竜魔/劉鵬

2007_風魔の小次郎,[R18]

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死角に立つ

左側の背後にいつもの気配を感じながら、敵の前に立つ。不安などない。
いつからかは覚えていない。
彼はいつも、そこに立っている。
この自分の死角を守るように。
ほんとうのところ、死角などないのだ。右正面でも左背後でも、倒すべき敵は確実に仕留められる。この力を持つ者にとって、視界の幅などそれほど重要ではない。
それは彼もわかっているだろう。それでも。

顔を近づけると、ふっと目が閉じられる。唇を重ねているあいだも、双眸は無防備に閉ざされたままだ。
なぜ目を瞑るのかと聞けば、なぜもなにもそれが普通じゃないのかと問い返された。
そういうものだろうか。
「それには同意できん」
「……と言われてもなあ。目が開いてたって、どうせ見えるものなんかないだろう」
ひたいを押し当てたままで、彼はもそもそと呟く。
「おまえの顔が見える」
「見るなよ……」
頬に口づけられて、思わず目を眇めていた。
「ほら、休ませてやれって」
「……………」
言われるまま、たった一つの目を閉じる。
ぼんやりとした闇と、あたたかな感触。
視覚が遮られれば、他の感覚が鋭敏になることは経験的に理解していた。
「竜魔」
耳をくすぐる優しい声に、思わず笑みが洩れる。
目を閉じたまま、舌先で彼の唇をかたちどおりになぞった。どこかうろたえたように重ねられる唇とその呼吸が、彼らしいと思った。

瞬きもせず、隻眼で敵を睨みつける。
左側に回った敵もいるようだが、恐れることはない。彼の気配が常にそこにあるから。
不安など、ない。

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