映司/アンク

2010_仮面ライダーオーズ,[!],[R18]


【心配と奉仕と抱き合う二人】

「だいじょうぶなのか」
彼は、たしかにそう言った。
この身がどんなにボロボロになっても、労ることなど決してなかったのに。
人間ならあたりまえの一言が、映司の心に残って離れなかった。

ベッドサイドにアンクが立つ。
「なに?」
横になっていた映司は物憂く相棒を見上げるが、返事はない。
無言で映司をしばらく見つめていたアンクは、不意に脚を振り上げたかと思うと、映司の腹の上に馬乗りになった。
「ちょっと、今そういう……」
「うるさい」
胸ぐらを掴まれたかと思うと、頭突きの勢いで顔が近づいてきて、映司は思わず目を閉じる。だが唇にそっと触れたやわらかい感触に、驚いて目を開けていた。
予想していた、最初に歯が当たる乱暴な口づけではなくて。軽く押しつけるだけのキス。至近距離で睨みつけている瞳も、今日はまぶたに遮られて見えない。
唇から、頬に。あごに。耳だって、普段なら痛いほど噛みついてくるのに、今日は耳朶をかすめる程度で、首筋へと下りていく。
映司はわけがわからず、おろおろと相手の袖をつかんだ。
「どうしたのさ……」
「黙ってろ」
声だけはいつもどおり凄みのある低音で、だが映司を脅す鷹の腕はない。ほっそりした人の手がシャツの内側に這い込んで、肌の感触を確かめるように動いていく。
「ねえ……」
ごく稀に、映司を嬲って反応を楽しむ余裕があるときだけ、気まぐれで優しく触れてくることはある。しかし彼の表情は真剣そのものだった。それ以前に今は戯れに映司をからかう気分でもないはずだ。
突然こんなことを始めた理由もわからない。
サルエルパンツに手がかかり、反射的に身を硬くする。いきなり急所をつかまれるか、後ろに指をねじ込まれるか……しかしアンクはそこでも普段の粗暴さを見せなかった。
たしかに映司の中心に触れてはきたが、長い指を添わせてゆるやかに握り込んでいるだけだ。がむしゃらにしごき上げるでもなく、細い指先で探りながら、映司の性感だけを押さえては丁寧に弄っている。
「ぅん……っ」
「出したきゃ出せ。声も欲望も全部だ」
とくに感情を込めることもなく淡々とそう言い放ち、映司をゆっくり追い上げていく姿は、奉仕の姿勢すら感じさせた。
「そんなこと、言ったって……っ!」
身をすくめて映司はあっさり果てる。快感の余韻に震える映司を、アンクはまっすぐ見下ろしていた。今まで見たことのない、どこか戸惑いすらたたえた表情で。
映司は息をつきながら、ふと思いついたことを口にしてみた。
「もしかして……慰めてくれてる?」
「はあ? なに言ってんだ」
一瞬にして険しい顔つきに変わり、冷たい目が映司を射抜く。皮肉だが見慣れたこの顔のほうが安心できる。
「じゃあなんで……」
「わけわかんねえことばっかで、こっちもイライラしてんだよ。話しかけんな」
分離した肉体。紫のメダル。人間がグリードに……博識のアンクにも説明できないことが立てつづけに起こっている。
だが苛立ちをぶつけるつもりなら怪我も気にせず責め立ててくるはずで、こんなことは今までなかった。
再びアンクは映司の胸元に唇を落とす。痕などつけずに。そして濡れた手で再び映司を愛撫しはじめた。
「アンク、んっ、もういいって……」
「誤解するなよ」
身をよじる映司を体重で押さえつけて、アンクは険悪な顔で鼻先を突きつけてくる。
「おまえの事情なんかどうでもいい。俺はこの腹ん中に入ってるメダルがほしいだけだ。だから早く欲望の空白とやらを埋めて、さっさとメダルを弾き出せ」
彼らしい言葉と、彼らしくない行動。その裏腹さに翻弄されている自分に苦笑する。
「できるならやってるよ……」
観念した映司はアンクの腰を抱き寄せ、ベルトを外した。タイトなパンツに押し込まれていた欲望は首をもたげかけている。布地の上から撫でると、彼は一瞬動きを止めて吐息を洩らした。下着を下ろして直接触れようとしたが、その手を払われる。両手をベッドに押さえつけられ、映司は困惑を隠さずに相手を見上げた。
「アンク……」
「黙れって言ってんだろ」
しかめっつらが近づいてきて、唇が重なる。半開きの唇をこじ開け、舌が誘う。映司はおとなしく目を閉じて彼に従った。
両手を映司の拘束に使っているアンクは、熱を帯びかけている中心を映司に押しつけてきた。
「っ!」
映司の腰が跳ねる。アンクは長い脚を映司の脚に絡め、腰を揺らして二人の欲望を擦り合わせていた。そのあいだも口づけはつづく。
「んふ……っ」
いつもならこちらが苦しさにもがいても口をふさぎつづけようとするのに、映司が喘ぐたびに濡れた唇がわずかに離れ、呼吸を許す。舌先で映司の唇をなぞり、ときに頬へと逸れながら、屈伏させるのではなく快楽を長引かせるための感触をよこしていた。
なにもかもが異常で、映司は混乱しながら快感に飲み込まれていく。
「ぁ……んんっ!」
「くぅっ……」
二度目の解放は一度目以上の衝撃で、映司は力のやり場がなく相手の身体にしがみついていた。後を追って達したアンクも、映司の上にぐったり身を投げ出し、荒い呼吸をやりすごそうとしている。
映司は彼の顔を覗き込もうとしたが、あいにく横を向いていて見えない。仕方なく彼の頭に声をかける。
「アンク?」
「……余計な体力使っちまった」
忌々しげな呟きは言い訳にも聞こえて、映司は微笑んでいた。アンクは映司の肩に頬を押しつけたままで小さく呻く。
「まだおまえが必要だ。壊れるなよ」
「ん……」
その言葉が彼自身の利益のためだけだとしても、この行為が慰めでなかったとしても、彼が映司自身を見ていることだけはわかる。
それだけ知っていれば充分だった。同情なんかされたくはないし、素性があきらかになったとたん態度を変えられるのもごめんだ。彼はそんなことをしないとわかっているから、この奇妙に優しい態度もありかな、と思えた。
「うん、だいじょうぶ……」
自分に言い聞かせているようだと思いながら、映司は同じ言葉をくり返す。
「だいじょうぶだから」
いつもと同じ顔で笑ってみせる映司を、アンクが憂いを含んだ目で見つめていた。


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