、甘い」
嬉しそうな囁きが、唇のあいだで溶けた。
*
大也「(読む)ブンブンジャーなんでも質問コーナー…?」
ミラ「まずは、シュゴッダム王国のギラくんからのお便りでーす!」
シャ「どこの国だって?」
錠「ギラくんありがとー!」
ミラ「(読む)玄蕃さんは、出動する時食べかけの飴をどうしているのですか。…それ、あたしも気になるー!」
玄蕃「すっ…ごくレロレロするんだ。私の舌使いなら一瞬で溶けてなくなるよ♡」
シャ「フードロス問題だ、マジメに答えたほうが身のためだぞ」
錠「めちゃくちゃ急いで噛み砕いてますよね、変身前にすごい音しますもん」
玄蕃「ちょっ、言うんじゃないよ…」
ミラ「え、アレを!?」
大也「よい子は真似しないようにな☆」