【ワンライ】キョウリュウジャー
ソウジとノッさん
1010字
お題ひねり出してみた
『あのね嘘だよ、ほんとはね』
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大人として、流されるわけにはいかない。
いかないはずなのだけれど、目の前に切羽詰まった美青年のアップがあると、その決意も揺らぎそうになる。
「ソウジくん……」
勉強を教えるという名目で、高校生の部屋に入り浸っていた不用意な何でも屋はたしかに自分だ。
理解も吸収も早い彼は勉強なんかさっさと終わらせてしまって、それでも家庭教師が引き上げるのをなぜか懸命に引き伸ばそうとする。
それが、こういうことだったとは。
座布団から外れて壁に追い詰められたノブハルは、言葉もなく彼の顔を見返した。
学校ではモテるんだろうだな、などと関係ないことを考える。見とれるほどに端正で、でもかわいく見える幼さも残っていて。この顔に迫られたら一瞬でOKせざるをえないし、逆にフラれたらしばらく立ち直れない、となぜか女子高生目線で考えてしまった。
その顔に見惚れていたことに気づいたのは、彼が傷ついた表情でうつむいたからだった。返事がないことを彼なりに解釈したのだと知ってあわてる。
「いや、びっくりしたんだ。うれしいけどね、さすがにイロイロまずいんじゃないかなって……」
動転のあまり言葉選びに失敗したのが判明したのも、声に出した直後。
「ごめんね、ノッさん。……引き止めて」
最後につけ加えられたのは、ここまでのやりとりをなかったことにしようとする、彼なりの大人な対応なのだろう。
身を引くソウジの腕を、思わず掴む。
「あのね……」
驚いてはいるが、その目に期待などない。ただ動揺しているだけだ。
こんな素敵な子を、こんなにも困らせてしまうなんて、ダメな大人だなとため息をつきたくなる。
「あのね、さっきのは嘘」
「え?」
「ほんとはね……」
大きく息を吐き出して、覚悟を決める。
押し切られたなんて言い訳、みっともなくてだれにもできない。なにより目の前の彼に対して、そんなみっともない姿は見せられない。
腕を引いてそっと抱き寄せた。抵抗などなく、あっさりと腕の中に彼が落ちてくる。見た目よりも厚く硬い体は、自分と同じ戦士の証。同志を子供あつかいするなんて、どうかしていた。
「うれしいけど、じゃなくて、すごくうれしい。ありがとう」
「ノッさん?」
意味がわからない、といった口調が焦れったいが、それも言葉が足りない自分のせいだ。
「だから、うれしいんだよ。まずいなんて嘘」
大人として、流されるわけにはいかない。
これは自分自身の決断だ。
苦しいほどにしがみついてくる青年の背中を、そっと抱き返した。
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「兄さん、なにやってるの?」
「いやいやなんでも……ちょっと自治体の条例を調べてるだけだよ」
「なに? 未成年との交際? 言っとくけど、宇宙青少年保護条例では即有罪よ」
「デリート許可!?」
古すぎて新しくなりつつある宇宙刑事ネタ。