【ワンライ】キュウレンジャー
ラッキーとスティンガー
946字
この台詞で素敵な作品を
「もう終わりにしよう」
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横になって目を閉じて、寝たふりをしているとほんとうに眠くなってきて、そんなときは無駄な抵抗なんかせず寝てしまうのがいちばんだ。
だが、夢に足を踏み入れようとしたとき、後ろからなにかに呼び止められた。
「……?」
ラッキーは目を閉じたまま考える。これは歌だ。言葉がついているのかはわからない、軽いハミング。
「……きれいな曲だな」
思わずそう言ってしまったのを失敗だったと気づいたのは、歌が中断したせいだった。あわてて飛び起きる。
「ごめん、俺もっかい寝るから、また歌ってくれよ」
「どういう注文だ」
椅子ではなく床に座り込んだスティンガーは、気だるげに壁にもたれかかっていた。最近ではラッキーにベッドを占領されても文句を言うこともなくなり、その代わりベッド以外の場所でくつろぐようになっている。ラッキーとしては少しさびしくもあるのだが。
「なあ、もっと聞かせろって」
怒ったようにこちらを睨みつけるのは、きっと気まずさや照れくささもあるのだろう。こうなるとなかなか我を曲げない男だ。
ラッキーはベッドの上に座りなおして、スティンガーを見下ろした。
「おまえの星の歌か?」
「……子供を寝かしつけるときの、子守歌みたいなものだ」
言いながら彼は、今までずっと見つめていたであろうペンデュラムを握りしめている。
彼が探し求めているものは知っていた。ことあるごとにそこへ思考が結びついてしまうのも、気づいてはいた。自分が介入する余地がないことも。
言葉にならないもやもやとした気持ちを自分の外へ追い出すように、大きく息を吐き出す。
「そういうの、もう終わりにしようぜ」
「あ?」
スティンガーが怪訝そうに顔を上げたときには、ラッキーはベッドの上に倒れて手足を伸ばしていた。
「歌えよ。子守唄なんだろ。俺、寝てやるから」
意表を突かれたか、一瞬の沈黙が部屋に流れる。
「……自分が子供だと認めたか」
そんなのはどうでもいい。ラッキーは目を閉じた。今は少しも眠くないけれど、寝たふりをしていればいつかほんとうに眠ってしまうものだから。
「……たしかに寝てくれたほうが静かで助かる」
声が近づいてきたかと思うと、彼がベッドの端に腰かけたのを感じた。
「……………」
気持ちのいいハミングが体の中に入ってくる。
一曲終わらないうちに、ラッキーは寝息を立てていた。
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前のはアルカリからのリクエストで、こっちはクジ引きの結果です。
歌ネタはやるまいと思っていたのにネタ切れであっさり手を伸ばす不甲斐なさ…