銀時/全蔵

2007_銀魂,[R18]

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ツンツンツンデレくらいがいちばん萌える

「おい」
だれにかけられたかわからない声が聞こえた……と思った瞬間。
「いっ……」
服部全蔵は往来で派手に吹っ飛んでいた。
「……ってーな!! ぁにすんだよ!!」
がばと起き上がれば、目の前に「銀」の字がききっと音を立てて止まる。
「や、見知った顔が歩いてたから、つい呼び止めちまって」
「おめーは知人を呼び止めんのに原チャ乗ったまま尻を蹴飛ばすのか!?」
しかも靴の先で、ピンポイントに尻の穴を狙い打ちで。加速もついて立派な攻撃だ。
「まあ、たまたまだよ」
飄々とした顔で見下ろす銀髪が憎らしい。
「ふざけんな……くそ、ケツが……」
「おーどうしたんだ、立てないのか? よーし、俺が乗せてってやろう」
抑揚のない口調で読むように言った銀時は、全蔵を自分の原付に引っぱり上げる。
「おいやめろって、いらねえよ、つかケツがぁ……っ」
一台のスクーターが、なんの事故もなかったかのように走り去った。

そこはうらぶれた茶屋の前。
銀時は全蔵を担いだまま、ためらいもなく入り口のおやじに声をかける。
「あー、ちょっと連れが倒れちまってさあ。しばらく上で休ませてくんない?」
「いいよー、銀さんだから部屋代はタダにしとくよ。でもドリンクはきっちり取るからね、水も有料だからね」
「はいはい、りょーかい」
いかにも馴染んだフランクなやりとりを済ませ、あっという間に全蔵は二階の一室に押し込められていた。そういう目的で使われることもあるのだろう、部屋の隅に布団が一組積んである。
「おまえさ……いつもこの手で女とか連れこんでんの?」
脱いだコートを放り投げ、全蔵はため息をついた。
「なんのことかわかんねえな」
銀時はいつもの無表情でそうのたまい、この男が侍である唯一の証の木刀を、じゃまそうに放り出す。
「で、ケツの具合はどーよ」
「痛えよ! せっかく治りかけてたのにどーしてくれんだ」
「そっかー、じゃあ俺が診てやろ……」
またしても抑揚のない棒読みで、有無を言わせず乗りかかってくるから手に負えない。
全蔵は身体をそらして逃げようとしたが、逆に背中へ覆いかぶさられて身動きが取れなくなった。
「いっつもこの手で押し倒してんのか!」
「まあまあ、細かいことは気にしないで」
「おま……」
全蔵は抗議の声を上げかけたが、なにも言わずに畳へ頬を押しつける。後ろからもそもそと服の中に手を突っ込んできた銀時はそこで動きを止め、低く呟いた。
「……なんだかんだ言ってもさ、結局つき合うよね……へんなとこで律儀だよねおまえ」
「なんかもうめんどくせえんだよ」
毎度毎度、戯れ程度に抵抗するのを押さえつけられ、互いに本気ではないからすぐに事へとなだれ込む。だったら最初から逆らわないほうが楽というものだ。
「あ、そういう言い方傷つくなあ」
傷つくどころか楽しそうな声だった。面倒なのは、ほんとうは銀時のほうなのだろう。
人生に恋だの愛だのを持ち込むのが煩わしくて、かといって商売女で済ませる金も甲斐性もなくて……気持ちはわからないでもない。
「いいからさっさと終わらせようぜ……」
そう吐き出して肩越しに見やれば、サディスティックに光る濁った目があった。

「あ……ちょ、なんかヘンな感じ……」
尻の穴に指をつっこまれるという、何度体験しても背中がむず痒くなるような不安な感覚は変わらない。
「ちょっとジェル増量しただけなんですけど。感じちゃってる?」
「バカ、言え……っ」
耳元で聞こえる低い声に鳥肌を立てながら、全蔵は奇妙な感覚に耐えた。
最初のうち、銀時の荒っぽさは技巧のかけらもなく、全蔵にも遠慮や気遣いなどしてやる義理もなく、全蔵は痔を悪化させ、そうでないときには銀時の下痢が悪化する、という悲惨な末路しかなかった。それが、近ごろは少しずつ変わってきている。
「く……」
濡れた音を立てて内側をまさぐる指は、今やこちらの性感を確実に探り当てていた。おざなりの準備や申しわけ程度の前戯ではなく、互いにこの段階を楽しんでいる、少なくとも楽しもうとしている、ということなのだろう。
弄られすぎて悦いのか痒いのかすらも曖昧になってきたころ、さっきから腿に当たっていた熱い塊が押し入ってきた。
「つぅ……っ!」
正直、痛い。だが痛いだけではない。これもまた、ひとつの変化だ。
ここまできたら楽しまないのは損だと思っているが、それでも声は出さなかった。女のように喘ぐ性分でもないし、おそらく相手も望んではいない。
不意に、いかにも衝動的に、あごをつかまれる。
唇を硬い指が無遠慮になぞり、内側へと這い込んできた。よほど噛みついてやろうと思ったが、もう片手で急所を握り込まれて断念した。後処理が楽なようにと着けられたゴムの上から、乱暴な手が愛撫をはじめている。
「エロいぜ、おまえ」
「ふ……」
指がむりやりに唇を押し開き、返答を封じる。唾液が伝い落ちていくのを止められない。銀時は容赦なく口の中をかきまわし、舌を絡め取り、それから唾液まみれの指で全蔵の首筋を辿った。
「…………!」
濡れた指が肌の上を這い回る。感じる部分は知りつくされているはずなのに、指はわずかに逸れて曖昧な愛撫をよこす。焦れた全蔵は、ねだるように身をよじった。
苦痛も快楽も、感覚を押さえつけてやり過ごすことはできる。だがこれは単なる遊びだ。だから、耐える必要も忍ぶ必要もない。ただ貪ればいい。
「ぁ……っ!」
息を吐き出すように、全蔵は小さく声を上げて達する。
銀時もいつしか黙りこみ、ただ抽送のみに専念していた。その動きからも息の上がり方からも、それほど長くないことはあきらかだ。
「くぅ……っ!」
銀時が腰を押しつけたまま、動きを止める。絡みついた腕に力がこもる。
快楽の余波に浸る小さな吐息は、なぜかひどくストイックな色を帯びて狭い部屋に響いた。

手早く後始末をして、二人はそそくさと着物の乱れを直す。
「あーダメだ、やっぱケツ痛え……」
コートに袖を通した全蔵だったが、ぐったりと畳の上に倒れ込んでしまった。
すでに立ち上がって腰に木刀を差しかけていた銀時が、覇気のない目で見下ろす。
「なに、立てないくらいなわけ?」
今さら気遣うつもりでもないだろう。全蔵はごろりと転がり、銀時に背を向けた。
「……いいからさっさと行けよ、ドリンク代くらい払っといてやるよ……」
「あ、マジで?」
情け容赦ない言葉のあとに、がらっと引き戸が開く音がして、全蔵はわずかな失望とともに目を閉じる。
だが待っても足音は聞こえなかった。
「おじさーん、いちご牛乳ふたつー」
はっと身を起こしかけると、木刀を置いて座り込む銀時と目が合う。
「おまえ払えよ。払うっつったからな」
「え、なんで……」
「連れが動けるようになるまで待ってるのが、連れってもんだろーが」
ゆっくりと階段を上がってきたおやじが、部屋の中を見まわしながらグラスを二つ置いていく。おやじの足音がしなくなるのを待って、全蔵は再び床に転がった。
「あーもー最悪だおまえ……」
その気などまったくないくせに、ときどき気まぐれでこんな気遣いを垣間見せる。そのたびに腹立たしさを覚えるのだ。
いや、本来はそういう性分の男なのだと、わかってはいた。その性分を無気力な表情の下に隠し、酷薄な仮面をかぶって全蔵を嬲る。性欲処理のふりをして、他のだれかにはぶつけられない感情を全蔵に押しつける。
完全に割りきっているくせにふと優しくなる銀時と、どうにも割りきれない自分のどちらもが腹立たしい。
「だいたいなんでいちご牛乳かな……」
「っせえ、いちご牛乳は命の水なんだよ」
銀髪の侍は壁にもたれて、命の水をストローでちゅるちゅると吸っていた。

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Posted by nickel